メダロックライブレポート(その4)

 前回、思い込みによる「人違い」ならぬ「悪ガキ違い」というもの凄い記憶違いをやらかした私ですが、スクリューズについてあまりにアツく語ってしまったため、「1行書き換えるだけ」などというレベルの修正では済まない濃度の内容となりました。ですので、そのまま残しております。
 私の盛大な記憶違いとは関係なく、「悪ガキのテーマ」は間違いなく悪ガキしていました。少なくとも、初代悪ガキのドット絵を描きシナリオでも深く関わってきた私は、そう思います。
 何はともあれ、私はメダロックアレンジが、メダロックライブが素晴らしかったということを、お伝えしていきたいです。
 そしていつかスクリューズのテーマ「CUNNING BOY」のメダロックアレンジも、お願いしたいところであります。

 ちなみにスクリューズのリーダー、キクヒメの「~よぉ」「~しぃ」といった語尾は、「悪ガキ三人組」の女リーダー、イセキの口調と区別化を図るために私が作った設定でした。
 ヤンマ→イワノイ、クボタ→カガミヤマも、女リーダーの子分というポジションは同じですが、それぞれ全く同じキャラにはせず、違う個性を持たせるようにしました。
 メダロット1はシナリオが短く、また私はメダロット1のシナリオに関しましては監修と、バラバラなシナリオをくっつけて不足を補い矛盾を無くすといったお仕事がメインだったので、彼ら三人を存分に活躍させることは叶いませんでした。
 そんな私の「悪ガキ三人組」への想いは、スクリューズへと引き継がれております。

 来る2020年1月23日に配信予定の、メダロットSでの悪ガキ三人組の活躍に期待が高まります!
 スクリューズは悪ガキ三人組にチーム名が欲しいと考え、私が付けた名前です。
 初代組にもチーム名を付けるとしたら、やっぱり「お米」縛りだと私は思うのですが、いかがでしょうか?

14.HALF SORROW

 激しいロックが続いた後に、静かで美しいピアノの旋律が流れてきました。「HALF SORROW」です。
 そしてステージの大画面には、思い出深いメダロット4の「海辺のシーン」が映し出されました。
 海辺のシーンは、イッキとパートナーのメダロットが夜の海を並んで見つめながら、語り合うシーンです。
 激化するデスマーチの中、私が魂を込めて作ったイベントです。

 イッキはメダロットたちとの数々の冒険を通じて、メダロットとメダロッターの関係について深く考えるようになりました。
 メダロットにはリミッターと「メダロット三原則」というものがあり、イッキはそれがメダロットたちを縛りつけて不幸にしているのではないかと、思い悩むようになったのです。

「メダロット三原則」は、メダロット4では以下のように表記していました。

「だい1じょう」
わざと 人間を
きずつけては ならない
「だい2じょう」
人間に きけんが ふりかかるのを
見すごしては ならない
「だい3じょう」
だい1じょうと だい2じょうを
やぶらない はんいで
ほかのメダロットに ちめいしょうを
あたえないこと

出典:メダロット4

 そして私の「ダメロット製作記」では、第三条が「上記二項に反しない限りで自分の身を守る」と書いておりました。
 それが今はメダロット社様の方で「メダロット三ヶ条」という名称になり、第三条が「第一条と第二条を破らない範囲で己を守り、他のメダロットに致命傷を与えてはならない」といい感じに統合されている模様です。

 メダロット4では夜の海辺で、イッキはパートナーであるメダロット自身に己の抱く悩みと疑問を直接ぶつけました。
 そんなイッキの問いかけに対して、メダロットは自身の想いを言葉にして返すのでした。
 メダルで動くメダロットの頭脳は、メダルです。メダルにメダロットの魂が宿っているのです。
「メタビー」「ロクショウ」「せっかち」「がんこ」「ひねくれ」「周到」「ぼんやり」「おせっかい」「いいかげん」とメダルの性格は9種類あったので、私は海辺で語り合うシーンを9パターン作りました。
 それはプレイヤーであるメダロッターの方々が、自らパートナーとして選んだメダロットと語り合っていただきたいという想いからでした。
 さらにメダロットの顔グラフィックは、数多のパーツからメダロッターの方々がパートナーメダロットのパーツとして選ばれた頭パーツが、表示されるようにしていました。
 そしてもちろん会話の中で表示されるパートナーの名前も、メダロッターの方々が付けられた名前になるようにしたのです。

 美しいピアノの旋律で始まった「HALF SORROW」は静かな盛り上がりを見せていき、やがて泣きのギターの音色で最高潮を迎えます。
 思い出深い海辺のシーンが……ゲームボーイのドット絵がライブで、二十年の時を経てメダロックアレンジで蘇った楽曲の生演奏と共に、大画面で映し出されていたのです。言葉では言い尽くせないほどに、感無量でした。
 あまりに現実離れした光景に、これは本当に今目の前で起こっていることなのかと、私は信じがたい思いでただ大画面を見つめていました。まるで夢でも見ているかのようでした。

HALF SORROW」の生演奏と共に大画面に映し出されていたのは、9種類の性格のうち、アニメでもお馴染みだったメタビーのメダルとの海辺のシーンでした。

イッキ「メダロット転送!」
イッキ「・・・・・・」
メタビー「・・・・・・」
イッキ「・・・・・・」
メタビー「・・・・・・」
メタビー「転送したんだったら 何か言えよなー」
イッキ「・・・うん」
メタビー「だーかーらーっ 何か言えっての!!」
イッキ「うん・・・あのさ、メタビー
お前って しあわせ?」
メタビー「はぁ?」
イッキ「だからさ・・・お前らって
『メダロット3げんそく』に
しばられてる・・・だろ?
だから お前ら 人間をわざと
きずつけられないように なってるけど
それって しあわせなのかなって」
メタビー「イッキ」
「・・・」
メタビー「あのさ 何で『メダロット
3げんそく』が あると思う?
それは オレたちが
メダロットだからさ」
イッキ「だけど そういうのって・・・!」
メタビー「まあ 聞けって」
メタビー「メダロットの オレたちは 人間の
お前らとは 力も
のうりょくも ちがう
オレたちは メダルさえ ぶじなら
パーツや ティンペットが いくら
こわれたって ふっきできる
だけど 人間の体は そういう風に
できていない
もし『メダロット3げんそく』が
オレたちの 力に ブレーキを
かけてくれなければ
オレたちは きっと・・・たとえ
オレたちに そういうつもりが
なくっても・・・人間を きずつけて
しまうだろう
・・・これは オレの 考えだけどさ
『メダロット3げんそく』は
オレたちを 作ったやつの
『やさしさ』なんだと 思う
おかげで オレは お前と なかよく
やってけてるんだと 思うし」
イッキ驚「でもさ そういうのって 勝手だと
思うんだけど
メダロットの いけんも 聞かずにさ
勝手に「3げんそく」なんていう
ブレーキを あたえちゃうなんて」
メタビー「それは そうかもしれない
けどよ 考えてみろよ
もしもだぜ? お前が お前の
すきな人を だきしめただけで
その人が こわれちまったら
どう思うよ?」
イッキ「そんなこと・・・!」
メタビー「おなじ人間なら そんなことは
ないだろうけどよ
人間と メダロットの場合 そういう
ことだって おこりえるんだ
オレ そんなこと たえられねーよ
だからさ・・・だから おれは
オレじしんは『メダロット
3げんそく』が あって
よかったって 思うんだ」
イッキ「メタビー」
「・・・」
イッキ「・・・・・・・・」
メタビー「・・・・・・・・」
イッキ「かえろうか・・・」
メタビー「ああ かえろうぜ」

出典:メダロット4

 素晴らしいアレンジと演奏と共に蘇った「HALF SORROW」ですが、ゲーム開発時、こちらからは「悲しい曲」という名前で発注しておりました。
 原曲を作成された方が、「HALF SORROW」というタイトルを付けてくださったのです。

HALF SORROW」……半分の悲しみ。
 悲しみも、心許せるかけがえのない存在と分かち合えたら、半分になる……そんな意味を込めて付けてくださったのかもしれません。
HALF SORROW」は私の心の一曲であり、メダロックライブでそれは、忘れ得ぬ体験と共に魂に刻み込まれたのです。

15.Until The End(inspired by “DO・OR・DIE”)

HALF SORROW」の演奏に続いて、千菅様がご登場されました。
「いつか 語り合った海」……まさにそのシーンの後で、この歌が流れたのです。
 千菅様の透き通った声がライブ会場に響きます。感極まって体が震えました。
HALF SORROW」から「Until The End」への流れは本当に感動的で、素晴らしかったです。
 メダロックCDでも流れは同じなのですが、ライブでのその自然な流れは、実にお見事でした。

