平野 佳菜のブログ

平野 佳菜と申します。 メダロット初代ではグラフィックとシナリオ監修、メダロット2~4では主にシナリオを担当していました。

メダロックCDの作詞もさせていただきました。
メダロット+ロック=メダロックです。

現在はFロボプロジェクト進行中です。

Fロボプロジェクト

3+

メダロックライブ(その6)

 メダロックライブレポートも、いよいよ最後の1回となりました。
 今回は……また私がやらかしちゃったお話しとなっております。

波乱の抽選会

 私はライブ会場の一番後ろの左側にあった関係者スペースの中でも、一番後ろにいました。
 ライブ中は、モニターやカメラなどがある一番後ろの中央スペースに待機されていたうのへえ様が、慌ただしく私の目の前を何度も往復されていました。
 糸賀様もうのへえ様のお近くで待機されていたようですが、糸賀様は私がいる場所とは反対側を通られていたようでした。お二人は左右からステージに上がられていた模様です。
 ステージでの出番が多かったお二人は、ステージと中央後ろスペースを行ったり来たりで、とてもお忙しそうでした。

 そしてお二人の軽妙な掛け合いと共に、ライブの途中で抽選会が始まりました。
 この時初めて私は、何も考えずライブ会場の入り口でいただいた抽選券の意味を知って青ざめました。ファンの方々を差し置いて、関係者という立場の私が景品をいただくなんてもっての外だと思ったからです。
 しかも抽選券は娘の分もいただいていたので、2枚……つまり当選確率2倍です。さらにライブ中に会場内で行われたイベントでしたので、辞退を申し出ようにもまったく身動きが取れません。
 カレーくじで「当たり」を出さなかったことでホッとしていた私でしたが、抽選会とお聞きした時は本気で焦りました。
 ですが本来くじ運が無い私は、この時はまだドキドキしながらも「まさか当たらないだろう」と考えておりました。会場には数多くの観客の方々がいらっしゃったのです。どう考えても、当選確率の方が低いはずでした。

 抽選会はステージ上で箱から糸賀様が番号を引かれ、うのへえ様がそれを読み上げられる、という流れでした。
 1番目……何でしたでしょうか!? 覚えていないというより、動揺しすぎて脳に景品名が届いていなかった感じです。
 うのへえ様が「○○番の方~」と番号を読み上げられ、その番号をお持ちの方が高く手を上げられました。
 その様子に私は、
(ととと当選者自己申告形式!?)
……と、もの凄く動揺しました。
(いや、当たらなければ問題ない)
 そう考え何とか気を取り直した私は、次の抽選結果を固唾を飲んで待ちました。
 2番目はMEDAROCKSの皆様との写真撮影会の権利、だったと思います。
 糸賀様より、「当たった方はSNSにその写真をアップする」という条件も出されていました。
 とはいえもちろん強制ではありませんし、顔を出すも隠すも当選者の自由ではありました。ですがそれを聞いた私は、
(もしも私にこの権利が当たったら、責任を取って私も顔出しを……?)
……などと誰得なことを考えるほどに、激しく動揺し著しく混乱しておりました。

 当選者は各景品ごとに複数いらっしゃいましたので、番号が読み上げられるたびに私の鼓動は高まりました。
 そして2つの抽選ともに私が当選することはなく、ホッと胸をなでおろしたところ……。
 ステージから「これだけでは終わりません!」といった声が聞こえてきて、私の心臓は跳ね上がりました。3つ目があったのです。
 そして番号が1人目、2人目と読み上げられ……最後の1人となった時だったと記憶しております。
「28番です!」
 うのへえ様がついに、忘れもしないその番号を口にされたのです。
 普段くじに当たることなどまずない私が、何ということでしょう!
 昔からやらかし人生だった私が、最後の最後で見事に当選いたしました。
(当たったーーーーーっ!! どどどどーしよー!?)
 この事態に、私はあり得ないほどうろたえました。視線とゼスチャーで私の前にいた娘に助けを求めましたが伝わりませんでしたし、伝わったところで娘としても私を助けようもありません。私はそんなことすら分からなくなっておりました。
 当選者は、手を上げるルールです。
「あれー? 28番の方、いらっしゃいませんかー?」
 うのへえ様がステージを見渡し、会場の皆様も当選者の姿を求め騒めき始めました。
 この状況では「当選権はファンの方に」などと、とても言い出せません。言ったところでステージに私の声が届くはずもなく……。
 このまま私がスルーすれば次の方に当選権が回るのでは、という考えも過ったのですが、それも流れ的に良くないと思いましたし、そうなったらなったで時間を取られるのは間違いありません。そして時間に余裕が無いのは明らかでした。……何より、とにかくその時は熟慮する余裕などありませんでした。
 これは手を上げるしかないと、私は観念して手に持つペンライトを高く掲げました。
「おっ、いらっしゃいましたね!」
 私の挙手に気づいてくださったうのへえ様のお言葉と私に向けられたその視線に、会場の皆様がザッと一斉に後ろを振り向かれました。
 会場の一番後ろにいた私に、一瞬にして皆様の視線が集まったのです。観客スペースの照明が暗くて顔までは分からなかったであろうことが、せめてもの幸いでした。

 そして(私の中では)波乱の抽選会が終わり、中央後ろのスペースに戻られたうのへえ様は、私の目の前を通られる際、一言「おめでとうございます」というお言葉をくださったのでした。
 ステージのアーティストの皆様と観客の皆様との距離が近かった会場のこと、うのへえ様が私の居場所をご存じな時点で、当選者が私であることは当然お分かりだったのです。
 また関係者スペースにいらっしゃった方々の中で、一見したところペンライトを手に持ち振っていたのは私と娘だけだったので、目立つのも当然でした。
 驚愕の事態に真っ白になっていた私は、その時お声を掛けてくださったうのへえ様に、何も言葉をお返しすることができませんでした……。

メダロックサイン入りポスター
その日の夜にホテルで撮影したサイン入りポスターの写真です

 ファンの方々に申し訳なくて申し訳なくて、一部終了後にお見掛けしたうのへえ様に、私は「こちらはファンの方に……」と申し出たのですが、うのへえ様には当たった方のものだとおっしゃっていただきました。

 ファンの皆様とは立ち位置が異なったために、 私はアーティストの方々のサイン入りポスター当選に激しく動揺しました。ですが、ポスターをいただけたこと自体はとても嬉しくもありがたい出来事でした。
 大切にさせていただきます。
 家宝として、 代々受け継いでいきたいです。

 ところで、以前私は以下の絵を描いてツイッターに載せたことがありました。

メダロックCDのMEDAROCKSの皆様のカッコいいお写真の片隅に小さくシールにして貼って混ぜてもらおうと描いた、私を盛った絵です(雑)

 本当にこの絵をMEDAROCKSの皆様のお写真ページに貼っちゃうのは、せっかくのカッコいいレイアウトとビジュアルが台無しになってしまう大変に無謀な行為ですので、ロボロボ団でもドン引きです。
 この絵自体はネタですが、後にhana様に私もMEDAROCKSの一員だとおっしゃっていただけたのは、本当に嬉しかったです。
 もちろんMEDAROCKSの一員に加えて頂けたからと言って、家宝のポスターに私のサインを加えて台無しにしたりとかはいたしません。
 そもそも私は人様に向けてサインをしたことがなく、自分のサインがありません。
 試しにサインを考えて書いてみました。

マウスで一発書きです

……こうですか? 分かりません!
 タブレットをつなぐのも面倒だったのでマウスで一発書きしてみましたが、我ながらなかなかの酷さです。
 例えるならミミズがのたくった感じ、とでも申しましょうか。
 家宝のMEDAROCKポスターにはもちろんのことながら、私は人様にサインさせていただくなんてことは、考えないほうがよさそうです(それ以前に需要が……)。

 私のサインの話はともかくとして、私は個人的に波乱だった抽選会で真っ白にもなりましたが、ライブはうのへえ様、糸賀様、出演アーティストの方々のMCや、ドラムののんたん様による楽しい「リズム遊び」などもあり、とても楽しめました。
 ライブはテレビや動画などと違って、ステージ上のアーティストの方々と会場のファンの方々の一体感が味わえるところが、最高ですね!

メダロックライブを終えて

 一部終了の興奮も冷めやらぬ中、アルコール入りとは思わずドリンクを注文し、いただきましたが、とてもおいしかったです!(もちろん娘はノンアルコールでした)
 アルコールが並ぶドリンクメニューに、「あの頃小学生だったプレイヤーの方々が、大人になられたんだなぁ」と感慨深かったです。

 1部のライブは約2時間あったので、2部まであまり時間がありませんでした。
 超タイトなスケジュールの中、ほるま先生と萌花様のサイン会が行われ、うのへえ様と糸賀様がファンの方々と触れ合い、サインや写真撮影、握手などに笑顔で快く応じていらっしゃる光景を拝見しておりました。
 そんな超ご多忙な合間を縫って、申し訳なく思いつつも私は何とかうのへえ様にご挨拶させていただきました。するとちょうどそのタイミングで、糸賀様が目の前を通りがかられました。
「糸賀さん、平野さんに気づかれてました?」
「うん、気づいてたよ。でも、言うわけにいかないでしょ?」
 うのへえ様の問いかけに、糸賀様がお答えになりました。
 私は一番後ろにいたにも関わらず、糸賀様にも気づいていただけていたのです。
 私は嬉しく思う一方で、
(ということは、ポスター当選の件もすでにお気づきなんだろうなぁ)
……などと、考えていたのでした。

 以下にご紹介するのは、ライブ会場のプレゼントボックスにご投函いただいた、ファンの方々から私へのプレゼントです!
 2名の方からいただきました。
 私にもプレゼントをいただけるなんて思ってもみなかったことでしたので、感涙ものでした!

メダロットグッズコレクション冊子です。
フルカラーです! すごいラインナップです!
(匿名希望とのことでしたので、ペンライトでお名前を隠しております)
アルゼンチンで発売されていたという、ヒカルです。レアです!
やたくろー様よりいただきました。
私が描いた、初代メダロットのメタビーとロクショウのドット絵をアイロンビーズで作っていただきました。

 メダロットグッズコレクションの冊子とヒカル人形は同じ方からいただいたのですが、内容の不備で私に迷惑をかけてはいけないと、匿名希望とのことでした。優しいお気持ちが染み入ります。
 とはいえ分かる方には分かる、数多のメダロットグッズを所有されているお方です。
 メダロットグッズコレクションはフルカラー写真満載で、詳細で丁寧なご説明つきです。私が存在すら知らなかったグッズ情報も、たくさん載っていました!
 私だけでなく、より多くのファンの方々にもご覧いただきたいです。
 やたくろー様よりいただいたアイロンビーズのメタビー、ロクショウは力作です! ハイクオリティです!
 私の白黒4諧調のドット絵を忠実に再現して下さっています。

 お二方からのプレゼントの内容も素晴らしいものでしたが、何よりそのお気持ちが嬉しかったです。
 メダロットを長く深く愛し続けてくださっているファンの方々がいらっしゃったからこそ、今回のメダロックライブが実現したのは間違いありません。
 メダロックの楽曲とライブの制作に関わったすべての方々と、メダロットを支え続けてくださっているファンの方々に、心よりお礼申し上げます。
 本当にありがとうございました。

……正直なところ、私は耳がいい方ではないので、楽器の音の種類を正確に聴き分けられている自信がありません。さらにロックの専門用語といった音楽知識も、ほとんどございません。
 hana様のお手より紡ぎ出されていた、時として不思議で時として美しいエフェクトの数々に至っては、「今の……何!? どういう音!? 文章でどう書き表せば!?!?」といった体たらくでした。
 私が今回のメダロックライブレポートを書かせていただくにあたっては、困難の連続でした。
 聴こえてきた音に関して間違ったことを書いていたり、表現がおかしかったりしないかということが気になり、レポートを書き上げるまでに多大な時間を要したのです。
 私はシナリオを書く手は早い方だと自負しているのですが、今回のメダロックライブレポートでは肝心の楽曲部分のレポートは困難を極めた割に、目を見張るようなことは書けておりません。
 そんな私の拙い表現でも、ライブの臨場感やカッコよさ、楽しかったことなど、ほんの少しでもお読みくださった皆様にお伝えできていればと思っております。

 ライブを全力で楽しまれていたファンの皆様の笑顔を拝見し、改めて私は多くの方々に楽しんでいただけるエンターテイメントの素晴らしさを実感しました。
 メダロックライブでは、いつもならば皆様に楽しんでいただく側の私も存分に楽しませていただきました。
 メダロットのゲーム発売から20余年。
 私自身その間人生色々ございましたが、やはり私は今でも自分の作品でより多くの方々に楽しんでいただきたいと思っているのだと、メダロックライブを通じて再確認できたように思います。
 熱はまだまだ燃え盛っております!