 原曲の「DO・OR・DIE」もまた、イッキ編最後のラスボス戦BGMだったこともあって、私にとってはとても思い入れが強い曲でした。
 ですので、メダロット4のラスボス戦BGMだった原曲の「DO・OR・DIE」がバラードになったと知ったときは、正直なところ戸惑いはありました。
 信念を賭けた激しいバトル曲から、泣かせるバラードへの大転身です。
 戸惑いと驚きはありましたが、私は渾身の想いを込めて歌詞を作りました。
 とはいえ完全にゲーム寄りの「愛しきロボロボ団」とは違い、「Until The End」はメダロットを離れても独立した一つの曲として成り立つような歌詞にしなければなりませんでした。
 メダロットを知らない方々にも、広く長く愛し続けていただくために、それは必要なことだったのです。
Until The End」は、ラスボス戦闘曲からバラードへの大転身ということも相まって、最も難航した曲だったかもしれません。
 変更を余儀なくされた歌詞もありますし、私が自ら変更した歌詞もありました。
 私自身が変更した歌詞に、「メダルが輝き」→「瞳が輝き」というものがありました。
 メダロットが起動し、冷たい金属の体に魂と意志の光が宿る姿を表現した箇所です。
 結果的に「メダル」より「瞳」の方が、よりふさわしい表現のように思えましたので、良かったと思っています。
 また一方で、「Until The End」からメダロットらしさを全て無くしてしまっては、本末転倒でした。
 そこで「フォース」というフレーズは残していただくことになりました。

 私一人の力ではなく、糸賀様やうのへえ様と多くのやり取りを重ね、歌詞の文字数調整や使用するフレーズなどを洗練していったことで、「Until The End」は完成しました。
Until The End」がメダロットファンの皆様にも、歌い手の千菅様やMEDAROCKSの皆様のファンの方々にも広く受け入れられ、 愛され続けることを心より願っております。

 そして私が「Until The End」にどうしても入れたかったフレーズは、「いつか 語り合った海」でした。
 あの海辺のシーンがあったからこそ、イッキの意志は、信念は、揺るぎないものになったのです。海辺のシーンを経たからこその、「最後の戦い」でした。
 このフレーズは、「Until The End」がバラードになったからこそ生きた歌詞だったかもしれません。
 それでもまだ私の中に僅かばかり残っていたかもしれなかった、「DO・OR・DIE」がバラードに大転身したことへの戸惑いも、千菅様の歌声によって払拭されました。
 原曲にあった緩急はバラードになっても残されていて、海のような穏やかさと激しさを持つイッキの人柄と、揺るぎない想いが伝わってくるようでした。

 まだ私が「DO・OR・DIE」がバラードになるとは知らなかったとき、間奏部分にメダロット4でイッキとメタビーが喋っていたセリフを入れるという案を出したことがありました。
 そして私は、候補となるイッキとメタビーのセリフと共に、海辺のシーンを「思い入れのあるシーン」としてお伝えしていたのです。

 間奏部分にセリフを入れ込むこと自体は、「Until The End」がバラードになったこともあって採用されませんでした。
 ですが私の想いは、今回のライブで、

HALF SORROW」の生演奏と共に大画面で海辺のシーンが映し出され、「Until The End」の「いつか 語り合った海」に繋がる

……という私の想像の遥か上を行く、最高の形となって実現したのです。

 あまりの光景に、音に、歌声に、ただただ目を見開き、私はその空間と時間を全身で体感していました。
 目の前でたった今起こっていることが、己の目で見て聴いて感じていることが夢のようで、果たしてこんなことが現実に起こり得るのかと、信じがたい思いでした。

 ライブ会場は皆様のペンライトで海を思わせる青に染まり、ステージの大画面には熱唱される千菅様のお姿が映し出され、私の魂を込めた歌詞が美しい歌声と演奏と共に流れる……。
 それはCDだけでは決して味わうことのできない、ライブのあの時間、あの空間だけの特別な出来事だったのです。
 一生の、忘れ得ない記憶となりました。
 あの素晴らしい体験が、私と同じ時間と空間を生きて共に過ごされた方々の記憶にも、深く長く残り続けることを願っています。
 さらに多くのファンの方々と、繰り返し素晴らしい体験を共有するためにも、メダロックライブがこの先幾度となく開催されることを願うばかりです。

16.Shout!

Shout!」はメダロット3ラスボス、ブラックデビル戦での曲です。
 月面に現れた巨大なその姿は、まるで……。
「悪魔だ」
 月で出会ったマザーメダロット、巨大なブラックデビルの姿に、思わずイッキはそう呟いたのでした。
 曲の開始と共に、巨大なブラックデビルの絵がステージの大画面に映し出されました。


コウジ「目が ひらいた!」
アリカ「大きい・・・これも メダロット?」
イッキ「あくま・・・だ」

出典:メダロット3

……昔私がエクセルで描いた、ブラックデビルの「目が開いた!」的な絵コンテです。
 上記のセリフ、何と! アニメと同じ声優さんたちのボイス入りでした! これは当時のゲームボーイとしては結構画期的だったと思います。

 言うまでもありませんが、ライブの大画面に表示されていたのはこの絵コンテではなく、実際に使用された一枚絵のドット絵の方でした。
 この絵で伝わるのですから、グラフィッカーさんって凄いですよね!……一方の私は、一応グラフィッカーでもあったとは思えないレベルの絵コンテで、申し訳なかったです。
 とはいえこの絵コンテに関しましては、私も流石に「ブラックデビルに関してはデザイン画参照」という注意書きを書いてはおりました。

Shout!」はスローテンポかつ不気味で不穏な旋律で始まりました。
 巨大なマザーメダロットの姿が、古より人々に恐れられていた悪魔の姿を連想させ、恐怖を誘う……そんなただならぬ気配が漂っていました。
 それが一転。一瞬の静寂の後、一気にアップテンポとなります。ロボトルが激化した様子が伝わってくるようです。
 そして途中で入る美しいキーボードの旋律……かと思えばギターの激しい嘶き!
 ベースの低い唸り! クライマックスに従ってますます荒ぶるドラム!!
 勝負の行方はいかに……!

 イッキ編の中で最大のボリュームを誇るのはメダロット4ですが、最も過酷なデスマーチだったメダロット3は、地底都市、海底都市、天空都市、宇宙と舞台は広がり、スケールの大きさでは最大でした。
 宇宙人により月と地球に逆に配置されてしまったマザーメダロットのスバルとブラックデビル。そのために人類の科学文明の発展が偏った方向に向かおうとしていた……という壮大なスケールの間違いを、宇宙人は犯していたのでした。
 ですがそれすらも、うっかりミスとして「スミマセンネェ」の一言で済ましてしまう宇宙人に、メダロットらしさを感じていただけていればと思っています。

 巨大な悪魔の姿をし、人類に科学という英知を授け、レアメダルを作り地球のフォースを操る力を持ちながらも、ただ寂しくて、故郷に帰りたくて、それが叶わぬまま独りぼっちで月にいたマザーメダロット、ブラックデビル。
 本編のラストでイッキは、そんなブラックデビルと「Shout!」をBGMに二連戦を強いられるのでした。
 ロックなアレンジの「Shout!」で戦い抜いてみたいものです。

17.Beat The Diamonds

Beat The Diamonds」は、メダロット5のラスボス曲でした。
 ロックなスローテンポからの 、ちょっとミステリアスな雰囲気漂うメロディラインと、ラスボスらしく重低音の増した湧き上がる感じ、好きです。
 やはり8ビットでは出すことのできなかった低音が入ると、本当にカッコよくてシビレます!
「ビーーーン」と低く響く音とか、音の高低差とか、文字や文章でどのように表現したらいいのでしょうか!? どうしてもカッコいい! という言葉になってしまいます。

 私はメダロット5はプレイできていないので、ラスボス戦は体験していないにも関わらず、ラスボスとのアツいバトルの光景が思い浮かぶようでした。
 カッコいいメダロックアレンジをライブで聴いて、一度はゲームをプレイされた方も、またプレイしてみたくなったのではないでしょうか!

……今回はここまでとなります。
 深い思い入れのある分、今回もアツく語らせていただきました。
 次回もお付き合いいただければ、嬉しいです♪

5+

メダロックライブレポート(その3)

 メダロックライブレポートは、まだまだ終わりません!
 前回に引き続き、語っていきます。

08.M・R・5

M・R・5」と「Beat The Diamonds」はメダロット5の曲なので、私が関わった作品ではありませんが、どちらの曲もすごくメダロットでした。
 私はメダロットの開発チームから抜けたものの、メダロット5はそれまでメダロットの制作に関わっていたスタッフの方々が引き続き作っておられましたし、原曲の制作も同じ方でしたしね。
 メダロット5は、主人公のコイシマルくんがゲーム開始早々肥溜めに落とされるという衝撃の展開が印象的でした。
 そして「M・R・5」がオープニングかつロボトル曲、というのはメダロット1~4にはなかったパターンだったので驚きでした。
 カッコいいオープニング曲でロボトルができるって、いいですよね!
 メダロックになった「M・R・5」でも、ロボトルしてみたいものです。

 メダロット5もシナリオを担当された方は女性だったのですが、マップの至るところで見られた細やかなこだわりは、やはり女性ならではだったからかもしれません。
 私も女性ではあるのですが、私はおおよそ女性らしからぬ大雑把な性格で、残念ながら細やかな気配りといったものからはかけ離れております。

 メダロックにアレンジされた「M・R・5」は金属的な重い音から始まって、それが軽快なメロディーとテンポに変わり、再び重低音に変わる感じでした。
 軽快な感じと、重低音の緩急は、本当にクールですね!
 途中ビートを刻み続ける感じの部分もカッコよかったです。
 皆様の「ヴォイ! ヴォイ!」がこの曲でも生きていました。 ステージと会場が一体になって一つの音楽を作るというのは、ライブならではの素晴らしいものですね!

09.魔の十日間

魔の十日間」はメダロット1の曲です。
 原曲は敵の本拠地に乗り込む時などに流れていたと思いますが、スローテンポで不気味かつ不穏な空気が漂う曲調でした。
 アレンジされた「魔の十日間」は、アップテンポで激しくなっております。
 本拠地潜入、というよりはラスボス戦の戦闘曲のようです。それでいて心をざわつかせるような、原曲にあった不安げな要素も残されておりました。
 メダロット1にはラスボス戦の曲が無いのですが、ラスボスのビーストマスターとはぜひこの曲で戦ってみたい!……そんな風に思える一曲でした。

魔の十日間」は、「セレクト隊の本社ビルのようなところから怪電波が発信されて、セレクトメダルを装着していたメダロットたちが暴走する」という事件を指す言葉でした。
 ですが「魔の十日間」 という言葉は、ゲームには出していなかったんですよね。ゲームでは昼夜の区別もなかったので日にちの感覚が無く、「十日」というのがピンとこなかったかったからかもしれません。
 メダロックの「魔の十日間」を聴きながら、「魔の十日間」という言葉の響き、カッコよかったのでゲームでも使いたいなぁ、と思いつつその余裕がないまま終わってしまったことなども思い出しておりました。

……ハッ。「魔の十日間」の曲の時、大画面には何が表示されていたのでしょうか。
 耳から入り全身で感じる津波のような音と、ライブの空間の視覚情報、脳裏に呼び起こされていた当時の記憶や感情……入り混じって、私の脳の処理が追い付いていませんでした。
 これが、「魔の十日間」……!

10.心の在処

心の在処」で千菅 春香様が登場です。
 ベースの「信ちゃん」様とドラムの「のんたん」様が、「心の在処」がとても好きで寝る前に必ず聴いてらっしゃるというお話しをしてくださいました。
 千菅様が歌われる「心の在処」はアリカの可愛い部分を抽出して凝縮したようで、世の男性の多くがときめいてしまう、そんな魅力を放っておりました。
 歌声、歌い方、すべてが夢のような、現実離れしたレベルでかわいらしかったのです。
 こんなかわいらしいヒロインならば、心奪われて当然です。私もときめきました。

 ところでゲームのアリカはと言えば、歌のイメージとは打って変わりかなりの傍若無人っぷりを発揮しております。
 元々アリカはシリーズを通じてジャイアントスイングの勢いでイッキを振り回し続け、イッキの練習相手という設定ながらロボトルの腕は最強クラスを誇り、敵のアジトを単身で殲滅するという、かよわさの対極にいるような女の子でした。

ロボロボ団員「まさか われわれの アジトが
 たった1人の小学生
 しかも 女の子に 攻めおとされるとは
 ユメにも 思わなかったロボ・・・」
ロボロボ団員「ギンジョウ小の 女の子は
 バケモノか!? ロボ」
イッキ「いや たぶん アリカにしか
 できないんじゃ ないかなぁ?」
コウジ「そういや・・・
 おれが 聞いたのは さけび声で
 ヒメイじゃ なかったな」
ロボロボ団員「おうえんを よぼうと
 なんとか にげだしたところを
 おれは お前たちに
 つかまったロボよ」
イッキ「そうだったのか・・・」
アリカ「なによ~ みんなして
 人を オニか アクマみたいに」
ロボロボ団員「オニ ロボか?」
ロボロボ団員「アクマ ロボか?」
ロボロボ団員「むしろ だいまおうロボ~!!」
(アリカに往復ビンタされるロボロボ団員たち)
アリカ「かよわい おとめ つかまえて
 何 言ってんのよ!」
イッキ「かよわい?」
コウジ「おとめ?」
ロボロボ団員「どこに いるロボか?」
(全員往復ビンタ)

出典:メダロット4

……イッキとイッキの仲間でありライバルでもあるコウジ、そして敵であるはずのロボロボ団員たちの見解が一致し、敵味方の区別なくその場にいた全員がヒロイン、アリカに成敗されたシーンです。

 そんなアリカがかわいらしい態度をイッキに見せるようになったのは、メダロット4でイベントを担当したバイト氏の功績でした(つまり私ではありません)。
 そして原曲も、原曲に付け加えられてアレンジされたメロディーもとてもかわいらしいものでしたので、私は極力アリカのかわいらしくも女の子らしい部分を歌詞に込めたのです(「気まぐれで荒れ模様」、という部分に傍若無人なゲームのアリカの片鱗を詰めておきました)。
 さらに千菅様がキュートなお声で歌い上げてくださったことにより、「心の在処」は私の予想を遥かに超えてかわいらしく、世の男性のハートを掴むステキな歌になりました。
 あまりのかわいらしさに、元のアリカの所業をよく知る……と申しますか、そのアリカの所業を生み出した私自身が受けた衝撃が凄かったです。
 これもギャップ萌え……ということで……?(混乱)

……MEDAROCKSの皆様は(年代的にも)ゲームボーイ版のメダロットを未プレイとのことでしたので、ゲームのアリカを知ったらどう思われるのだろう、などと思いました。
心の在処」でかわいいヒロインだと思っていたら、ゲーム序盤から練習相手のハズが最強クラスの実力を持つアリカから容赦なく叩きのめされ、ゲーム内のイベントでも散々な目に遭わされる悲喜劇……。
 せめて歌の中だけでも、かわいらしいアリカを堪能したい……「心の在処」は、メダロッターの皆様にそんな思いを抱かせる歌になったのかもしれません。

11.悪ガキのテーマ

悪ガキのテーマ」は、キクヒメ、イワノイ、カガミヤマの悪ガキ三人組、スクリューズのテーマ曲です。

 スクリューズは、ゲーム開始早々に卑怯な手で小学校のロボトル大会の優勝をかっさらった上に、まだ1体しかメダロットのいなかったイッキに3対1で問答無用のロボトルを仕掛けてきたり、公園を占拠して「公園を使いたければ1時間1パーツ」を請求したりと 、存分に悪ガキっぷりを発揮していました。

キクヒメ「 勝てるしょうぶを するのが  あたしの モットーよぉ」

出典:メダロット4

 メダロット2~4のシリーズ通じて、毎度序盤から彼らは悪ガキらしく悪さをしでかしていた彼らはまさに、「BAD GUY」だったのです。

 ですがイッキはイッキで、スクリューズにやられっぱなしではありません。
 スクリューズの悪事はイッキ(たち)によっていつも阻止されました。悪事を働いてもうまくいかない辺りは、ロボロボ団に通じるものがあります。
 カッコよさの中にも、軽快でコミカルな要素が含まれている「悪ガキのテーマ」は、とてもスクリューズ「らしさ」を感じさせる一曲と言えました。

 メダロット4で私は、楽しく海で泳いでいたスクリューズたちが、特訓のため泳ぐことが許されなかったイッキたちをあざ笑う、というイベントを作りました。

キクヒメ「あたしたちはねぇ あんたたちと
 ちがって 今日は 1日中
 思いっっっきり あそべたんだからぁ」
イワノイ「お前らは 毎日
 スパルタきょうしの シゴキだー!」
カガミヤマ「水の中は つめたくて 気持ちいー!」
アリカ「何よーっ! すき勝手 言ってるんじゃ
 ないわよーっ!
 こっちは すきで やってんじゃ
 ないのよっ!」
イワノイ「やーい くやしかったら
 ここまで 来てみろー!」
キクヒメ「これで あんたたちの 夏も
 おわりねぇ」

出典:メダロット4

 その後色々あってイッキがホテルにいたところに、日焼けの痛みに苦しみながらスクリューズがやってきます。
 スクリューズは三人とも、少し触れられただけで激痛が走る状態です。

イワノイ「あねごー 体がー
体が・・・ ヒリヒリ・・・」
キクヒメ「ち・・・近よるんじゃ ないよっ!」
カガミヤマ「いたいー いたいー」
イッキ(なーるほど あいつら
ひやけしすぎて はだが
ヒリヒリしてんだな)
イッキ「やー お前ら ひるまは ずいぶん
楽しそうだったけど
どーかしたかー?」
キクヒメ「!!!!!!!・・・ぎゃあああっ!!」
イワノイ「ああ あねご!」
カガミヤマ「しっかり!」
キクヒメ「何 しやがんだよっ!」
イッキ「何って あいさつだよ」
キクヒメ「あああたしに さわんじゃないわよぉ!」
イッキ「さわるなといわれると さわりたくなる」
キクヒメ「ヘ ヘンタイ!!」
イッキ「ふっふっふ・・・
 えいっ!」
キクヒメ「ぎゃああああっ!!!」
イワノイ「あねごに 何をする!」
イッキ「じゃ お前に」
イワノイ「ぐぎゃああっ!!!!」
イッキ「えいっ!」
イワノイ「うぎゃあああっ!!!!」
カガミヤマ「こ・・・来ないでっ!!」
イッキ「さっきの おかえしだーっ!」

出典:メダロット4

 悲鳴を上げて逃げ惑うスクリューズを、普段は大人しいイッキが笑顔で追いかけまわすのです。
「覚えてなさいよぉ!」と捨て台詞を吐いて去っていくキクヒメたちに、「あー面白かった」と笑顔を浮かべるイッキの姿に、溜飲も下がるというものでした。
 そしてスクリューズのイベントの間は、ずっと「悪ガキのテーマ」が流れていました。
 上記のイベントを、メダロックアレンジされた「悪ガキのテーマ」を聴きながらプレイしてみたいものです。きっとイメージピッタリだと思います!