メダロックCDとブラックビートルを期間限定のMEDAROCKロゴ入りで撮ってみました

……メダロックライブレポートは今回で終了ですが、私は今後も様々な形で頑張っていきたいです!
 最後までお付き合いいただき、ありがとうございました!

7+

メダロックライブ(その5)

18.M・R・1

「ここから全てが始まりました」
 というお言葉と共に、メダロット1のオープニング曲、「M・R・1」が始まりました。
 ロックアレンジされた「M・R・1」の生演奏と共に、大画面には次々とかつて私が描いた白黒4諧調のドット絵がスクリーンに映し出されていきました。
 メダロット2以降は私が描いたドット絵は無かったのですが、「M・R・1」では私の絵で大画面が埋め尽くされたのです。それまでの曲とは、また違った感動がありました。
 ゲームボーイのごく小さな画面で私が描いた世界が、ライブのステージの大きなスクリーンに映し出される日が来るなんて、夢のようでした。
 とても嬉しい反面、大写しにされることが少し恥ずかしくもありました。
 ゲームボーイのドット絵は、小さなゲームボーイの画面で見ることを前提に限られたドット数で描かれた絵のため、ステージの大きなスクリーンに映し出してお見せすることは想定外だったのです。
 白黒4諧調のドット絵と、ロックな生演奏のコラボです。
 アレンジで追加された部分もまた、まさにロックというカッコよさでした。
 ドラムで始まり、ギターの唸りと呼応するようなキーボードの音色、低音で楽曲に深みを出すベース、時に変則的に叩き方が変化するドラムは全体のリズムを乱すこともなく、本当にお見事でした。
 メダロットのオープニングは、シリーズ通じてどれもロックアレンジがとても似合いますね!

 それにしても大画面にはロボトルシーンなどに交じって、女子トイレ侵入シーンが出てきたところにも、映像を作られたスタッフの方のこだわりとメダロットらしさを感じました。

娘がマイクラで作ってくれた、メダロット1カブトバージョンのタイトル画面です。

 娘はマイクラで、私がやらかしていたドットの抜けとズレまで忠実に再現してくれました。
 メダロット1から20余年。私は娘に指摘されるまで、自ら描いたタイトル画面のドットの抜けとズレに気づきませんでした(クワガタバージョンのタイトル画面にも、同じく抜けとズレがあります)。
 私たちが作ったメダロットが発売20周年に3DSでクラシックスとなって蘇り、私のドット絵をファミ通様の紙面にドーンと載せていただいた時は、心底驚きました。
 さらにメダロットSのプロモーション動画では、私が描いたタイトル画面をトップで表示していただいたのですが、ドットの抜けとズレは当時のままなのです。
 お恥ずかしくも申し訳ない限りであります。

 他にも私はメタビー、ロクショウのドット絵を先生のデザインからアレンジしすぎて別人ならぬ別メダにしてしまっていたり、手が回り切らずイベントで使われないままの謎アイテムが大量に残ったりと、メダロット1にはあれやこれやとございます。
 ですがこのメダロット1があってのメダロットシリーズであり、「ここから全てが始まった」のです。
「ティンペット+頭部+右腕+左腕+脚部+メダル」というメダロットも、ロボトルの基本システムも、メダロット1があってこそでした。
 ゲーム制作当時、「M・R・1」の原曲を初めて聞いた時に私が感じた「カッコいい!」という痺れるような感覚と感動が、大迫力のライブで体感できたことにより、鮮やかに蘇りました。

 そして「M・R・1」の後は、アンコールの嵐でした。アンコールのタイミングも分かってらっしゃるとは皆様、流石です。
 みんなでロボロボを歌わずして帰れるわけがありませんからね。

19.OVERTHiNKiNG BOY

 アンコールの後EXiNA様がご登場し、圧倒的パフォーマンスで会場を盛り上げてくださいました。
 会場があっという間にEXiNA様色に染まりました。EXiNA様の存在感はものすごく、凄まじいばかりのパワーを放たれておりました。
 EXiNA様のライブを体験されたうのへえ様が、糸賀様にメダロックの制作をご依頼されたというお話しも納得です。
 EXiNA様はメダロットSのイメージソング、「OVERTHiNKiNG BOY」を歌われました。
OVERTHiNKiNG BOY」というタイトルは、EXiNA様ご自身や多くの人々にも当てはまるであろう「気がついたら考えすぎちゃってた」状態を表しているとか。
 図らずもこのタイトルは、イッキを彷彿とさせました。イッキはメダロットとメダロッターの関係について、考えすぎるぐらい考えこんでいた少年でしたからね。
 EXiNA様の堂々としたMC、声量、歌唱力、どれをとっても圧巻でした!
 EXiNA様は、まだ二十代前半の娘さんとは思えないオーラと輝きを放つお方でした。

……ちなみに私はEXiNA様の年齢の頃、ゲーム制作でオフィスにこもりきりの生活でした。ファンの方々の前に立つことなど、考えられませんでした。
 EXiNA様と私の過ごし方は対照的だったかもしれませんが、自分の作品で多くの方々を楽しませたい! という思いは、共通するものがあると思います。
 ステージの上から「楽しんで!」という心意気が伝わってきて、とてもアツい気持ちになれました。
 EXiNA様が皆様に向けてメダロットファミリーだと言ってくださったこと、本当に嬉しかったです。

20.M・R・4

 続く「M・R・4」……メダロット4のオープニング曲が始まり、ステージの大画面にはオープニングデモの映像が映し出されました。
 さらわれたカリンと、謎の四天王、そしてその頂点に立つラスボスのシルエットが浮かび上がり――。

さらわれた カリンの行方

共にたたかう仲間たち・・

なぞの少年
――――ミズチ

四天王とは?
そして・・・

新たなる
たたかいへ!

出典:メダロット4 

 メダロット1にはオープニングデモはありませんでした。
 そしてライブの大画面でも映し出されていたメダロット2、3のあのカッコいいオープニングデモに関しましては、全てグラフィッカーさんが考えて作成してくださったものでした。
 ですがこのメダロット4のオープニングデモの絵コンテと上記のセリフは、私が描(書)いて発注したものです(合間に挟まるカブト・クワガタが出るスクロール絵は、グラフィッカーさんが独自に挿入されたものです)。
 ライブの大画面でメダロット4の思い入れのあるオープニングデモが見られて、感激でした。

……余談ですが、「四天王とは?」のシーンの絵コンテ、四天王のシルエットの上にラスボスのシルエットをエクセルで描いた絵コンテをグラフィッカーさんにお渡ししたのですが、私はラスボスオロチがこう……両手をグワッ! と突き出す図にしていたんです。
 そうしたら両手とも親指の位置が左右逆になっており、当時のグラフィッカーさんには「手、逆……」と苦笑いされてしまいました。
 デスマーチで疲弊していたとはいえ、グラフィッカーの端くれとも思えぬ己のこの失態に、私も苦笑するしかなかったという痛ましい記憶も蘇りました……。
 本当に私は、色々とやらかしております。

 そしてメダロット4のオープニングデモに続いて大画面に大写しにされたのは、メイド少女姿のイッキと四天王の一人、コクエンのシーンでした。
DARK NIGHT」でご紹介した四天王の一人、「玄武のコクエン」。
 各地から花嫁候補としてかわいい女子小学生たちを集めさせていたコクエンが最も心奪われたのは、花園学園一の美少女でヒロインの一人でもあるカリン……ではなく、メイド服で女装したイッキでした。

 ライブ中大画面に映し出されていたのは、メイド姿のイッキが男だということがコクエンにバレる前後のシーンのように思いました。
 メイド絡みのイベントであったことだけは覚えております。

コクエン「カリンちゃんはねぇ
 ここには いないんだぁ
 だ・け・ど
 あとで その分 アリカちゃんを
 かわいがって あげるからねぇ💛」
イッキ(ひ~~~~~~っ
 たすけて~~~~~~~っ!!)

出典:メダロット4 

 さらわれたカリンの行方を探るため、アリカによりメイド姿に扮装させられたイッキは、せめてもの仕返しにと自らをアリカと名乗っておりました。
 そして親友コウジのピンチに、イッキは我が身の危険もかえりみず飛び出していったのです。

コウジ「イッキ・・・だよな?
 お前?」
コクエン「たたかうすがたも りりしく
 うつくしい・・・
 ・・・じゃない!
 きさまっ 何者だ!?」

出典:メダロット4 

……ここで一枚絵が入ります。
 メイド姿から元の姿に戻ったイッキを中心に、コウジとコクエンが描かれています。
 この一枚絵、当時私はメイド姿のイッキにするかどうかで悩んだのですが、流石にやりすぎかな? と思ってメイド姿はやめておきました。どこかからストップがかかって、リテイクを出されることを恐れたのです。追加料金と納期の問題が私の脳裏をよぎったのです。
 ですがその後のコクエンの暴走に一切ストップがかからなかったあたり、無用の心配だったのかもしれません。
 私は一枚絵の発注は全てエクセル絵による絵コンテでしていたように思うのですが、データはあまり残っておりません。
 オープニングデモに続き、こちらも私のエクセル絵無しでご覧ください。

コクエン「なぬ! 男!?」
イッキ「ぼくは テンリョウ イッキ
 コウジを つれもどしに 来た! 」
コクエン「きさまが あの
 テンリョウ イッキか!
 くーーーーーーっ オレごのみの
 女の子に ばけて
 オレを だますとは ゆるせんっ!!
 見ていろっ!!」

出典:メダロット4 

 イッキが男だと分かってからコクエンは、私がイベントスクリプトを担当していたクリア直前の章までは正気を保っていました。
 ですがクリア後にバイト氏にコクエンのイベントをお任せしたところ、コクエンはイッキを男と知りながらファンクラブまで作って「メイド少女~」とイッキを追い回すようになってしまいました。
 種をまいたのは私ですが、バイト氏の手によりコクエンはまごうことなきヘンタイ四天王随一のヘンタイへと進化を遂げたのでした。
……ステージの大画面にメイドイッキとコクエンのイベントが映し出されたあたり、やはりコクエンは己のコンプレックスに苦悩したり、改心して自らを危険にさらしてでもイッキに協力した姿より、ヘンタイのイメージの方が強烈だったのだな、と私は改めて思いました。

 思わぬ映像にゲーム制作当時の様々な記憶が蘇ってきておりましたが、「M・R・4」のカッコよさは、しっかりと私の身と心に押し寄せ響いていました!
 ギターとベースの音から始まって、ドッドッドッドッという心音のような音に、ドラムとキーボードの音も合わさっていきました。
 ギターの金属的な音とベースの低音が互いを引き立てあい、キーボードの旋律が彩りを加え、ドラムが時に引き締め、盛り上げる……!
 これだけ様々な音があって少しもズレたりしないのが本当に凄いです!
 どの曲にも言えることでしたが、あまりのカッコよさに魂が震えるようでした。
 最後の余韻の後、スタートボタンを押したらイッキの「メダロット4!」というタイトルコールが聞こえてきそうでした。

21.愛しきロボロボ団 (inspired by “ロボロボだん”)