 普段は卑怯な手を平気で使いロクなことをせず、立派な「BAD GUY」っぷりを発揮しているスクリューズでしたが、憎めないところもあり完全な悪ではありません。
 私はシリーズ通じて必ずゲームの中盤~終盤で、問題解決のため、または共通の敵を倒すため、スクリューズがイッキたちに協力するイベントを用意し、彼ら三人の見せ場を作っておりました。

 そんな愛すべき悪ガキたちのテーマが、ロックにカッコよく、そして原曲にもあったコミカルな要素もちゃんと含めてアレンジされていたのです!
 ライブでの「悪ガキのテーマ」は、糸賀様のスキャット成分濃い目で痺れました。声でありながら楽器の一つであるかのように、MEDAROCKSの皆様の演奏と見事に共鳴されておりました。
 糸賀様の生「バッガイ!」も、クールでした!
 今回のライブは歌い手の方が全て女性でしたので、糸賀様のスキャットが際立ちました。
 会場の皆様も男性がほとんどでしたので、「ヴォイ! ヴォイ!」の合唱は低いトーンでほぼ統一されていて、それもまたロックでした。

12.Judgment of God

Judgment of Got」はメダロット2のラスボス曲です。
 戦闘曲にはアップテンポで激しいものが多かったですが、こちらは不気味なスローテンポのラスボス曲です。

 無機質な外骨格。話の通じる相手ではありません。圧倒的な強さです。
 強い! 強すぎる! この敵には、勝てない……!
……そんな絶望感が、メダロックアレンジによってより引き立てられていました。
 声のようなエフェクトも相まって荘厳さが増し、邪教の神殿にでもいるかのようでした。
 絶望の神……そんな表現が似合う空気感でした。

 メダロット2のラスボスと言えば、シャコをモチーフにしたゴッドエンペラーです。
 シャコで思い浮かべるのはシャコパンチですが、ゴッドエンペラーは射撃タイプでした。

頭部:デスブレイク
右腕:デスミサイル
左腕:デスレーザー
脚部:デスクローラー


 各パーツの名前からして、完全に息の根を止めにきています。
 そして装着されているメダルは、悪の科学者ヘベレケ博士によりリミッターを外され最初からメダフォースがマックス状態で、さらにメダフォース「いっせいしゃげき」を習得済みのカブトメダルでした。
 つまりバトル開始早々、いきなり三つのデスがつく凶悪パーツで一斉射撃されるんですよ! しかもそれが3体がかりで襲い掛かってくるのです!

……ちなみにヘベレケ博士は、「ギャルにモテモテになりたい」という己の欲望を叶えるために、世界征服を企んでいました。
 世界征服の動機はなんでもよかったのですが、とにかく理由を作ることで「私欲のために世界征服」という悪の博士の特徴を際立たせたいと、私は考えました。
「ギャルにモテモテになりたい」という理由づけは、当時ドラゴンボールを視聴していた私が、亀仙人を思い浮かべてなんとなく決めたのでした。

 ヘベレケ博士は、私利私欲に駆られずメダロットと共により良き世界を作ろうと日々頑張っているメダロット博士とは、対極の人です。
 思考が悪よりな私は、ヘベレケ博士も好きだったりします。
 幼い頃戦隊ヒーローものを見て私が憧れたのは、ヒーローよりも「悪の科学者」でした。
 自らの欲望を叶えることが人をも喜ばせることであれば、結果的に大きな社会貢献も成し遂げられるように思います。
 ヘベレケ博士の場合は己の欲望が人の望みと合致しなかったので、はた迷惑なおじいちゃんになってしまった、というお話しでした。
 ですが私はヘベレケ博士の、「目的を貫くために力を尽くす」というその姿勢は好きなのです。

 そんなヘベレケ博士が繰り出したゴッドエンペラーですが、メダロットは元となっていたシステムがマジック・ザ・ギャザリングというカードゲームだったので、実は対策さえ知っていれば割と簡単に勝てる相手なのです。
 ですが対策を知らずにゴリ押しで戦おうとすると、反撃の余地すらなく消し炭にされてしまうのです。
……これが、ゴッドエンペラーが皆様のトラウマになった由縁でしょうか。

ドッゴオオオオオオォォォォン!!
グルゥアアアウゥゥゥゥッ!!

出典:メダロット2

……ライブで大画面に映し出されていた、ゴッドエンペラーが壁を突き破って登場するシーンです。
Judgment of Got」の演奏中、ゴッドエンペラーの登場シーンが映し出される度に、メダロッターの皆様から「おおー」「うおっ」「はぁあ~」といった歓声のような、悲鳴のような、ため息交じりの悲痛な声が上がっていました。

 大画面を背にして演奏しておられたMEDAROCKSの皆様は、なぜ会場から声が上がっていたのか不思議に思われたようでした。
 何が映し出されていたのか? というご質問に対し、会場からは「トラウマ」という言葉が返ってきました。
「もう一度映してみて」のお言葉でゴッドエンペラー登場シーンが大画面に映し出される度、皆様の口から声が漏れるのがMEDAROCKSの皆様は面白かったみたいで、何度もそのシーンが大画面に映し出されていました。

 ゴッドエンペラーをラスボス戦のイベントで登場させた私ですが、私自身はゴッドエンペラー戦を体験しておりません。シナリオを作り、「戦闘」「ヘベレケ」「ラスボス」といったコマンドを一行入れただけでした。
 私はゴッドエンペラーが当時のメダロッターの皆様のトラウマになっていたことを、メダロックライブでリアルに知り、体験することができたのです!

 メダロックで二十年前のゴッドエンペラー戦のトラウマを脳裏に蘇らせた皆様のお姿を見て、私はメダロックで当時の記憶が蘇ったのは制作者側の私だけではないのだと実感しました。
 私は大写しにされるゴッドエンペラーの姿を見た皆様の口から漏れた悲鳴が、そのご反応が、心の底から嬉しかったのです。
 大画面の映像もさることながら、今でも私たちが生み出したメダロットのゲームを愛してくださっているファンの方々がいらっしゃって、そしてメダロックのアレンジとMEDAROCKSの皆様の演奏が本当に素晴らしかったからこそ、体験できたことだったのです。

13.DARK NIGHT

DARK NIGHT」は、メダロット4の中ボス曲です。
 織田 かおり様の生の歌声はすごい迫力でした!
 ラスボス曲の風格です。初出がロボロボ団戦とは思えない迫力です。
 その迫力に捻り潰されました。CDでお聴きするのとは段違いの迫力です。
 元々カッコよかった原曲が、ロックなアレンジと、MEDAROCKSの皆様の演奏と、織田様という歌い手を得て、何ということでしょう!……まさに絶望を与える恐怖の神の姿を纏って降臨したのです。
 私は己の無力さと身の程を思い知らされ、消し飛びました。

 初出こそロボロボ団員戦の「DARK NIGHT」ではありましたが、主に四天王とのロボトルで流れていました。
 四天王とは、ビーストキング、オロチが各地から集めた子どもたちで、イッキたちと同じく全員小学生でした。
 それぞれのキャラの簡単なご説明と、ロボトルに至るまでのやり取りを載せます。

●玄武のコクエン
 コクエンは、「花嫁候補」と称して各地の小学校からかわいい女の子を攫ってハーレムを作ろうとしていました。

 そんな彼は、コンプレックスの塊ゆえに弱い自分を隠そうと、強い力を追い求めていたのでした。

コクエン「ハンッ! だれが てめぇらの
 めいれいなんざ 聞いてやるかよ!
 オレに めいれい したけりゃ
 勝ってみせろ! じつりょくでな!!」
イッキ「コクエン・・・どうして そこまで」
コクエン「うるせぇ!
 よわいヤツはな 何されたって
 もんくは 言えねぇんだよッ!!」
りんたろう「なんか かなしいヤツだぜ・・・」
コクエン「てめぇ! そんな目で おれを
 見るんじゃねぇッ!!」
たまを「・・・・・・・・・」
コクエン「チクショウ・・・
 てめぇらも そうやって
 オレを 見下すのかあぁッ!!」