 そしてライブもいよいよ最後の一曲。萌花様の「愛しきロボロボ団」となりました。
 この「愛しきロボロボ団」というタイトルは、私が歌詞を書き終わった後につけていただいたものです。
 私はロボロボ団員のゲームでの所業を歌詞に詰め込んだのですが、その結果、ロボロボ団のテーマは愛おしさに溢れたものとなっておりました。

 以下、「イカ焼き 耳だけ食べて捨てる」のイベントです。

イッキ「ロボロボ団!」
ロボロボ団員「イカやきの 耳だけ 食べて
 のこりは すてるロボ!」
イッキ「なっ・・・何て
 もったいないことをっ!
 食べものを そまつに するヤツは
 ゆるさないぞ! ロボロボ団!」
ロボロボ団員「ゆるさなければ どうするロボか?」
イッキ「こうするに きまってるだろっ!」
(ロボロボ団員とロボトル)
ロボロボ団員「どうして いつも 勝てないロボかー」
ロボロボ団員「こうなったら さいごの
 しゅだんロボ!」
(ロボロボ団員逃亡)

出典:メダロット4 

……この後、ロボロボ団員は無事に退治されました。
 私は先生の漫画に出てきた、「イカ焼きを耳だけ食べて残りは捨てる」というロボロボ団員の所業にロボロボ団の「悪の美学」を感じ、それをゲーム内のイベントにも取り入れさせていただいたのです。

「自分で仕掛けた ワナにかかる」「メダロッチにも入れちゃう」は、ゲーム内の一つのイベントで起こった出来事でした。

コウジ「・・・何やってんだ? お前」
ロボロボ団員「自分で しかけたトラップに
 引っかかったロボ!
 たすけてロボ!」
イッキ困「しょうがないな・・・」
(イッキは、ロボロボ団に被さった籠をどけてやる)
ロボロボ団員「たすかったロボ
 ありがとうロボ」
イッキ「それは よかった
 ところでさ ピンクのオーバーオールの
 女の子 知らない?」
ロボロボ団員「その子なら われわれの
 アジトに いるロボよ」
イッキ「やっぱり・・・」
コウジ「さぁ~ あんないしてもらおうか?」
ロボロボ団員「ロ・・・ロボッ?」
イッキ「アリカに 何か あったら
 ゆるさないぞ!」
ロボロボ団員「そ その シンパイは む・・・」
コウジ「その シンパイは ムダだと!?
 いそぐぞ イッキ!!」
イッキ「うん アリカを たすけに行こう!」
ロボロボ団員「それじゃ おれは
 かえらせてもらうロボ」
コウジ「にがすかッ!!」
ロボロボ団員「ロボーーーー!?」
イッキ「あ ロボロボが メダロッチに!!」
イッキ「・・・・・・・・・・・・」
コウジ「・・・・・・・・・・・・」
イッキ「ま いっか ロボロボだし」
コウジ「そうだな ロボロボだし」

出典:メダロット4 

……ちなみにロボロボが仕掛けたワナには、セレクト隊もはまります。
 セレクト隊はロボロボ団を取り締まる立場の、正義の組織のようなものです。
 ですがやることなすことロボロボ団員と同レベル、時としてそれ以下のセレクト隊は、イッキたちを助ける回数より邪魔する回数の方が多かったかもしれません。
 セレクト隊が有能だと、ロボロボ団が駆逐されてしまいますしね。

「一匹いれば三十匹」は、ゲーム内で複数のキャラクターが事あるごとに言っておりました。
 中でも以下のイベントが夏に出る例のアレを彷彿とさせ、恐怖を誘うのではないでしょうか。

イッキ「なんで こんなに
 ロボロボが いるんだろ?」
アリカ「そりゃ ロボロボは 1ぴき見つけたら
 30ぴきは いるって 言うからねー」
イッキ「こわいこと 言わないでよ・・・」
アリカ「なによ あんた こわいの?」
イッキ「べつに こわくは ないよ」
アリカ「ロボロボの 1ぴきや2ひき・・・」
(イッキが見えない位置から、ロボロボ×2が出てきて走り去る)
アリカ「3びきや 4ひき・・・」
(ロボロボが複数出てきて走り去る)
アリカ「5ひきや 6ぴきや 7ひきや
 8ぴきや 9ひきや 10ぴき・・・」
(ロボロボが大量に出てきて走り去る)
イッキ「アリカ?」
アリカ「な なんでもない なんでもない!!」

出典:メダロット4 

「男の子から おかし奪う」は、言葉通りのイベントでした。

ロボロボ団員「そのおかしを よこすロボ!」
男の子「何するんだよ やめろよ!」

出典:メダロット4 

「女の子 さらってみたら返り討ち」のエピソードに関しましては、メダロックレポート(その3)の「心の在処」でご紹介いたしました。

「ロボロボに愛の手を」は、メダロットにも人間扱いしてもらえなかったロボロボ団員の叫びです。
 イッキは山に住んでいたメダロットたちに、焼き芋を焼こうとして山火事を起こしたロボロボ団を懲らしめるように言います。
 そして「メダロット三原則」により人間を攻撃できないはずのメダロットたちは、ためらいもなくロボロボ団員たちを吹っ飛ばしたのです。

イッキ「アオダイショウに アカダイショウ!
 思いっきり やっちゃっていいよ」
(メダロットたちにボコボコにされるロボロボ団員たち)
ロボロボ団員「われわれも 人間ロボーーーッ!!」
ロボロボ団員「ロボロボ団にも
 アイの手をーーーっ!!」
(遙か、空のかなたへと吹っ飛ばされていくロボロボたち)
イッキ「ホームランだな」
アリカ「しかも 場外ね」
コウジ「しっかしよー なんで
『メダロット3げんそく』は
 ロボロボ団には
 てきようされないんだ?」
イッキ「ゴキブリなみの
 せいめい力だからじゃない?」
アリカ「・・・って いうかさ
 メダロットたちには あれが
 人間だって 分からないんじゃ?
 あたしたちだって ちゃんと
 かくにんしたこと ないのよ?」
イッキ「そういえば・・・」

 メダロット2以降、ロボロボ団員たちの衣装は「黒タイツ+サングラス+一本角」というスタイルから「ヘルメット+全身スーツ」というものに変化しました。
 生身の部分が全く見えなくなったのです。
 私はそんなロボロボ団員たちを「ロボロボ」という種族として扱うようにしました。
 それ故にロボロボ団員たちは、メダロットたちやメダロッチにまで人間と認識されず、成敗されたり転送されたりしたのです。
 ロボロボ団幹部たちに関しましては、従来通りの「黒タイツ+サングラス+二本角」というスタイルだったので、顔の一部が見えておりました。
 ですので私は幹部たちのみ、ロボロボ団であっても人間という扱いにしていました。

「あんまりいじめないでロボよ」は、悪事を働いてもどこか憎めないロボロボ団員たちらしいセリフです。
「どうして いじめるロボー!?」「いっ いじめないでロボー!」など、ロボロボ団員たちはゲーム中、イッキたちにやられた時などに言っておりました。
 ロボロボ団員たちは、ロボロボ幹部らからもぞんざいな扱いを受けていましたしね。
 基本的にロボロボ団員たちの日頃の行いのせいとはいえ、あまりいじめすぎると今度は逆にかわいそうに思えてしまう……そんな愛しきロボロボ団員たちです。

「ごほうび 目指して」「なんで 最後は こうなるの」は、ごほうび目指して日々悪事に励んでいるロボロボ団員たちが最後はいつもイッキたちに負けて、「けっきょく こうなるロボね・・・」とぼやいていたところからです。

「不滅の ロボロボ団」「愛と 野望が詰まってる」という歌詞に関しましては、ロボロボ団員の台詞にこういうものがありました。

ロボロボ団員「ロボロボ団は ふめつロボ!
 われわれのバックでは いつも
 ソウダイな ヤボウが
 うずを まいてるロボよ!」

「バックでは」という台詞が、哀愁を誘います。
 ちなみに、「我らは 素敵な ロボロボ団」という歌詞の候補もありました。この歌詞はアニメのキャラクターソング、「素敵ロボロボ団」をイメージしていました。

……以上のように、「これでもか!」というほどに、「愛しきロボロボ団」にはゲームの要素をギュウギュウに詰め込んでおりました。
 また「これが悪というものだ」という歌詞もありますが、ロボロボ団員たちは度を過ぎた悪を目にすると、「それはひどすぎるロボ」「さすがにわれわれでも、そんなひどいことはできないロボ」といった反応を示すようにしておりました。
 ロボロボ団幹部があまりに行き過ぎたエグイ命令を出したりすると、ロボロボ団員は抵抗感を持つのです。
 ロボロボの悪の美学を貫こうとする限り、ロボロボ団の世界征服の道は遠そうです。ロボロボ団員には、「ロボロボ三原則」でもあるのかもしれません。

 そんな壮大な愛と野望が詰め込まれた「愛しきロボロボ団」は、かわいらしい萌花様の歌声とMEDAROCKSの皆様の演奏、そして会場のファンの皆様が一体となりロボロボを大合唱するという、最高の大団円を迎えました!
金魚鉢になってからかわいらしさを増したロボロボ団員でしたが、16歳の現役女子高生である萌花様が歌われることで、そのかわいらしさは最高レベルにまで達しました。
ロボロボ団員がここまでかわいらしくなってしまうと、心おきなくやっつけることはできません。悪事を働いても笑顔で許してしまいそうです。入団者も殺到することでしょう。……例え自給300円の超ブラック団体でも。
 萌花様の「なんで最後はこうなるの?」で、ライブ会場全体がロボロボ団のアジトになった気がしました。
 そしてうのへえ様渾身の、エコーが掛かった「ロボーーーッ!!」が何度も会場に響き渡りました。
 本当に渾身の「ロボーーーッ!!」だったので、この後二部が控えていることを思うと、うのへえ様のお喉が心配ではありましたが、素晴らしかったです!

……ライブで演奏された楽曲のレポートは以上となります。当時のゲームネタもふんだんに盛り込みましたのでかなり濃密になったと思いますが、いかがでしたでしょうか?
 メダロックライブレポートは今回で終わ……りません。まだ続きがあります。
 あと1回です。最後までお付き合いいただければ幸いです♪

4+

メダロックライブレポート(その4)

 前回、思い込みによる「人違い」ならぬ「悪ガキ違い」というもの凄い記憶違いをやらかした私ですが、スクリューズについてあまりにアツく語ってしまったため、「1行書き換えるだけ」などというレベルの修正では済まない濃度の内容となりました。ですので、そのまま残しております。
 私の盛大な記憶違いとは関係なく、「悪ガキのテーマ」は間違いなく悪ガキしていました。少なくとも、初代悪ガキのドット絵を描きシナリオでも深く関わってきた私は、そう思います。
 何はともあれ、私はメダロックアレンジが、メダロックライブが素晴らしかったということを、お伝えしていきたいです。
 そしていつかスクリューズのテーマ「CUNNING BOY」のメダロックアレンジも、お願いしたいところであります。

 ちなみにスクリューズのリーダー、キクヒメの「~よぉ」「~しぃ」といった語尾は、「悪ガキ三人組」の女リーダー、イセキの口調と区別化を図るために私が作った設定でした。
 ヤンマ→イワノイ、クボタ→カガミヤマも、女リーダーの子分というポジションは同じですが、それぞれ全く同じキャラにはせず、違う個性を持たせるようにしました。
 メダロット1はシナリオが短く、また私はメダロット1のシナリオに関しましては監修と、バラバラなシナリオをくっつけて不足を補い矛盾を無くすといったお仕事がメインだったので、彼ら三人を存分に活躍させることは叶いませんでした。
 そんな私の「悪ガキ三人組」への想いは、スクリューズへと引き継がれております。

 来る2020年1月23日に配信予定の、メダロットSでの悪ガキ三人組の活躍に期待が高まります!
 スクリューズは悪ガキ三人組にチーム名が欲しいと考え、私が付けた名前です。
 初代組にもチーム名を付けるとしたら、やっぱり「お米」縛りだと私は思うのですが、いかがでしょうか?