出典:メダロット4

●白虎のハクマ
 自らの感情や望みを封じて人々の幸せを願っていたという、四天王中最もいい子でした。
 カリスマ性を持つ彼は、シンラ村で住人たちの信望を集めていました。
 そしてハクマの願いを叶えようとした忠臣ビャクヤの暴走により、一つの村が狂信者の教団のようになってしまったのです。

 そんな彼でしたが、本当は対等な立場で共に笑いあえる友だちが欲しいだけの、孤独な少年だったのです。

ハクマ「ぼくが 正しいのか それとも
 きみたちが 正しいのか・・・
 しんじつは ひとつだけ
 けっちゃくを つけよう」
イッキ「ぼくたちは まけない!
 しょうぶだ ハクマ!」

出典:メダロット4

●朱雀のシュリ
 美しいものこそが正義という、歪んだ観念を持っていたシュリは、花園学園一の美少女で、ヒロインの一人でもあるカリンに強い執着を見せます。

 そんな彼女が本当に望んでいたものは「美しいもの」ではなく、父の愛でした。

シュリ「だって そうじゃない?
 ここにたどりついたのは
 あなた1人だけ
 ・・・と いうことは あなたは
 ほかの人たちを おきざりにした」
イッキ「・・・・・・!」
シュリ「あら くやしいの?
 言いかえせないから?
 ふふふ うふふふふ
 あーはっはっはっは!」
イッキ「わらうなっ!!
 みんな みんな ひっしの 思いで
 ぼくを 先に 行かせてくれたんだ!
 シュリっ しょうぶだっ!!」
シュリ「カリンは わたさないわ!
 わたしの じゃまをする者は・・・
 お前は ゆるさない!」

出典:メダロット4

●青龍のミズチ
 メダロットに感情や三原則はいらないと主張し、メダロットたちを支配下に置く世界を理想として、その世界にイッキを取り込もうとしていました。

 そんな彼は、かつて事故でパートナーのメダロットを失い、心に深い傷を負ったが故に、歪んだ理想郷を追い求めるようになったのでした。

ミズチ「『レゾナンスシステム』てきおうしゃ
 こそが せかいの
 トップに 立つ者なのだ
 大人より 子どもの方が より
 てきおうりょくが ある
 イッキ
 ・・・お前が
 おれと いっしょに 来ていれば
 このシステムの すばらしさを
 あじわうことが できたのに」
イッキ「こんなのが・・・こんなのが
 メダロットの しあわせだなんて
 うそだっ!
 ミズチ きみが めざしているのは
 りそうきょうなんかじゃない
 そんな せかい あくむだ!
 目を さましてよ ミズチっ!!」
ミズチ「メダロッチなどに たよっている
 かぎり じんるいに
 しんぽは ありえない」
イッキ「ミズチ? どこへ・・・」
ミズチ「・・・・・・・・」

出典:メダロット4

 四天王たちは、それぞれ戦う理由と苦悩を抱えていました。
 四天王とのバトルに至る対決シーンは「DARK NIGHT」の曲にふさわしく、アツい展開にしたつもりです。
 そしてイッキとの対決に敗れた後、四天王たちはイッキの信念に心打たれて力を貸すようになるのでした。
……そんな四天王たちでしたが、ホ●、教祖、レ●、ストーカーというヘンタイ四天王という顔の方が目立っていたかもしれない、という部分も含めて、「カッコいい」だけでは終わらない「メダロットらしさ」だと思っています。

 織田様の歌とMEDAROCKSの皆様の演奏による「DARK NIGHT」には、四天王たちとメダロットの「カッコよさ」成分が濃縮されていました。

 かなり濃い目のお話しが続くのでなかなか終わりませんが、今回はここまでです。
 懲りずに続きもお読みいただければ嬉しいです。
……それではまた次回、お楽しみに♪

― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ―
補足:
「悪ガキのテーマ」はスクリューズの3人組ではなく、初代の悪ガキのテーマでした。
20年の時を経て、私の中ですごい勘違いと思い込みが発生していたようです。
「悪ガキ」違いでしたが、私の思い描く「悪ガキ3人組」のカッコよくてコミカルなイメージが伝わればと思います。

5+

メダロックライブレポート(その2)

 改めまして、メダロットとは「メダルで動くロボット=メダロット」です。
 そして「メダロット+ロック=メダロック」です。
 メダロックは昔懐かしいゲームボーイのメダロット1~5の8ビットのゲーム音楽を、ロックにアレンジしたものです。
 それでは、メダロックのアーティストのご紹介です。

<MEDAROCKS>
ギター:長澤 トモヒロ(トモくん)様
ベース:岩切 信一郎(信ちゃん)様
キーボード・マニピュレーター:大場 映岳-hana-(hanaちゃん)様
ドラム:北村 望(のんたん)様
アレンジャー:鎌田 瑞輝様

<Singer>
織田 かおり(かおちゃん)様
千菅 春香(ちっすー)様
萌花(もえか)様

<Guest singer >
EXiNA様

……錚々たるメンバーです。
 メダロックライブには、歌い手の方が4名も!
 ゲストのEXINA様は、メダロットSのイメージソング「OVERTHiNKiNG BOY」を歌われました。

 歌い手の方々は皆様女性です。
 原曲を作られた方も女性ですし、メダロット5のシナリオを担当された方も女性です。
 そしてメダロット1~4のシナリオ他開発に携わり、今回作詞を担当させていただいた私もまた、同じくです。
 男性ファンの多いメダロットですが、メダロットもメダロックも、女性の成分は結構濃いと思うのです。

……ところで、私は音楽に関してはド素人もいいところです。
 音楽用語などの知識はほぼ全くありません。
 ですので、音楽的な表現や感想が非常に稚拙になってしまうと思います。
 また衝撃の連続で頭が真っ白になっていたので、記憶が曖昧なところが多々あります。
 しっかりと記憶と魂に刻み込むためにも、何十回でも何百回でも体験したいライブでしたが、現時点でメダロックライブに参加できたのは、この一度きりです。
 誠に申し訳ないのですが、「どの曲でどの映像が表示されたか」の間違い等々があるかもしれません。
 あまりの衝撃で、記憶が捏造されている可能性もございます。己の脳の記憶力と処理能力の限界が悲しいです。
 兎にも角にも、メダロットというゲームに当初から関わってきて、メダロットに我が子のような思い入れを持つ私自身の感想や想いが伝わればという一心で書いております。
 稚拙でも、間違いがあっても構わないと思ってくださるお方は、最後までお付き合いいただければ幸いです。

01.M・R・2

 うのへえ様と糸賀様が舞台に立たれ、軽妙な掛け合いトークで注意事項などを交えながら場を盛り上げられた後、ライブは「M・R・2」……メダロット2のオープニング曲から始まりました。
 ゲームボーイ時代の8ビットな音から始まって、やがてそれにエフェクトが掛かり音に深みが増していきました。
 この曲に限らず、メダロックの全曲通じて実に様々な音……時に不思議で時にクール、時に繊細で美しい音が入っていましたが、これがマニピュレーターと呼ばれる楽器が奏でる音の効果なのでしょうか。
 私には分かりません。分かりませんが、とにかく凄いです。カッコいいです! ステキです!

 さらにドドッドンというドラムの力強いリズム、ギター、ベース、キーボードの音色が合わさっていき、一気に大きな音の波が押し寄せてきました。
 私は、圧倒的な音の洪水に全身が呑み込まれました。
 音が振動としてダイレクトに伝わってくるのです。この感覚は久々でした。
 やはり生は全然違います! 全然ですよ、全然! 音が振動として感じられるので、全身が耳になったみたいでした。

 そしてステージの大画面には、懐かしのメダロット2のドット絵が次々と映し出されました。
 この時点でブワッと感情が溢れ出しそうになりましたが、ここで自我を失うわけにはいきません。
 私は平静を保ちました。それはそれはもう、必死に。

02.Strike Enemy

Strike Enemy」 は、メダロット2ロボロボ幹部戦のBGMです。
 大画面には、歴代ラスボスのシルエットが、次々と映し出されていきました!
 不気味な効果音にテクノな音が混じり、一気に激しさが増しました。
 テクノな高音とベースの重低音の共演、そして激しさから一転、しばし不安を覚えるような静けさが訪れ、再び激しい音の洪水が押し寄せる――この緩急が、曲に緊迫感を作り出していました。
 最後の余韻も良かったです。

 原曲からすでにロボロボ幹部戦とは思えないカッコよさだったのですが、それがロックアレンジでさらに洗練されたカッコよさを纏っていました。
 原曲がゲーム内で実際に流れたのは、ロボロボの時給では贅沢ができないロボロボ女幹部スルメがメダロット社でウェイトレスのバイトをしていたという暴露話から始まるロボトルの時とか、カリンのメダルを奪って嫌がらせに炭酸の池に落とそうとしているロボロボ団ボスのサケカースとロボトルの時とかでした。
Strike Enemy」のカッコいいBGMとは裏腹に、ロボロボ団幹部たちはこれといって深い理由のない戦いを繰り広げておりました。