14.HALF SORROW

 激しいロックが続いた後に、静かで美しいピアノの旋律が流れてきました。「HALF SORROW」です。
 そしてステージの大画面には、思い出深いメダロット4の「海辺のシーン」が映し出されました。
 海辺のシーンは、イッキとパートナーのメダロットが夜の海を並んで見つめながら、語り合うシーンです。
 激化するデスマーチの中、私が魂を込めて作ったイベントです。

 イッキはメダロットたちとの数々の冒険を通じて、メダロットとメダロッターの関係について深く考えるようになりました。
 メダロットにはリミッターと「メダロット三原則」というものがあり、イッキはそれがメダロットたちを縛りつけて不幸にしているのではないかと、思い悩むようになったのです。

「メダロット三原則」は、メダロット4では以下のように表記していました。

「だい1じょう」
わざと 人間を
きずつけては ならない
「だい2じょう」
人間に きけんが ふりかかるのを
見すごしては ならない
「だい3じょう」
だい1じょうと だい2じょうを
やぶらない はんいで
ほかのメダロットに ちめいしょうを
あたえないこと

出典:メダロット4

 そして私の「ダメロット製作記」では、第三条が「上記二項に反しない限りで自分の身を守る」と書いておりました。
 それが今はメダロット社様の方で「メダロット三ヶ条」という名称になり、第三条が「第一条と第二条を破らない範囲で己を守り、他のメダロットに致命傷を与えてはならない」といい感じに統合されている模様です。

 メダロット4では夜の海辺で、イッキはパートナーであるメダロット自身に己の抱く悩みと疑問を直接ぶつけました。
 そんなイッキの問いかけに対して、メダロットは自身の想いを言葉にして返すのでした。
 メダルで動くメダロットの頭脳は、メダルです。メダルにメダロットの魂が宿っているのです。
「メタビー」「ロクショウ」「せっかち」「がんこ」「ひねくれ」「周到」「ぼんやり」「おせっかい」「いいかげん」とメダルの性格は9種類あったので、私は海辺で語り合うシーンを9パターン作りました。
 それはプレイヤーであるメダロッターの方々が、自らパートナーとして選んだメダロットと語り合っていただきたいという想いからでした。
 さらにメダロットの顔グラフィックは、数多のパーツからメダロッターの方々がパートナーメダロットのパーツとして選ばれた頭パーツが、表示されるようにしていました。
 そしてもちろん会話の中で表示されるパートナーの名前も、メダロッターの方々が付けられた名前になるようにしたのです。

 美しいピアノの旋律で始まった「HALF SORROW」は静かな盛り上がりを見せていき、やがて泣きのギターの音色で最高潮を迎えます。
 思い出深い海辺のシーンが……ゲームボーイのドット絵がライブで、二十年の時を経てメダロックアレンジで蘇った楽曲の生演奏と共に、大画面で映し出されていたのです。言葉では言い尽くせないほどに、感無量でした。
 あまりに現実離れした光景に、これは本当に今目の前で起こっていることなのかと、私は信じがたい思いでただ大画面を見つめていました。まるで夢でも見ているかのようでした。

HALF SORROW」の生演奏と共に大画面に映し出されていたのは、9種類の性格のうち、アニメでもお馴染みだったメタビーのメダルとの海辺のシーンでした。

イッキ「メダロット転送!」
イッキ「・・・・・・」
メタビー「・・・・・・」
イッキ「・・・・・・」
メタビー「・・・・・・」
メタビー「転送したんだったら 何か言えよなー」
イッキ「・・・うん」
メタビー「だーかーらーっ 何か言えっての!!」
イッキ「うん・・・あのさ、メタビー
お前って しあわせ?」
メタビー「はぁ?」
イッキ「だからさ・・・お前らって
『メダロット3げんそく』に
しばられてる・・・だろ?
だから お前ら 人間をわざと
きずつけられないように なってるけど
それって しあわせなのかなって」
メタビー「イッキ」
「・・・」
メタビー「あのさ 何で『メダロット
3げんそく』が あると思う?
それは オレたちが
メダロットだからさ」
イッキ「だけど そういうのって・・・!」
メタビー「まあ 聞けって」
メタビー「メダロットの オレたちは 人間の
お前らとは 力も
のうりょくも ちがう
オレたちは メダルさえ ぶじなら
パーツや ティンペットが いくら
こわれたって ふっきできる
だけど 人間の体は そういう風に
できていない
もし『メダロット3げんそく』が
オレたちの 力に ブレーキを
かけてくれなければ
オレたちは きっと・・・たとえ
オレたちに そういうつもりが
なくっても・・・人間を きずつけて
しまうだろう
・・・これは オレの 考えだけどさ
『メダロット3げんそく』は
オレたちを 作ったやつの
『やさしさ』なんだと 思う
おかげで オレは お前と なかよく
やってけてるんだと 思うし」
イッキ驚「でもさ そういうのって 勝手だと
思うんだけど
メダロットの いけんも 聞かずにさ
勝手に「3げんそく」なんていう
ブレーキを あたえちゃうなんて」
メタビー「それは そうかもしれない
けどよ 考えてみろよ
もしもだぜ? お前が お前の
すきな人を だきしめただけで
その人が こわれちまったら
どう思うよ?」
イッキ「そんなこと・・・!」
メタビー「おなじ人間なら そんなことは
ないだろうけどよ
人間と メダロットの場合 そういう
ことだって おこりえるんだ
オレ そんなこと たえられねーよ
だからさ・・・だから おれは
オレじしんは『メダロット
3げんそく』が あって
よかったって 思うんだ」
イッキ「メタビー」
「・・・」
イッキ「・・・・・・・・」
メタビー「・・・・・・・・」
イッキ「かえろうか・・・」
メタビー「ああ かえろうぜ」

出典:メダロット4

 素晴らしいアレンジと演奏と共に蘇った「HALF SORROW」ですが、ゲーム開発時、こちらからは「悲しい曲」という名前で発注しておりました。
 原曲を作成された方が、「HALF SORROW」というタイトルを付けてくださったのです。

HALF SORROW」……半分の悲しみ。
 悲しみも、心許せるかけがえのない存在と分かち合えたら、半分になる……そんな意味を込めて付けてくださったのかもしれません。
HALF SORROW」は私の心の一曲であり、メダロックライブでそれは、忘れ得ぬ体験と共に魂に刻み込まれたのです。

15.Until The End(inspired by “DO・OR・DIE”)

HALF SORROW」の演奏に続いて、千菅様がご登場されました。
「いつか 語り合った海」……まさにそのシーンの後で、この歌が流れたのです。
 千菅様の透き通った声がライブ会場に響きます。感極まって体が震えました。
HALF SORROW」から「Until The End」への流れは本当に感動的で、素晴らしかったです。
 メダロックCDでも流れは同じなのですが、ライブでのその自然な流れは、実にお見事でした。

 原曲の「DO・OR・DIE」もまた、イッキ編最後のラスボス戦BGMだったこともあって、私にとってはとても思い入れが強い曲でした。
 ですので、メダロット4のラスボス戦BGMだった原曲の「DO・OR・DIE」がバラードになったと知ったときは、正直なところ戸惑いはありました。
 信念を賭けた激しいバトル曲から、泣かせるバラードへの大転身です。
 戸惑いと驚きはありましたが、私は渾身の想いを込めて歌詞を作りました。
 とはいえ完全にゲーム寄りの「愛しきロボロボ団」とは違い、「Until The End」はメダロットを離れても独立した一つの曲として成り立つような歌詞にしなければなりませんでした。
 メダロットを知らない方々にも、広く長く愛し続けていただくために、それは必要なことだったのです。
Until The End」は、ラスボス戦闘曲からバラードへの大転身ということも相まって、最も難航した曲だったかもしれません。
 変更を余儀なくされた歌詞もありますし、私が自ら変更した歌詞もありました。
 私自身が変更した歌詞に、「メダルが輝き」→「瞳が輝き」というものがありました。
 メダロットが起動し、冷たい金属の体に魂と意志の光が宿る姿を表現した箇所です。
 結果的に「メダル」より「瞳」の方が、よりふさわしい表現のように思えましたので、良かったと思っています。
 また一方で、「Until The End」からメダロットらしさを全て無くしてしまっては、本末転倒でした。
 そこで「フォース」というフレーズは残していただくことになりました。

 私一人の力ではなく、糸賀様やうのへえ様と多くのやり取りを重ね、歌詞の文字数調整や使用するフレーズなどを洗練していったことで、「Until The End」は完成しました。
Until The End」がメダロットファンの皆様にも、歌い手の千菅様やMEDAROCKSの皆様のファンの方々にも広く受け入れられ、 愛され続けることを心より願っております。

 そして私が「Until The End」にどうしても入れたかったフレーズは、「いつか 語り合った海」でした。
 あの海辺のシーンがあったからこそ、イッキの意志は、信念は、揺るぎないものになったのです。海辺のシーンを経たからこその、「最後の戦い」でした。
 このフレーズは、「Until The End」がバラードになったからこそ生きた歌詞だったかもしれません。
 それでもまだ私の中に僅かばかり残っていたかもしれなかった、「DO・OR・DIE」がバラードに大転身したことへの戸惑いも、千菅様の歌声によって払拭されました。
 原曲にあった緩急はバラードになっても残されていて、海のような穏やかさと激しさを持つイッキの人柄と、揺るぎない想いが伝わってくるようでした。

 まだ私が「DO・OR・DIE」がバラードになるとは知らなかったとき、間奏部分にメダロット4でイッキとメタビーが喋っていたセリフを入れるという案を出したことがありました。
 そして私は、候補となるイッキとメタビーのセリフと共に、海辺のシーンを「思い入れのあるシーン」としてお伝えしていたのです。

 間奏部分にセリフを入れ込むこと自体は、「Until The End」がバラードになったこともあって採用されませんでした。
 ですが私の想いは、今回のライブで、

HALF SORROW」の生演奏と共に大画面で海辺のシーンが映し出され、「Until The End」の「いつか 語り合った海」に繋がる

……という私の想像の遥か上を行く、最高の形となって実現したのです。

 あまりの光景に、音に、歌声に、ただただ目を見開き、私はその空間と時間を全身で体感していました。
 目の前でたった今起こっていることが、己の目で見て聴いて感じていることが夢のようで、果たしてこんなことが現実に起こり得るのかと、信じがたい思いでした。

 ライブ会場は皆様のペンライトで海を思わせる青に染まり、ステージの大画面には熱唱される千菅様のお姿が映し出され、私の魂を込めた歌詞が美しい歌声と演奏と共に流れる……。
 それはCDだけでは決して味わうことのできない、ライブのあの時間、あの空間だけの特別な出来事だったのです。
 一生の、忘れ得ない記憶となりました。
 あの素晴らしい体験が、私と同じ時間と空間を生きて共に過ごされた方々の記憶にも、深く長く残り続けることを願っています。
 さらに多くのファンの方々と、繰り返し素晴らしい体験を共有するためにも、メダロックライブがこの先幾度となく開催されることを願うばかりです。

16.Shout!

Shout!」はメダロット3ラスボス、ブラックデビル戦での曲です。
 月面に現れた巨大なその姿は、まるで……。
「悪魔だ」
 月で出会ったマザーメダロット、巨大なブラックデビルの姿に、思わずイッキはそう呟いたのでした。
 曲の開始と共に、巨大なブラックデビルの絵がステージの大画面に映し出されました。


コウジ「目が ひらいた!」
アリカ「大きい・・・これも メダロット?」
イッキ「あくま・・・だ」

出典:メダロット3

……昔私がエクセルで描いた、ブラックデビルの「目が開いた!」的な絵コンテです。
 上記のセリフ、何と! アニメと同じ声優さんたちのボイス入りでした! これは当時のゲームボーイとしては結構画期的だったと思います。

 言うまでもありませんが、ライブの大画面に表示されていたのはこの絵コンテではなく、実際に使用された一枚絵のドット絵の方でした。
 この絵で伝わるのですから、グラフィッカーさんって凄いですよね!……一方の私は、一応グラフィッカーでもあったとは思えないレベルの絵コンテで、申し訳なかったです。
 とはいえこの絵コンテに関しましては、私も流石に「ブラックデビルに関してはデザイン画参照」という注意書きを書いてはおりました。

Shout!」はスローテンポかつ不気味で不穏な旋律で始まりました。
 巨大なマザーメダロットの姿が、古より人々に恐れられていた悪魔の姿を連想させ、恐怖を誘う……そんなただならぬ気配が漂っていました。
 それが一転。一瞬の静寂の後、一気にアップテンポとなります。ロボトルが激化した様子が伝わってくるようです。
 そして途中で入る美しいキーボードの旋律……かと思えばギターの激しい嘶き!
 ベースの低い唸り! クライマックスに従ってますます荒ぶるドラム!!
 勝負の行方はいかに……!

 イッキ編の中で最大のボリュームを誇るのはメダロット4ですが、最も過酷なデスマーチだったメダロット3は、地底都市、海底都市、天空都市、宇宙と舞台は広がり、スケールの大きさでは最大でした。
 宇宙人により月と地球に逆に配置されてしまったマザーメダロットのスバルとブラックデビル。そのために人類の科学文明の発展が偏った方向に向かおうとしていた……という壮大なスケールの間違いを、宇宙人は犯していたのでした。
 ですがそれすらも、うっかりミスとして「スミマセンネェ」の一言で済ましてしまう宇宙人に、メダロットらしさを感じていただけていればと思っています。

 巨大な悪魔の姿をし、人類に科学という英知を授け、レアメダルを作り地球のフォースを操る力を持ちながらも、ただ寂しくて、故郷に帰りたくて、それが叶わぬまま独りぼっちで月にいたマザーメダロット、ブラックデビル。
 本編のラストでイッキは、そんなブラックデビルと「Shout!」をBGMに二連戦を強いられるのでした。
 ロックなアレンジの「Shout!」で戦い抜いてみたいものです。

17.Beat The Diamonds

Beat The Diamonds」は、メダロット5のラスボス曲でした。
 ロックなスローテンポからの 、ちょっとミステリアスな雰囲気漂うメロディラインと、ラスボスらしく重低音の増した湧き上がる感じ、好きです。
 やはり8ビットでは出すことのできなかった低音が入ると、本当にカッコよくてシビレます!
「ビーーーン」と低く響く音とか、音の高低差とか、文字や文章でどのように表現したらいいのでしょうか!? どうしてもカッコいい! という言葉になってしまいます。

 私はメダロット5はプレイできていないので、ラスボス戦は体験していないにも関わらず、ラスボスとのアツいバトルの光景が思い浮かぶようでした。
 カッコいいメダロックアレンジをライブで聴いて、一度はゲームをプレイされた方も、またプレイしてみたくなったのではないでしょうか!

……今回はここまでとなります。
 深い思い入れのある分、今回もアツく語らせていただきました。
 次回もお付き合いいただければ、嬉しいです♪

5+

メダロックライブレポート(その3)

 メダロックライブレポートは、まだまだ終わりません!
 前回に引き続き、語っていきます。

08.M・R・5

M・R・5」と「Beat The Diamonds」はメダロット5の曲なので、私が関わった作品ではありませんが、どちらの曲もすごくメダロットでした。
 私はメダロットの開発チームから抜けたものの、メダロット5はそれまでメダロットの制作に関わっていたスタッフの方々が引き続き作っておられましたし、原曲の制作も同じ方でしたしね。
 メダロット5は、主人公のコイシマルくんがゲーム開始早々肥溜めに落とされるという衝撃の展開が印象的でした。
 そして「M・R・5」がオープニングかつロボトル曲、というのはメダロット1~4にはなかったパターンだったので驚きでした。
 カッコいいオープニング曲でロボトルができるって、いいですよね!
 メダロックになった「M・R・5」でも、ロボトルしてみたいものです。

 メダロット5もシナリオを担当された方は女性だったのですが、マップの至るところで見られた細やかなこだわりは、やはり女性ならではだったからかもしれません。
 私も女性ではあるのですが、私はおおよそ女性らしからぬ大雑把な性格で、残念ながら細やかな気配りといったものからはかけ離れております。

 メダロックにアレンジされた「M・R・5」は金属的な重い音から始まって、それが軽快なメロディーとテンポに変わり、再び重低音に変わる感じでした。
 軽快な感じと、重低音の緩急は、本当にクールですね!
 途中ビートを刻み続ける感じの部分もカッコよかったです。
 皆様の「ヴォイ! ヴォイ!」がこの曲でも生きていました。 ステージと会場が一体になって一つの音楽を作るというのは、ライブならではの素晴らしいものですね!

09.魔の十日間

魔の十日間」はメダロット1の曲です。
 原曲は敵の本拠地に乗り込む時などに流れていたと思いますが、スローテンポで不気味かつ不穏な空気が漂う曲調でした。
 アレンジされた「魔の十日間」は、アップテンポで激しくなっております。
 本拠地潜入、というよりはラスボス戦の戦闘曲のようです。それでいて心をざわつかせるような、原曲にあった不安げな要素も残されておりました。
 メダロット1にはラスボス戦の曲が無いのですが、ラスボスのビーストマスターとはぜひこの曲で戦ってみたい!……そんな風に思える一曲でした。

魔の十日間」は、「セレクト隊の本社ビルのようなところから怪電波が発信されて、セレクトメダルを装着していたメダロットたちが暴走する」という事件を指す言葉でした。
 ですが「魔の十日間」 という言葉は、ゲームには出していなかったんですよね。ゲームでは昼夜の区別もなかったので日にちの感覚が無く、「十日」というのがピンとこなかったかったからかもしれません。
 メダロックの「魔の十日間」を聴きながら、「魔の十日間」という言葉の響き、カッコよかったのでゲームでも使いたいなぁ、と思いつつその余裕がないまま終わってしまったことなども思い出しておりました。

……ハッ。「魔の十日間」の曲の時、大画面には何が表示されていたのでしょうか。
 耳から入り全身で感じる津波のような音と、ライブの空間の視覚情報、脳裏に呼び起こされていた当時の記憶や感情……入り混じって、私の脳の処理が追い付いていませんでした。
 これが、「魔の十日間」……!

10.心の在処

心の在処」で千菅 春香様が登場です。
 ベースの「信ちゃん」様とドラムの「のんたん」様が、「心の在処」がとても好きで寝る前に必ず聴いてらっしゃるというお話しをしてくださいました。
 千菅様が歌われる「心の在処」はアリカの可愛い部分を抽出して凝縮したようで、世の男性の多くがときめいてしまう、そんな魅力を放っておりました。
 歌声、歌い方、すべてが夢のような、現実離れしたレベルでかわいらしかったのです。
 こんなかわいらしいヒロインならば、心奪われて当然です。私もときめきました。

 ところでゲームのアリカはと言えば、歌のイメージとは打って変わりかなりの傍若無人っぷりを発揮しております。
 元々アリカはシリーズを通じてジャイアントスイングの勢いでイッキを振り回し続け、イッキの練習相手という設定ながらロボトルの腕は最強クラスを誇り、敵のアジトを単身で殲滅するという、かよわさの対極にいるような女の子でした。

ロボロボ団員「まさか われわれの アジトが
 たった1人の小学生
 しかも 女の子に 攻めおとされるとは
 ユメにも 思わなかったロボ・・・」
ロボロボ団員「ギンジョウ小の 女の子は
 バケモノか!? ロボ」
イッキ「いや たぶん アリカにしか
 できないんじゃ ないかなぁ?」
コウジ「そういや・・・
 おれが 聞いたのは さけび声で
 ヒメイじゃ なかったな」
ロボロボ団員「おうえんを よぼうと
 なんとか にげだしたところを
 おれは お前たちに
 つかまったロボよ」
イッキ「そうだったのか・・・」
アリカ「なによ~ みんなして
 人を オニか アクマみたいに」
ロボロボ団員「オニ ロボか?」
ロボロボ団員「アクマ ロボか?」
ロボロボ団員「むしろ だいまおうロボ~!!」
(アリカに往復ビンタされるロボロボ団員たち)
アリカ「かよわい おとめ つかまえて
 何 言ってんのよ!」
イッキ「かよわい?」
コウジ「おとめ?」
ロボロボ団員「どこに いるロボか?」
(全員往復ビンタ)

出典:メダロット4

……イッキとイッキの仲間でありライバルでもあるコウジ、そして敵であるはずのロボロボ団員たちの見解が一致し、敵味方の区別なくその場にいた全員がヒロイン、アリカに成敗されたシーンです。

 そんなアリカがかわいらしい態度をイッキに見せるようになったのは、メダロット4でイベントを担当したバイト氏の功績でした(つまり私ではありません)。
 そして原曲も、原曲に付け加えられてアレンジされたメロディーもとてもかわいらしいものでしたので、私は極力アリカのかわいらしくも女の子らしい部分を歌詞に込めたのです(「気まぐれで荒れ模様」、という部分に傍若無人なゲームのアリカの片鱗を詰めておきました)。
 さらに千菅様がキュートなお声で歌い上げてくださったことにより、「心の在処」は私の予想を遥かに超えてかわいらしく、世の男性のハートを掴むステキな歌になりました。
 あまりのかわいらしさに、元のアリカの所業をよく知る……と申しますか、そのアリカの所業を生み出した私自身が受けた衝撃が凄かったです。
 これもギャップ萌え……ということで……?(混乱)

……MEDAROCKSの皆様は(年代的にも)ゲームボーイ版のメダロットを未プレイとのことでしたので、ゲームのアリカを知ったらどう思われるのだろう、などと思いました。
心の在処」でかわいいヒロインだと思っていたら、ゲーム序盤から練習相手のハズが最強クラスの実力を持つアリカから容赦なく叩きのめされ、ゲーム内のイベントでも散々な目に遭わされる悲喜劇……。
 せめて歌の中だけでも、かわいらしいアリカを堪能したい……「心の在処」は、メダロッターの皆様にそんな思いを抱かせる歌になったのかもしれません。

11.悪ガキのテーマ

悪ガキのテーマ」は、キクヒメ、イワノイ、カガミヤマの悪ガキ三人組、スクリューズのテーマ曲です。

 スクリューズは、ゲーム開始早々に卑怯な手で小学校のロボトル大会の優勝をかっさらった上に、まだ1体しかメダロットのいなかったイッキに3対1で問答無用のロボトルを仕掛けてきたり、公園を占拠して「公園を使いたければ1時間1パーツ」を請求したりと 、存分に悪ガキっぷりを発揮していました。

キクヒメ「 勝てるしょうぶを するのが  あたしの モットーよぉ」

出典:メダロット4

 メダロット2~4のシリーズ通じて、毎度序盤から彼らは悪ガキらしく悪さをしでかしていた彼らはまさに、「BAD GUY」だったのです。

 ですがイッキはイッキで、スクリューズにやられっぱなしではありません。
 スクリューズの悪事はイッキ(たち)によっていつも阻止されました。悪事を働いてもうまくいかない辺りは、ロボロボ団に通じるものがあります。
 カッコよさの中にも、軽快でコミカルな要素が含まれている「悪ガキのテーマ」は、とてもスクリューズ「らしさ」を感じさせる一曲と言えました。

 メダロット4で私は、楽しく海で泳いでいたスクリューズたちが、特訓のため泳ぐことが許されなかったイッキたちをあざ笑う、というイベントを作りました。

キクヒメ「あたしたちはねぇ あんたたちと
 ちがって 今日は 1日中
 思いっっっきり あそべたんだからぁ」
イワノイ「お前らは 毎日
 スパルタきょうしの シゴキだー!」
カガミヤマ「水の中は つめたくて 気持ちいー!」
アリカ「何よーっ! すき勝手 言ってるんじゃ
 ないわよーっ!
 こっちは すきで やってんじゃ
 ないのよっ!」
イワノイ「やーい くやしかったら
 ここまで 来てみろー!」
キクヒメ「これで あんたたちの 夏も
 おわりねぇ」