 メダロット1では世界征服を企むロボロボ団のボスがラスボスでしたが、2以降のロボロボ団はラスボスに利用される立場となってしまったため、より道化な姿が際立っておりました。
 ロボロボ団幹部戦は、カッコいいBGMとのギャップが凄いのです。
Strike Enemy」がライブで演奏されている間、歴代ボスの映像ではなくメダロット2のロボロボ幹部戦の前後のやり取り映像が流れていたら、そのギャップは凄まじいレベルにまで達していたかもしれません。
 MEDAROCKSの皆様は、メダロットをご存じないという事でしたので、カッコいいバトルをイメージして演奏されていたのではないかと思います。
 ですがかつて、かなりおマヌケなロボロボ幹部戦を演出していた私は、「Strike Enemy」がカッコよすぎて衝撃を受けたのでした。
 そんなロボロボ幹部たちですが、ロボロボの悪の美学に従って、シリーズを通して卑怯な手段で勝ちに行こうというスタイルは貫いていました。
 悪の道は厳しいのです。ロボロボ団は、時給も低いですしね。

03.Burning Force(inspired by “I”)

Burning Force」はメダロット2~4の主人公、イッキのテーマ曲です。
 ゲーム版のイッキは熱血タイプではなく、どちらかと言えば個性的な周囲のキャラクターたちに振り回され続ける大人しい性格でした。
 そんなイッキが、ここぞというシーンで敵に立ち向かおうとする時に流れるのが、この曲だったのです。
 とても仲間思いで心優しいイッキは、大事な仲間が傷つけられた時や、かけがえのない友でありパートナーであるメダロットたちを、身勝手な欲望の道具にしようとする者たちに対しては、アツくなりました。

 現役の女子高生、萌花様がご登場されました。とてもかわいらしいです。何と申しますか、とにかく実物はさらにかわいらしいのです。
 娘とほとんど歳が変わらないのもあって、応援したいと思う私の気持ちも高まります。
 萌花様は、緊張してる? という質問にも「あんまり緊張はしてません!」と、元気よく即答されていました。
  流石です。私ならステージに立った瞬間真っ白になり、生まれたての小鹿のごとく足は震え、その場にとどまることすら覚束なくなりそうです。
 16歳にして、すでに大物の貫禄です。
 若々しい声の伸び、フレッシュな歌声、聴き取りやすい素直な歌い方は、イッキのイメージにピッタリで、まるでイッキが歌っているかのようでした。

オロチ「ふん! いいだろう!
こうなってしまえば もう
わたしの メダルと お前の メダル
・・・より すぐれた ものが
勝ーつっ!
お前の ひんじゃくな
メダロッチの でんぱなどで
地上の パーティクルに めいれいが
とどくかな?」
イッキ「今の ぼくに メダロッチは
ひつようない
ぼくの 心と ぼくの パートナーの
心は 1つに つながっている」
オロチ「では お前の『しんらい 』とやらと
わたしの プライドを かけて
しょうぶだっ!!」
イッキ「おおっ!!」

出典:メダロット4

 メダロット4ではラスボス、 オロチとイッキのこのやり取りの間、「Burning Force」の原曲、「I」が流れていました。
 この後オロチとイッキの、メダロットも一対一という文字通りの一騎打ちが始まります。
 そしてイッキの「信念」と、オロチの「プライド」を賭けたラストバトルで流れるのが、「DO・OR・DIE」……「Until The End」の元となった曲なのです。
 普段は大人しいイッキが、大切なものたちのために「強く熱く」「命燃やして」、時に迷いながらも「迷い捨てて」、「仲間 勇気 絆」というゆずれないもののために、敵に立ち向かうのです。

 イッキのアツい思いが、萌花様の歌声で鮮やかに蘇りました。
 激しいラストバトルの後、さわやかなエンディングを迎えます。
 雲が晴れて、青い空が広がっていく感じです。メダロット4の先生のパッケージのイメージですね。その光景もまた、萌花様がさわやかに歌い上げてくださいました。

04.M・R・3

M・R・3」は、メダロット3のオープニング曲です。
 様々なゲームの効果音もいい感じで入っていて、ロボトルの光景が目に浮かぶようでした。
 ソード・ハンマー・ライフル・ガトリング・レーザー・ビーム・ミサイル・ナパーム・ブレイク・プレス・デストロイ・サクリファイス・バグ・ウィルス・ウェーブ・ホールド・ファイヤー・メルト・サンダー・フリーズetc……当時のメダロットには、他にもまだまだ戦闘で使用されていた効果音がありました。
 私はどの音がどんな順番で入っているのかまで把握できてはいませんが、全てお分かりになられた方もいらっしゃるのではないでしょうか。
 8ビットの音と、それぞれの楽器の音の共演がカッコいいんです!
 ドラムが速いです。すごいスピードです。 その速さに、メダロット3で私が体験した最も過酷で凄まじいデスマーチの記憶も、まざまざと蘇ってまいりました。
 いい感じです。当時の苦しみまでも思い出すということはつまり、メダロックはしっかりとメダロットしていたということなのです。
M・R・3」では、メダロット3のデモ絵が映し出されていました。蘇った記憶と共に、元となったエクセルで描いた私の絵コンテを載せておきます。

メダロット3絵コンテうるち「全国の ロボトルファンのみなさん
おまたせ いたしました!
わたくし ロボトルきょうかい
こうにん レフェリー
ミスター・うるちです!
スカイTV ていきょう
メダロット えいせい
『テラカドくん』から
おおくり している
『週刊メダロット』の お時間です!
本日 ゲストを おむかえしています
ニモウサク ユウキさん どうぞ!」
メダロット3絵コンテユウキ「やあ よい子の メダロッターたち
元気かい?」

出典:メダロット3

……当時このレベルの絵コンテを元に、あの素晴らしいドット絵を描き上げられたグラフィッカーさんには脱帽です。
 プロの方のこういった絵コンテは、絵コンテとは思えないレベルのハイクオリティーなものが多いですが、私の絵コンテからは「分かればいい・伝わればいい」という私の大雑把な性格が伝わってきますね。

05.ロボトルファイト!

ロボトルファイト!」では懐かしいうるちさんのお声と共にロボトルの映像が映し出され、ロボトル中メダロットたちが一生懸命走る、懐かしい記憶も呼び起こされました。
 ロックにアレンジされて、ロボトルが激しさを増した感じです。ソロの部分もカッコいいです!
 途中で「はー」という声のようなエフェクトが入り、はっとする感じもいいです。

 原曲の軽快さを残しつつ重厚感が加わり、ロックとなって、ロボトルもテンションもさらに盛り上がること間違いなしです!
 いつの日か現実世界で、メダロックの生演奏と共に本物のメダロット同士でのロボトルファイトが実現したら……そんな夢が広がりました。


背景には母の絵(陶器)を置いてみました

06.Let’s dance!(inspired by “レッツ ロボトルダンス”)

Let’s dance!」は、原曲名「レッツ ロボトルダンス」で、2曲目の通常戦闘用BGMでした。
 原曲発注時にこちらが付けていた仮の名前はそのまま「戦闘2」で、「パラパラのような、楽しげなイメージ」でお願いしていました。
 実際、原曲はとても楽しい雰囲気の戦闘曲となりました。

 それがメダロックではクールでロックに蘇り、私も当初考えていた楽しげな歌詞ではなく、メダロットたちが激しい死闘を繰り広げる様を歌詞にしたのでした。
 そして「Let’s dance!」は織田 かおり様という歌い手を得ることで、さらにパワーアップしました。
 ライブでは、織田様の生の声量と歌唱力に圧倒されました。
 織田様の力強い歌声で、「傷つきながらも戦場を駆け抜け、全力で戦い続けるその姿はまるで激しく踊り続けているかのよう」……そんなメダロットたちの姿が目に浮かぶようでした。
Let’s dance!」では「悪に立ち向かう正義」を、ライブ後半で歌われた「DARK NIGHT」では「正義を捻り潰す悪」を……一人二役で善と悪という対極の立場を歌いこなす織田様の圧倒的な歌唱力は、見事なものでした。

 織田様の歌で激しさを増したロボトルは、途中で挿入された囁くような絞り出すような「たすけて」の一言で、さらに激戦っぷりが際立った感じです。
「たすけて」の一言は私ではなく糸賀様の案で入ったものですが、死闘を繰り広げるメダロットたちの心境を表しているようで、面白かったです。
 パーツを壊されて奪われて、それでもパートナーのメダロッターには「踊れ! 走れ! 戦え! まだまだぁ!」と言われるのですから、思わず「たすけて」の本音が漏れだすのは、当然と言えば当然でしょうか。

07.Evil spirit

Evil spirit」では、メダロット3でのスピリットたちとの熱きバトルが蘇りました。
 スピリットたちといえば、エレクトラ、ビリジアナ、セルリアーノ、トパージアの4人(体)です。当時、ゲームボーイがカラー専用になったので、スピリットたちは色をイメージしたキャラクターにしました。
 スピリットたちは、月のマザー、ブラックデビルによって生み出された地球のフォースの化身たちです。
 悠久の時を月で独りぼっちで過ごし、孤独に苛まれつづけていたブラックデビルは、配下のスピリットたちに人間を連れてくるよう命じます。
 ですが、スピリットたちは身勝手な人間たちを敵視していました。そしてイッキたちの前に敵として立ちはだかったのです。

 軽快なリズムで始まった「Evil spirit」に、重低音が響きます。それが緊迫感を醸し出し、スピリット戦との激しい攻防を思い起こさせました。
 会場にメダロッターの皆様の「ヴォイ! ヴォイ!」の大合唱が響きました。
 せっかくですので、ここでも私の絵コンテを載せておきます。

イッキ
「何だっ!?」
エレクトラ
「データはいただいた
ザンネンだったな ニンゲンども!」

イッキ
「なっ・・・だれだ!?」

エレクトラ
「わが名は エレクトラ!
お前たち ニンゲン テキ!」

イッキ
「何だって!?」
イッキ
「・・・あ! まてっ!」

出典:メダロット3

……ライブで大画面に映し出されていた、懐かしのドット絵映像の記憶が、私の絵で上書きされてしまったら申し訳ありません。ですがこれが元の絵です。
 真ん中の人型のようなものがスピリットの一人、エレクトラです。エクセルでのお絵描きには、中毒性がありました。

 私は関係者スペースだったのもあって声を出す勇気がありませんでしたが、一生懸命ペンライトを振っていました。
 関係者スペースの方々は静かだった気がします。観察者としての使命を帯びておられたのかもしれません。
 私は関係者や観客の枠も飛び越えて、当事者といった感覚でした。
 ライブ中私は様々な記憶や感情が一度に湧き上がり、魂を鷲掴みにされ、揺さぶり続けられていました。

……私の思い出深いエクセル絵もお見せできましたし、今回はこの辺りで。
 もうヤメテ! と言われそうですが、私の絵はまだ残っていますよ!
 次回も懲りずに見ていただければ、幸いです!
(続く)

8+

メダロックライブレポート(その1)

 うのへえ様より「ご家族もご一緒に」とおっしゃっていただいたので、 メダロックライブには娘と二人でメダロックTシャツを着て参加いたしました。
 東京に行くのは十年以上ぶりでした。
 大阪から東京まで新幹線で約三時間。
 複雑な路線図に戸惑いつつも、なんとか東京駅から渋谷駅へ行き、会場へとたどり着きました。

 うのへえ様より事前にメダロックライブのチケットを送っていただいていたのですが、メダロックライブの注意書きに「チケットを忘れた方は入れません」とあったので、うっかり忘れないよう緊張しておりました。
 ですが当日は関係者ということで、うのへえ様より「名乗ればチケットは無くても並ばず入れる」旨のメールをいただき、うっかり者の私はホッとしました(念のためチケットは持っていきました)。
 会場の受付でドキドキしながらスタッフの方に名を名乗りましたところ確認が取れ、無事に会場入りができました。
 その際、関係者シールを見えるところに貼るように言われました。
 私の腕の関係者シールにお気づきの方も、もしかしたらいらっしゃったかもしれません。

 会場に入ってすぐ娘と二人、スタッフの方に7階の特別室のような場所に案内されました(ちなみにリハーサル中でした)。
 着席してガラス越しに頭上からライブ会場を見学する、といったお部屋です。
 うのへい様からは、「制作陣の中では平野さんが唯一観客としてライブに参加できるので、ぜひ肌で感じて感想をいただけると嬉しいです!」というメールをいただいていたので、「えっ!? ここなんですか!?」という言葉が思わず口をついて出ました。
 オールスタンディングでファンの皆様と同じ空間で……と思っていた私は、驚き戸惑いました。
「はい。お名前をお伝えしたところ、ここに通すよう言われました」
「そ、そうなんですか……」
 呆然としつつも、その時は一部開演までまだ時間があったので、とりあえず下の階に降りることにしました。

 展示コーナー、物販コーナーでお見掛けしたのはほとんどが成人男性でしたが、女性もいらっしゃいました。
 MEDAROCKSの皆様と歌い手の方々のファンの皆様がいらっしゃるのはもちろんのこと、ここにいらっしゃる多くの方々がメダロットファンなのだと思うと、感慨深いものがありました。

 しばらくは娘とARや交換ノート、お絵描きパネルを見たりして過ごしました。
 カウンターの向こうには、ロボロボ団員さんのお姿が!
 ロボロボ団員さんからはクロスメサイアカードをいただき、右手の甲に小さく優しく「s」の文字を書いていただきました。
 ロボロボ団員さんからは優しさのオーラが溢れていました。セレクト隊がいなくても安心です。

メダロックライブ会場
カレーくじで並んでいた時に撮りました。

 続いて快盗レトルトカレーくじのコーナーに並びました。 そこには、快盗レトルトのお姿をした快盗レトルトレディ(?)が!
 そして私もファンの皆様と同じように並び、同じようにくじを引けるのが、嬉しかったです。
 ですが、私には一抹の不安がありました。
 それは、私がメダロッターの方々と同じようにくじを引くことにより、私に豪華景品が当たってしまうことです。
 私の目的はあくまでカレー&スプーンです。
 豪華景品は、ぜひともメダロッターの皆様に当てていただきたい。その一心で、二回だけくじを引かせていただきました。
 その時はカレー&スプーンが当たり、ホッとしたと同時にとても喜びました。
 快盗レトルトカレーは、 無事に快盗レトルトスプーンで食することができそうです。

 その日はうのへえ様に、糸賀様を紹介していただけるとのことでした。
 メダロック作詞をお引き受けしたときから、 糸賀様とはメールやツイッターではたくさんやり取りをさせていただいておりました。
 またYouTubeのメダロットチャンネルでは糸賀様のお姿やお声を、私が一方的に拝見&拝聴していましたが、糸賀様はまだ私の姿形をご存じありませんでした。
 ですが当然ながら、ライブ当日はうのへえ様も糸賀様も大忙しです。
 もちろん、ご挨拶よりライブが優先です。
 しかも私は未成年の娘連れということもあって一部しか参加できなかったので、タイミングによってはお目通りがかなわないかもしれませんでした。次回の機会となると、大阪在住の私はいつになるか分かりません。
 気ばかりが焦っておりましたが、そんな時うのへえ様が目の前を通りがかってくださったので、お声をかけさせていただきました。

 お忙しい中、うのへえ様は快く応じてくださり、「糸賀さんにご紹介します!」と私たちを控室の方に案内してくださいました。
 エレベーターの中でうのへえ様は「いやー、もうバタバタですよー」と笑顔でおっしゃっていました。
 私見ですがその時のうのへえ様の表情からは、「無事晴れの日を迎えられて、そのために忙しいのが嬉しい」……といった空気が伝わってきました。

 控室前に着くなりうのへえ様は、「糸賀さーん! 糸賀さーーん!」と大きな声で糸賀様のお名前を呼ばれました(この時、うのへえ様の呼びかけに反応したのか、一瞬だけお隣の控室から顔を出されたベースご担当の「信ちゃん」様をお見掛けしましたが、ご挨拶はかないませんでした)。

 ライブまで時間が無いので、大急ぎです。うのへえ様は大急ぎで呼ばれていましたが、うのへえ様が控室のドアを開けたら、糸賀様は控室にいらっしゃいました。
「糸賀さん! 平野さんです!」
 糸賀様は私の姿を見かけるなり、席を立ち歩み寄ってきてくださいました。
「初めまして、平野で……」
「おーっ、平野さんっ! どうもご迷惑をお掛けしました!」
 私がご挨拶の言葉を言い切るかどうかのタイミングで糸賀様は両手で私の右手を握り、アツい握手をしてくださいました。
「あ、いえ、そんな、とんでもないです」
 糸賀様の握手が両手でしたので、私は糸賀様の手に左手をそっと、添えさせていただきました。
糸賀様は、
「娘も握手していただきたいと言っているのですが、よろしいですか?」
……というこちらの要望にも快く応じてくださり、娘とも握手してくださいました。
「俺の握手はそんなに価値ないよ?」
 糸賀様は娘と握手してくださった際、そんなことをおっしゃっていましたが、糸賀様との握手に価値がないはずがありません。糸賀様は、メダロックライブの立役者のお一人なのです。
 娘はその後うのへえ様とも握手していただき、とても喜んでいました。

 私は今年の4月にあったメダロット部@難波のイベントにも行かせていただいたのですが、その時も娘と二人で行きました。
 メダロット部@難波のイベントの存在を知り、「行きたい!」と言って私を連れ出してくれたのは、他でもない娘だったのです。
「お母さんの仕事が知りたい!」という娘のたっての希望でした。
 娘に連れて行ってもらった難波のイベントで私はうのへえ様と出会い、そのご縁でメダロックの作詞のお仕事をいただけたのです。
 そういった意味で、娘もメダロックに一役買ったと言えるのではないでしょうか。
 娘がいなければ、私は一人で難波のイベントに行くことはなかったと思います。結果、今回の素晴らしいイベントにご招待いただくこともなかったことでしょう。
 難波の時の「うのへえさんに握手してもらえばよかった!」という娘の想いは、今回のライブイベントで無事果たされました。