出典:メダロット4

 その後色々あってイッキがホテルにいたところに、日焼けの痛みに苦しみながらスクリューズがやってきます。
 スクリューズは三人とも、少し触れられただけで激痛が走る状態です。

イワノイ「あねごー 体がー
体が・・・ ヒリヒリ・・・」
キクヒメ「ち・・・近よるんじゃ ないよっ!」
カガミヤマ「いたいー いたいー」
イッキ(なーるほど あいつら
ひやけしすぎて はだが
ヒリヒリしてんだな)
イッキ「やー お前ら ひるまは ずいぶん
楽しそうだったけど
どーかしたかー?」
キクヒメ「!!!!!!!・・・ぎゃあああっ!!」
イワノイ「ああ あねご!」
カガミヤマ「しっかり!」
キクヒメ「何 しやがんだよっ!」
イッキ「何って あいさつだよ」
キクヒメ「あああたしに さわんじゃないわよぉ!」
イッキ「さわるなといわれると さわりたくなる」
キクヒメ「ヘ ヘンタイ!!」
イッキ「ふっふっふ・・・
 えいっ!」
キクヒメ「ぎゃああああっ!!!」
イワノイ「あねごに 何をする!」
イッキ「じゃ お前に」
イワノイ「ぐぎゃああっ!!!!」
イッキ「えいっ!」
イワノイ「うぎゃあああっ!!!!」
カガミヤマ「こ・・・来ないでっ!!」
イッキ「さっきの おかえしだーっ!」

出典:メダロット4

 悲鳴を上げて逃げ惑うスクリューズを、普段は大人しいイッキが笑顔で追いかけまわすのです。
「覚えてなさいよぉ!」と捨て台詞を吐いて去っていくキクヒメたちに、「あー面白かった」と笑顔を浮かべるイッキの姿に、溜飲も下がるというものでした。
 そしてスクリューズのイベントの間は、ずっと「悪ガキのテーマ」が流れていました。
 上記のイベントを、メダロックアレンジされた「悪ガキのテーマ」を聴きながらプレイしてみたいものです。きっとイメージピッタリだと思います!

 普段は卑怯な手を平気で使いロクなことをせず、立派な「BAD GUY」っぷりを発揮しているスクリューズでしたが、憎めないところもあり完全な悪ではありません。
 私はシリーズ通じて必ずゲームの中盤~終盤で、問題解決のため、または共通の敵を倒すため、スクリューズがイッキたちに協力するイベントを用意し、彼ら三人の見せ場を作っておりました。

 そんな愛すべき悪ガキたちのテーマが、ロックにカッコよく、そして原曲にもあったコミカルな要素もちゃんと含めてアレンジされていたのです!
 ライブでの「悪ガキのテーマ」は、糸賀様のスキャット成分濃い目で痺れました。声でありながら楽器の一つであるかのように、MEDAROCKSの皆様の演奏と見事に共鳴されておりました。
 糸賀様の生「バッガイ!」も、クールでした!
 今回のライブは歌い手の方が全て女性でしたので、糸賀様のスキャットが際立ちました。
 会場の皆様も男性がほとんどでしたので、「ヴォイ! ヴォイ!」の合唱は低いトーンでほぼ統一されていて、それもまたロックでした。

12.Judgment of God

Judgment of Got」はメダロット2のラスボス曲です。
 戦闘曲にはアップテンポで激しいものが多かったですが、こちらは不気味なスローテンポのラスボス曲です。

 無機質な外骨格。話の通じる相手ではありません。圧倒的な強さです。
 強い! 強すぎる! この敵には、勝てない……!
……そんな絶望感が、メダロックアレンジによってより引き立てられていました。
 声のようなエフェクトも相まって荘厳さが増し、邪教の神殿にでもいるかのようでした。
 絶望の神……そんな表現が似合う空気感でした。

 メダロット2のラスボスと言えば、シャコをモチーフにしたゴッドエンペラーです。
 シャコで思い浮かべるのはシャコパンチですが、ゴッドエンペラーは射撃タイプでした。

頭部:デスブレイク
右腕:デスミサイル
左腕:デスレーザー
脚部:デスクローラー


 各パーツの名前からして、完全に息の根を止めにきています。
 そして装着されているメダルは、悪の科学者ヘベレケ博士によりリミッターを外され最初からメダフォースがマックス状態で、さらにメダフォース「いっせいしゃげき」を習得済みのカブトメダルでした。
 つまりバトル開始早々、いきなり三つのデスがつく凶悪パーツで一斉射撃されるんですよ! しかもそれが3体がかりで襲い掛かってくるのです!

……ちなみにヘベレケ博士は、「ギャルにモテモテになりたい」という己の欲望を叶えるために、世界征服を企んでいました。
 世界征服の動機はなんでもよかったのですが、とにかく理由を作ることで「私欲のために世界征服」という悪の博士の特徴を際立たせたいと、私は考えました。
「ギャルにモテモテになりたい」という理由づけは、当時ドラゴンボールを視聴していた私が、亀仙人を思い浮かべてなんとなく決めたのでした。

 ヘベレケ博士は、私利私欲に駆られずメダロットと共により良き世界を作ろうと日々頑張っているメダロット博士とは、対極の人です。
 思考が悪よりな私は、ヘベレケ博士も好きだったりします。
 幼い頃戦隊ヒーローものを見て私が憧れたのは、ヒーローよりも「悪の科学者」でした。
 自らの欲望を叶えることが人をも喜ばせることであれば、結果的に大きな社会貢献も成し遂げられるように思います。
 ヘベレケ博士の場合は己の欲望が人の望みと合致しなかったので、はた迷惑なおじいちゃんになってしまった、というお話しでした。
 ですが私はヘベレケ博士の、「目的を貫くために力を尽くす」というその姿勢は好きなのです。

 そんなヘベレケ博士が繰り出したゴッドエンペラーですが、メダロットは元となっていたシステムがマジック・ザ・ギャザリングというカードゲームだったので、実は対策さえ知っていれば割と簡単に勝てる相手なのです。
 ですが対策を知らずにゴリ押しで戦おうとすると、反撃の余地すらなく消し炭にされてしまうのです。
……これが、ゴッドエンペラーが皆様のトラウマになった由縁でしょうか。

ドッゴオオオオオオォォォォン!!
グルゥアアアウゥゥゥゥッ!!

出典:メダロット2

……ライブで大画面に映し出されていた、ゴッドエンペラーが壁を突き破って登場するシーンです。
Judgment of Got」の演奏中、ゴッドエンペラーの登場シーンが映し出される度に、メダロッターの皆様から「おおー」「うおっ」「はぁあ~」といった歓声のような、悲鳴のような、ため息交じりの悲痛な声が上がっていました。

 大画面を背にして演奏しておられたMEDAROCKSの皆様は、なぜ会場から声が上がっていたのか不思議に思われたようでした。
 何が映し出されていたのか? というご質問に対し、会場からは「トラウマ」という言葉が返ってきました。
「もう一度映してみて」のお言葉でゴッドエンペラー登場シーンが大画面に映し出される度、皆様の口から声が漏れるのがMEDAROCKSの皆様は面白かったみたいで、何度もそのシーンが大画面に映し出されていました。

 ゴッドエンペラーをラスボス戦のイベントで登場させた私ですが、私自身はゴッドエンペラー戦を体験しておりません。シナリオを作り、「戦闘」「ヘベレケ」「ラスボス」といったコマンドを一行入れただけでした。
 私はゴッドエンペラーが当時のメダロッターの皆様のトラウマになっていたことを、メダロックライブでリアルに知り、体験することができたのです!

 メダロックで二十年前のゴッドエンペラー戦のトラウマを脳裏に蘇らせた皆様のお姿を見て、私はメダロックで当時の記憶が蘇ったのは制作者側の私だけではないのだと実感しました。
 私は大写しにされるゴッドエンペラーの姿を見た皆様の口から漏れた悲鳴が、そのご反応が、心の底から嬉しかったのです。
 大画面の映像もさることながら、今でも私たちが生み出したメダロットのゲームを愛してくださっているファンの方々がいらっしゃって、そしてメダロックのアレンジとMEDAROCKSの皆様の演奏が本当に素晴らしかったからこそ、体験できたことだったのです。

13.DARK NIGHT

DARK NIGHT」は、メダロット4の中ボス曲です。
 織田 かおり様の生の歌声はすごい迫力でした!
 ラスボス曲の風格です。初出がロボロボ団戦とは思えない迫力です。
 その迫力に捻り潰されました。CDでお聴きするのとは段違いの迫力です。
 元々カッコよかった原曲が、ロックなアレンジと、MEDAROCKSの皆様の演奏と、織田様という歌い手を得て、何ということでしょう!……まさに絶望を与える恐怖の神の姿を纏って降臨したのです。
 私は己の無力さと身の程を思い知らされ、消し飛びました。

 初出こそロボロボ団員戦の「DARK NIGHT」ではありましたが、主に四天王とのロボトルで流れていました。
 四天王とは、ビーストキング、オロチが各地から集めた子どもたちで、イッキたちと同じく全員小学生でした。
 それぞれのキャラの簡単なご説明と、ロボトルに至るまでのやり取りを載せます。

●玄武のコクエン
 コクエンは、「花嫁候補」と称して各地の小学校からかわいい女の子を攫ってハーレムを作ろうとしていました。

 そんな彼は、コンプレックスの塊ゆえに弱い自分を隠そうと、強い力を追い求めていたのでした。

コクエン「ハンッ! だれが てめぇらの
 めいれいなんざ 聞いてやるかよ!
 オレに めいれい したけりゃ
 勝ってみせろ! じつりょくでな!!」
イッキ「コクエン・・・どうして そこまで」
コクエン「うるせぇ!
 よわいヤツはな 何されたって
 もんくは 言えねぇんだよッ!!」
りんたろう「なんか かなしいヤツだぜ・・・」
コクエン「てめぇ! そんな目で おれを
 見るんじゃねぇッ!!」
たまを「・・・・・・・・・」
コクエン「チクショウ・・・
 てめぇらも そうやって
 オレを 見下すのかあぁッ!!」

出典:メダロット4

●白虎のハクマ
 自らの感情や望みを封じて人々の幸せを願っていたという、四天王中最もいい子でした。
 カリスマ性を持つ彼は、シンラ村で住人たちの信望を集めていました。
 そしてハクマの願いを叶えようとした忠臣ビャクヤの暴走により、一つの村が狂信者の教団のようになってしまったのです。

 そんな彼でしたが、本当は対等な立場で共に笑いあえる友だちが欲しいだけの、孤独な少年だったのです。

ハクマ「ぼくが 正しいのか それとも
 きみたちが 正しいのか・・・
 しんじつは ひとつだけ
 けっちゃくを つけよう」
イッキ「ぼくたちは まけない!
 しょうぶだ ハクマ!」

出典:メダロット4

●朱雀のシュリ
 美しいものこそが正義という、歪んだ観念を持っていたシュリは、花園学園一の美少女で、ヒロインの一人でもあるカリンに強い執着を見せます。

 そんな彼女が本当に望んでいたものは「美しいもの」ではなく、父の愛でした。

シュリ「だって そうじゃない?
 ここにたどりついたのは
 あなた1人だけ
 ・・・と いうことは あなたは
 ほかの人たちを おきざりにした」
イッキ「・・・・・・!」
シュリ「あら くやしいの?
 言いかえせないから?
 ふふふ うふふふふ
 あーはっはっはっは!」
イッキ「わらうなっ!!
 みんな みんな ひっしの 思いで
 ぼくを 先に 行かせてくれたんだ!
 シュリっ しょうぶだっ!!」
シュリ「カリンは わたさないわ!
 わたしの じゃまをする者は・・・
 お前は ゆるさない!」