「平野さんは今日、上で見られるんですかね?」
「いえっ! 観客席で!」
 小さな握手会の後、糸賀様のご質問にうのへえ様は力強く即答されました。
「上」とは、最初に通された特別室のことでしょう。
 私はうのへえ様が即答してくださったことが、嬉しかったです。
 やはりガラス越しではなく、生で皆様と同じ空間でメダロックライブに参加させていただきたかったですから!
 その後、
「じゃ、関係者スペースですね?」
「女性専用スペースがいいんじゃないですかね?」
「おお! 女性専用スペース! いいですね!」
……というやり取りを、お二人でされていました。
 うのへえ様と糸賀様のお気遣いにも、心が温まりました。

 そして私と娘は、急ぎ控室を後にして下に降りました。
 メダロックライブ第一部の開始時間は、すぐそこまで迫っていました。
 私と娘は慌てて物販コーナーに並び、滑り込みで他のメダロックグッズと共にペンライトを二本購入しました。
 ペンライトはぜひともゲットしてライブで振りたかったので、間に合って良かったです。

メダロックグッズ
メダロックライブ(+グラフアートショップ)で購入したグッズです。

 そしていよいよ、ライブ会場入りです。ここでも関係者とお伝えしたら、入れていただけました。
 関係者シールを見える場所に貼っていましたし、堂々としていればいいと思うのですが、「関係者」とお伝えするのが毎度緊張して噛み噛みで、挙動も不審になっていました。私は全く「関係者」慣れしておりません。
 中に入ると、ファンシーエールカードと抽選券を娘の分と2枚ずついただきました。グッズ購入の分も合わせて、ファンシーエールカードは4枚となりました。
 何の段取りもお聞きしていなかった私は、何の抽選券だろう? と首を傾げながら受け取りました(この抽選権が後に私の運命を変えたのですが、この時の私にはまだそんな予感すらありませんでした)。
 うのへえ様は、あえて私に何もお伝えにならなかったのだと思います。
 極力観客目線でライブを楽しむ、というのが制作陣の中で私だけに許された特権でした。
 私自身、皆様と同じようにできるだけ純粋に楽しみたかったので、何も知らされていないことがありがたかったです。

 スタッフの方に会場に通されたのですが、「関係者」としかお伝えしていなかったので、女性スペースではなく関係者スペースに案内していただきました。
 私としましてはどちらでも問題なかったので、そのまま娘と関係者スペースに入りました。
 私たちは最後の方で会場入りしたので、関係者スペースの中でも一番後ろになりました。
 オールスタンディングなので、ステージは隠れて見えない部分もありましたが、私の右斜め前にはステージ画面を映すモニターが見えました。
 モニターのスペースには撮影の方と、うのへえ様、糸賀様が待機しておられました。
 そして私の左斜め前(娘の隣)には先生がいらっしゃったような気がするのですが、後ろ姿でマスクをされていたので確信はありません。
 関係者スペースも満員でしたが、皆様後ろ姿でお顔が見えず、またそもそもお会いしたことのない方がほとんどでしたので、どなたがどこにいらっしゃったのかは分かりませんでした。
(続く)

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追加料金のプレッシャーによる先読みマップレイアウト

 メダロット1~4までに出てくるマップ(全体マップも含む)レイアウトは全て私が作成していました。
 メダロット1の時は自分でレイアウトしたものを自分で描く、という手順でしたので、シナリオ→レイアウト→イベント配置→修正という手順が非常にスムーズで、修正はいくらでもやりたい放題でした。
 シナリオやイベントに合わせて、マップレイアウトやドット絵を私の一存で自在に変えられたのです。
 何より、修正を人に依頼する必要がないので気が楽でした。
 これはメダロット1が少人数の小規模プロジェクトだったからこそ、できたと言えます。

 メダロット2になると、プロジェクトの拡大と共に開発に関わるスタッフの人数が増えました。
 メダロット2以降、私はグラフィックではなくなりましたが、マップレイアウトは変わらずシナリオを担当する私が全て作成することとなりました。
 ですがメダロット1の頃とは違い、グラフィックは他のグラフィッカーさんにお願いしている状態です。ですので、マップレイアウトを提出後に修正がしたくなった場合、再提出してドット絵を描き直していただかねばならなくなったのです。
 さらにオフィス移転で階が分かれ、かつてはチームメンバーだったグラフィッカーさんたちが別会社の方になりました。
 グラフィックは基本的に、全て外注になったのです。

 会社が分かれる前と違って、 メールでのやり取りの他、 絵を依頼するのにお互い2Fと3Fを何度も往復する必要がありました。
 また、別料金発生ということでチームメンバーの人月計算とは別にメダロット数、マップ数、システム画面、マップ上を歩くコマキャラ数×パターン数等々、 依頼するグラフィックを全てリスト作成し、料金を計算するという仕事も発生しました。

 それまでグラフィッカーさんは私と同じ給料制だったのが、グラフィックは「一枚(個)いくら」になったのです。
 当然ながらグラフィッカーさんに非が無い、こちらの都合による修正に関しては、全て追加料金が発生します。
 これはグラフィッカーさんがチームメンバーだった時は、なかったことです。
 こうしてメダロット2以降、他のグラフィッカーさんに修正依頼がし辛い理由が「申し訳ない」というものから「追加料金発生」という理由に変わり、ますます気軽に修正依頼ができなくなったのです。

……余談ですが、メダロット1の後に開発された野球ゲームで、メダロット1のプログラマー、北玉さんが別会社のグラフィッカーさんたちではなく私にドット絵をお願いしてきたのは、 開発費削減のためと思われます。
 超小規模プロジェクトだったため、少しでも開発費を節約しなければいけなかったのでしょう。
 私が仕事を山ほど抱えていることは北玉さんもご存じでしたので、もの凄く申し訳なさそうにお願いされました。
 私としましては北玉さんにはメダロット1で大いにお世話になりましたし、北玉さんのお人柄もとても良かったので、快くお引き受けしたのでした。

 更に別件で、白玉くんからゲーム企画書の挿絵を描いてほしいと頼まれたこともありました。
 それは別料金発生防止策だったのは明らかでした。その時白玉くんも北玉さん同様、非常に申し訳なさそうにお願いしてきましたが、私は結構ごねました。
 超小規模プロジェクトとはいえ、北玉さんのご依頼は一つのゲーム丸ごとのドット絵です。お引き受けしたとして、給料制の私には基本的に金銭的なメリットはありません。
 それに比べて、白玉くんが頼んできたのは一企画書の挿絵です。北玉さんの方が遥かに大変なお仕事です。
 それなのに北玉さんの時と白玉くんの時で私の態度がこれほどまでに違ったのは、ご両者の日頃の行いによるものです。
 白玉くんの日頃の行い……具体的には、敵メダロット構成悲喜交々に書いたようなことです。それに加えて、私に頼んだ理由があからさま過ぎたあたりです。
 ですが懸命に頼み込む白玉くんの姿に、最終的には引き受けることにしました。
……結局白玉くんの企画はボツになっていましたが、私の絵のせいではないと信じたいです。引き受けたからには、私も力を尽くしました。

 話を戻しますが、私が作成したマップレイアウトが無ければグラフィッカーさんたちが絵を描くことができないので、当然ながら提出をせかされます。
 ゲーム開発が中盤~後半になってくると、まだ構築しきれていないシナリオ部分のレイアウトも先に作成し、提出しなければならなくなりました。
 ですので私は、シナリオの大枠ができた段階で「きっとこんな展開になるだろうから、こんな形のこんなマップが必要になるだろう」と予想し、「アタリ判定」「イベント発生位置」「コマキャラの動き」まで想定してマップレイアウトを作成していきました。
 そして修正がいらないよう、予想で作成したマップレイアウトに合わせて、シナリオとイベントを作成・配置していったのです(バイトの方々にも、イベント配置をマップに合わせていただきました)。
……メダロット2以降、ゲーム開発の中盤~後半はシナリオ・イベント作成とマップレイアウト作成の順番が、逆転してしまうことになったのでした。
 これは、マップレイアウトもマップ絵も自分で描いていたメダロット1の時にはなかったことです。
 メダロット1の時は、私が自分で描いたマップレイアウトを何度自分で修正しても、心苦しくもなく料金も発生しなかったのです。
 これがかなり厳しかったです。

 この方式で私は、2~4までほぼほぼマップレイアウトの修正なしで終わらせました。
 私の脳裏には常に、「追加料金発生」という言葉が深く刻み込まれておりました。
 普段はぼーっとしていることの多い私ですが、 この時ばかりは脳をフル稼働させ 、未来のシナリオの予想を元にしたマップレイアウトの作成をやり遂げたのです。
 それほどまでに、追加料金が発生する修正依頼をすることは、私の中で強いプレッシャーとなっておりました。
 締め切りがオーバーし、開発費がうなぎ上りとなっていく中、「追加料金発生」は全力で避けたかったのです。

 とは言えそれでも、自分で絵を描かなくてよくなったことは、本当にありがたかったです。
 様々なスキルを持つ方々のお力があってこその、メダロットでしたから。

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