出典:メダロット4

●青龍のミズチ
 メダロットに感情や三原則はいらないと主張し、メダロットたちを支配下に置く世界を理想として、その世界にイッキを取り込もうとしていました。

 そんな彼は、かつて事故でパートナーのメダロットを失い、心に深い傷を負ったが故に、歪んだ理想郷を追い求めるようになったのでした。

ミズチ「『レゾナンスシステム』てきおうしゃ
 こそが せかいの
 トップに 立つ者なのだ
 大人より 子どもの方が より
 てきおうりょくが ある
 イッキ
 ・・・お前が
 おれと いっしょに 来ていれば
 このシステムの すばらしさを
 あじわうことが できたのに」
イッキ「こんなのが・・・こんなのが
 メダロットの しあわせだなんて
 うそだっ!
 ミズチ きみが めざしているのは
 りそうきょうなんかじゃない
 そんな せかい あくむだ!
 目を さましてよ ミズチっ!!」
ミズチ「メダロッチなどに たよっている
 かぎり じんるいに
 しんぽは ありえない」
イッキ「ミズチ? どこへ・・・」
ミズチ「・・・・・・・・」

出典:メダロット4

 四天王たちは、それぞれ戦う理由と苦悩を抱えていました。
 四天王とのバトルに至る対決シーンは「DARK NIGHT」の曲にふさわしく、アツい展開にしたつもりです。
 そしてイッキとの対決に敗れた後、四天王たちはイッキの信念に心打たれて力を貸すようになるのでした。
……そんな四天王たちでしたが、ホ●、教祖、レ●、ストーカーというヘンタイ四天王という顔の方が目立っていたかもしれない、という部分も含めて、「カッコいい」だけでは終わらない「メダロットらしさ」だと思っています。

 織田様の歌とMEDAROCKSの皆様の演奏による「DARK NIGHT」には、四天王たちとメダロットの「カッコよさ」成分が濃縮されていました。

 かなり濃い目のお話しが続くのでなかなか終わりませんが、今回はここまでです。
 懲りずに続きもお読みいただければ嬉しいです。
……それではまた次回、お楽しみに♪

― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ―
補足:
「悪ガキのテーマ」はスクリューズの3人組ではなく、初代の悪ガキのテーマでした。
20年の時を経て、私の中ですごい勘違いと思い込みが発生していたようです。
「悪ガキ」違いでしたが、私の思い描く「悪ガキ3人組」のカッコよくてコミカルなイメージが伝わればと思います。

4+

メダロックライブレポート(その2)

 改めまして、メダロットとは「メダルで動くロボット=メダロット」です。
 そして「メダロット+ロック=メダロック」です。
 メダロックは昔懐かしいゲームボーイのメダロット1~5の8ビットのゲーム音楽を、ロックにアレンジしたものです。
 それでは、メダロックのアーティストのご紹介です。

<MEDAROCKS>
ギター:長澤 トモヒロ(トモくん)様
ベース:岩切 信一郎(信ちゃん)様
キーボード・マニピュレーター:大場 映岳-hana-(hanaちゃん)様
ドラム:北村 望(のんたん)様
アレンジャー:鎌田 瑞輝様

<Singer>
織田 かおり(かおちゃん)様
千菅 春香(ちっすー)様
萌花(もえか)様

<Guest singer >
EXiNA様

……錚々たるメンバーです。
 メダロックライブには、歌い手の方が4名も!
 ゲストのEXINA様は、メダロットSのイメージソング「OVERTHiNKiNG BOY」を歌われました。

 歌い手の方々は皆様女性です。
 原曲を作られた方も女性ですし、メダロット5のシナリオを担当された方も女性です。
 そしてメダロット1~4のシナリオ他開発に携わり、今回作詞を担当させていただいた私もまた、同じくです。
 男性ファンの多いメダロットですが、メダロットもメダロックも、女性の成分は結構濃いと思うのです。

……ところで、私は音楽に関してはド素人もいいところです。
 音楽用語などの知識はほぼ全くありません。
 ですので、音楽的な表現や感想が非常に稚拙になってしまうと思います。
 また衝撃の連続で頭が真っ白になっていたので、記憶が曖昧なところが多々あります。
 しっかりと記憶と魂に刻み込むためにも、何十回でも何百回でも体験したいライブでしたが、現時点でメダロックライブに参加できたのは、この一度きりです。
 誠に申し訳ないのですが、「どの曲でどの映像が表示されたか」の間違い等々があるかもしれません。
 あまりの衝撃で、記憶が捏造されている可能性もございます。己の脳の記憶力と処理能力の限界が悲しいです。
 兎にも角にも、メダロットというゲームに当初から関わってきて、メダロットに我が子のような思い入れを持つ私自身の感想や想いが伝わればという一心で書いております。
 稚拙でも、間違いがあっても構わないと思ってくださるお方は、最後までお付き合いいただければ幸いです。

01.M・R・2

 うのへえ様と糸賀様が舞台に立たれ、軽妙な掛け合いトークで注意事項などを交えながら場を盛り上げられた後、ライブは「M・R・2」……メダロット2のオープニング曲から始まりました。
 ゲームボーイ時代の8ビットな音から始まって、やがてそれにエフェクトが掛かり音に深みが増していきました。
 この曲に限らず、メダロックの全曲通じて実に様々な音……時に不思議で時にクール、時に繊細で美しい音が入っていましたが、これがマニピュレーターと呼ばれる楽器が奏でる音の効果なのでしょうか。
 私には分かりません。分かりませんが、とにかく凄いです。カッコいいです! ステキです!

 さらにドドッドンというドラムの力強いリズム、ギター、ベース、キーボードの音色が合わさっていき、一気に大きな音の波が押し寄せてきました。
 私は、圧倒的な音の洪水に全身が呑み込まれました。
 音が振動としてダイレクトに伝わってくるのです。この感覚は久々でした。
 やはり生は全然違います! 全然ですよ、全然! 音が振動として感じられるので、全身が耳になったみたいでした。

 そしてステージの大画面には、懐かしのメダロット2のドット絵が次々と映し出されました。
 この時点でブワッと感情が溢れ出しそうになりましたが、ここで自我を失うわけにはいきません。
 私は平静を保ちました。それはそれはもう、必死に。

02.Strike Enemy

Strike Enemy」 は、メダロット2ロボロボ幹部戦のBGMです。
 大画面には、歴代ラスボスのシルエットが、次々と映し出されていきました!
 不気味な効果音にテクノな音が混じり、一気に激しさが増しました。
 テクノな高音とベースの重低音の共演、そして激しさから一転、しばし不安を覚えるような静けさが訪れ、再び激しい音の洪水が押し寄せる――この緩急が、曲に緊迫感を作り出していました。
 最後の余韻も良かったです。

 原曲からすでにロボロボ幹部戦とは思えないカッコよさだったのですが、それがロックアレンジでさらに洗練されたカッコよさを纏っていました。
 原曲がゲーム内で実際に流れたのは、ロボロボの時給では贅沢ができないロボロボ女幹部スルメがメダロット社でウェイトレスのバイトをしていたという暴露話から始まるロボトルの時とか、カリンのメダルを奪って嫌がらせに炭酸の池に落とそうとしているロボロボ団ボスのサケカースとロボトルの時とかでした。
Strike Enemy」のカッコいいBGMとは裏腹に、ロボロボ団幹部たちはこれといって深い理由のない戦いを繰り広げておりました。

 メダロット1では世界征服を企むロボロボ団のボスがラスボスでしたが、2以降のロボロボ団はラスボスに利用される立場となってしまったため、より道化な姿が際立っておりました。
 ロボロボ団幹部戦は、カッコいいBGMとのギャップが凄いのです。
Strike Enemy」がライブで演奏されている間、歴代ボスの映像ではなくメダロット2のロボロボ幹部戦の前後のやり取り映像が流れていたら、そのギャップは凄まじいレベルにまで達していたかもしれません。
 MEDAROCKSの皆様は、メダロットをご存じないという事でしたので、カッコいいバトルをイメージして演奏されていたのではないかと思います。
 ですがかつて、かなりおマヌケなロボロボ幹部戦を演出していた私は、「Strike Enemy」がカッコよすぎて衝撃を受けたのでした。
 そんなロボロボ幹部たちですが、ロボロボの悪の美学に従って、シリーズを通して卑怯な手段で勝ちに行こうというスタイルは貫いていました。
 悪の道は厳しいのです。ロボロボ団は、時給も低いですしね。

03.Burning Force(inspired by “I”)

Burning Force」はメダロット2~4の主人公、イッキのテーマ曲です。
 ゲーム版のイッキは熱血タイプではなく、どちらかと言えば個性的な周囲のキャラクターたちに振り回され続ける大人しい性格でした。
 そんなイッキが、ここぞというシーンで敵に立ち向かおうとする時に流れるのが、この曲だったのです。
 とても仲間思いで心優しいイッキは、大事な仲間が傷つけられた時や、かけがえのない友でありパートナーであるメダロットたちを、身勝手な欲望の道具にしようとする者たちに対しては、アツくなりました。

 現役の女子高生、萌花様がご登場されました。とてもかわいらしいです。何と申しますか、とにかく実物はさらにかわいらしいのです。
 娘とほとんど歳が変わらないのもあって、応援したいと思う私の気持ちも高まります。
 萌花様は、緊張してる? という質問にも「あんまり緊張はしてません!」と、元気よく即答されていました。
  流石です。私ならステージに立った瞬間真っ白になり、生まれたての小鹿のごとく足は震え、その場にとどまることすら覚束なくなりそうです。
 16歳にして、すでに大物の貫禄です。
 若々しい声の伸び、フレッシュな歌声、聴き取りやすい素直な歌い方は、イッキのイメージにピッタリで、まるでイッキが歌っているかのようでした。

オロチ「ふん! いいだろう!
こうなってしまえば もう
わたしの メダルと お前の メダル
・・・より すぐれた ものが
勝ーつっ!
お前の ひんじゃくな
メダロッチの でんぱなどで
地上の パーティクルに めいれいが
とどくかな?」
イッキ「今の ぼくに メダロッチは
ひつようない
ぼくの 心と ぼくの パートナーの
心は 1つに つながっている」
オロチ「では お前の『しんらい 』とやらと
わたしの プライドを かけて
しょうぶだっ!!」
イッキ「おおっ!!」

出典:メダロット4

 メダロット4ではラスボス、 オロチとイッキのこのやり取りの間、「Burning Force」の原曲、「I」が流れていました。
 この後オロチとイッキの、メダロットも一対一という文字通りの一騎打ちが始まります。
 そしてイッキの「信念」と、オロチの「プライド」を賭けたラストバトルで流れるのが、「DO・OR・DIE」……「Until The End」の元となった曲なのです。
 普段は大人しいイッキが、大切なものたちのために「強く熱く」「命燃やして」、時に迷いながらも「迷い捨てて」、「仲間 勇気 絆」というゆずれないもののために、敵に立ち向かうのです。

 イッキのアツい思いが、萌花様の歌声で鮮やかに蘇りました。
 激しいラストバトルの後、さわやかなエンディングを迎えます。
 雲が晴れて、青い空が広がっていく感じです。メダロット4の先生のパッケージのイメージですね。その光景もまた、萌花様がさわやかに歌い上げてくださいました。

04.M・R・3

M・R・3」は、メダロット3のオープニング曲です。
 様々なゲームの効果音もいい感じで入っていて、ロボトルの光景が目に浮かぶようでした。
 ソード・ハンマー・ライフル・ガトリング・レーザー・ビーム・ミサイル・ナパーム・ブレイク・プレス・デストロイ・サクリファイス・バグ・ウィルス・ウェーブ・ホールド・ファイヤー・メルト・サンダー・フリーズetc……当時のメダロットには、他にもまだまだ戦闘で使用されていた効果音がありました。
 私はどの音がどんな順番で入っているのかまで把握できてはいませんが、全てお分かりになられた方もいらっしゃるのではないでしょうか。
 8ビットの音と、それぞれの楽器の音の共演がカッコいいんです!
 ドラムが速いです。すごいスピードです。 その速さに、メダロット3で私が体験した最も過酷で凄まじいデスマーチの記憶も、まざまざと蘇ってまいりました。
 いい感じです。当時の苦しみまでも思い出すということはつまり、メダロックはしっかりとメダロットしていたということなのです。
M・R・3」では、メダロット3のデモ絵が映し出されていました。蘇った記憶と共に、元となったエクセルで描いた私の絵コンテを載せておきます。

メダロット3絵コンテうるち「全国の ロボトルファンのみなさん
おまたせ いたしました!
わたくし ロボトルきょうかい
こうにん レフェリー
ミスター・うるちです!
スカイTV ていきょう
メダロット えいせい
『テラカドくん』から
おおくり している
『週刊メダロット』の お時間です!
本日 ゲストを おむかえしています
ニモウサク ユウキさん どうぞ!」
メダロット3絵コンテユウキ「やあ よい子の メダロッターたち
元気かい?」

出典:メダロット3

……当時このレベルの絵コンテを元に、あの素晴らしいドット絵を描き上げられたグラフィッカーさんには脱帽です。
 プロの方のこういった絵コンテは、絵コンテとは思えないレベルのハイクオリティーなものが多いですが、私の絵コンテからは「分かればいい・伝わればいい」という私の大雑把な性格が伝わってきますね。

05.ロボトルファイト!

ロボトルファイト!」では懐かしいうるちさんのお声と共にロボトルの映像が映し出され、ロボトル中メダロットたちが一生懸命走る、懐かしい記憶も呼び起こされました。
 ロックにアレンジされて、ロボトルが激しさを増した感じです。ソロの部分もカッコいいです!
 途中で「はー」という声のようなエフェクトが入り、はっとする感じもいいです。

 原曲の軽快さを残しつつ重厚感が加わり、ロックとなって、ロボトルもテンションもさらに盛り上がること間違いなしです!
 いつの日か現実世界で、メダロックの生演奏と共に本物のメダロット同士でのロボトルファイトが実現したら……そんな夢が広がりました。


背景には母の絵(陶器)を置いてみました

06.Let’s dance!(inspired by “レッツ ロボトルダンス”)

Let’s dance!」は、原曲名「レッツ ロボトルダンス」で、2曲目の通常戦闘用BGMでした。
 原曲発注時にこちらが付けていた仮の名前はそのまま「戦闘2」で、「パラパラのような、楽しげなイメージ」でお願いしていました。
 実際、原曲はとても楽しい雰囲気の戦闘曲となりました。

 それがメダロックではクールでロックに蘇り、私も当初考えていた楽しげな歌詞ではなく、メダロットたちが激しい死闘を繰り広げる様を歌詞にしたのでした。
 そして「Let’s dance!」は織田 かおり様という歌い手を得ることで、さらにパワーアップしました。
 ライブでは、織田様の生の声量と歌唱力に圧倒されました。
 織田様の力強い歌声で、「傷つきながらも戦場を駆け抜け、全力で戦い続けるその姿はまるで激しく踊り続けているかのよう」……そんなメダロットたちの姿が目に浮かぶようでした。
Let’s dance!」では「悪に立ち向かう正義」を、ライブ後半で歌われた「DARK NIGHT」では「正義を捻り潰す悪」を……一人二役で善と悪という対極の立場を歌いこなす織田様の圧倒的な歌唱力は、見事なものでした。

 織田様の歌で激しさを増したロボトルは、途中で挿入された囁くような絞り出すような「たすけて」の一言で、さらに激戦っぷりが際立った感じです。
「たすけて」の一言は私ではなく糸賀様の案で入ったものですが、死闘を繰り広げるメダロットたちの心境を表しているようで、面白かったです。
 パーツを壊されて奪われて、それでもパートナーのメダロッターには「踊れ! 走れ! 戦え! まだまだぁ!」と言われるのですから、思わず「たすけて」の本音が漏れだすのは、当然と言えば当然でしょうか。

07.Evil spirit

Evil spirit」では、メダロット3でのスピリットたちとの熱きバトルが蘇りました。
 スピリットたちといえば、エレクトラ、ビリジアナ、セルリアーノ、トパージアの4人(体)です。当時、ゲームボーイがカラー専用になったので、スピリットたちは色をイメージしたキャラクターにしました。
 スピリットたちは、月のマザー、ブラックデビルによって生み出された地球のフォースの化身たちです。
 悠久の時を月で独りぼっちで過ごし、孤独に苛まれつづけていたブラックデビルは、配下のスピリットたちに人間を連れてくるよう命じます。
 ですが、スピリットたちは身勝手な人間たちを敵視していました。そしてイッキたちの前に敵として立ちはだかったのです。

 軽快なリズムで始まった「Evil spirit」に、重低音が響きます。それが緊迫感を醸し出し、スピリット戦との激しい攻防を思い起こさせました。
 会場にメダロッターの皆様の「ヴォイ! ヴォイ!」の大合唱が響きました。
 せっかくですので、ここでも私の絵コンテを載せておきます。

イッキ
「何だっ!?」
エレクトラ
「データはいただいた
ザンネンだったな ニンゲンども!」

イッキ
「なっ・・・だれだ!?」

エレクトラ
「わが名は エレクトラ!
お前たち ニンゲン テキ!」

イッキ
「何だって!?」
イッキ
「・・・あ! まてっ!」

出典:メダロット3

……ライブで大画面に映し出されていた、懐かしのドット絵映像の記憶が、私の絵で上書きされてしまったら申し訳ありません。ですがこれが元の絵です。
 真ん中の人型のようなものがスピリットの一人、エレクトラです。エクセルでのお絵描きには、中毒性がありました。

 私は関係者スペースだったのもあって声を出す勇気がありませんでしたが、一生懸命ペンライトを振っていました。
 関係者スペースの方々は静かだった気がします。観察者としての使命を帯びておられたのかもしれません。
 私は関係者や観客の枠も飛び越えて、当事者といった感覚でした。
 ライブ中私は様々な記憶や感情が一度に湧き上がり、魂を鷲掴みにされ、揺さぶり続けられていました。

……私の思い出深いエクセル絵もお見せできましたし、今回はこの辺りで。
 もうヤメテ! と言われそうですが、私の絵はまだ残っていますよ!
 次回も懲りずに見ていただければ、幸いです!
(続く)

8+

メダロックライブレポート(その1)

 うのへえ様より「ご家族もご一緒に」とおっしゃっていただいたので、 メダロックライブには娘と二人でメダロックTシャツを着て参加いたしました。
 東京に行くのは十年以上ぶりでした。
 大阪から東京まで新幹線で約三時間。
 複雑な路線図に戸惑いつつも、なんとか東京駅から渋谷駅へ行き、会場へとたどり着きました。

 うのへえ様より事前にメダロックライブのチケットを送っていただいていたのですが、メダロックライブの注意書きに「チケットを忘れた方は入れません」とあったので、うっかり忘れないよう緊張しておりました。
 ですが当日は関係者ということで、うのへえ様より「名乗ればチケットは無くても並ばず入れる」旨のメールをいただき、うっかり者の私はホッとしました(念のためチケットは持っていきました)。
 会場の受付でドキドキしながらスタッフの方に名を名乗りましたところ確認が取れ、無事に会場入りができました。
 その際、関係者シールを見えるところに貼るように言われました。
 私の腕の関係者シールにお気づきの方も、もしかしたらいらっしゃったかもしれません。

 会場に入ってすぐ娘と二人、スタッフの方に7階の特別室のような場所に案内されました(ちなみにリハーサル中でした)。
 着席してガラス越しに頭上からライブ会場を見学する、といったお部屋です。
 うのへい様からは、「制作陣の中では平野さんが唯一観客としてライブに参加できるので、ぜひ肌で感じて感想をいただけると嬉しいです!」というメールをいただいていたので、「えっ!? ここなんですか!?」という言葉が思わず口をついて出ました。
 オールスタンディングでファンの皆様と同じ空間で……と思っていた私は、驚き戸惑いました。
「はい。お名前をお伝えしたところ、ここに通すよう言われました」
「そ、そうなんですか……」
 呆然としつつも、その時は一部開演までまだ時間があったので、とりあえず下の階に降りることにしました。

 展示コーナー、物販コーナーでお見掛けしたのはほとんどが成人男性でしたが、女性もいらっしゃいました。
 MEDAROCKSの皆様と歌い手の方々のファンの皆様がいらっしゃるのはもちろんのこと、ここにいらっしゃる多くの方々がメダロットファンなのだと思うと、感慨深いものがありました。

 しばらくは娘とARや交換ノート、お絵描きパネルを見たりして過ごしました。
 カウンターの向こうには、ロボロボ団員さんのお姿が!
 ロボロボ団員さんからはクロスメサイアカードをいただき、右手の甲に小さく優しく「s」の文字を書いていただきました。
 ロボロボ団員さんからは優しさのオーラが溢れていました。セレクト隊がいなくても安心です。

メダロックライブ会場
カレーくじで並んでいた時に撮りました。

 続いて快盗レトルトカレーくじのコーナーに並びました。 そこには、快盗レトルトのお姿をした快盗レトルトレディ(?)が!
 そして私もファンの皆様と同じように並び、同じようにくじを引けるのが、嬉しかったです。
 ですが、私には一抹の不安がありました。
 それは、私がメダロッターの方々と同じようにくじを引くことにより、私に豪華景品が当たってしまうことです。
 私の目的はあくまでカレー&スプーンです。
 豪華景品は、ぜひともメダロッターの皆様に当てていただきたい。その一心で、二回だけくじを引かせていただきました。
 その時はカレー&スプーンが当たり、ホッとしたと同時にとても喜びました。
 快盗レトルトカレーは、 無事に快盗レトルトスプーンで食することができそうです。

 その日はうのへえ様に、糸賀様を紹介していただけるとのことでした。
 メダロック作詞をお引き受けしたときから、 糸賀様とはメールやツイッターではたくさんやり取りをさせていただいておりました。
 またYouTubeのメダロットチャンネルでは糸賀様のお姿やお声を、私が一方的に拝見&拝聴していましたが、糸賀様はまだ私の姿形をご存じありませんでした。
 ですが当然ながら、ライブ当日はうのへえ様も糸賀様も大忙しです。
 もちろん、ご挨拶よりライブが優先です。
 しかも私は未成年の娘連れということもあって一部しか参加できなかったので、タイミングによってはお目通りがかなわないかもしれませんでした。次回の機会となると、大阪在住の私はいつになるか分かりません。
 気ばかりが焦っておりましたが、そんな時うのへえ様が目の前を通りがかってくださったので、お声をかけさせていただきました。

 お忙しい中、うのへえ様は快く応じてくださり、「糸賀さんにご紹介します!」と私たちを控室の方に案内してくださいました。
 エレベーターの中でうのへえ様は「いやー、もうバタバタですよー」と笑顔でおっしゃっていました。
 私見ですがその時のうのへえ様の表情からは、「無事晴れの日を迎えられて、そのために忙しいのが嬉しい」……といった空気が伝わってきました。

 控室前に着くなりうのへえ様は、「糸賀さーん! 糸賀さーーん!」と大きな声で糸賀様のお名前を呼ばれました(この時、うのへえ様の呼びかけに反応したのか、一瞬だけお隣の控室から顔を出されたベースご担当の「信ちゃん」様をお見掛けしましたが、ご挨拶はかないませんでした)。

 ライブまで時間が無いので、大急ぎです。うのへえ様は大急ぎで呼ばれていましたが、うのへえ様が控室のドアを開けたら、糸賀様は控室にいらっしゃいました。
「糸賀さん! 平野さんです!」
 糸賀様は私の姿を見かけるなり、席を立ち歩み寄ってきてくださいました。
「初めまして、平野で……」
「おーっ、平野さんっ! どうもご迷惑をお掛けしました!」
 私がご挨拶の言葉を言い切るかどうかのタイミングで糸賀様は両手で私の右手を握り、アツい握手をしてくださいました。
「あ、いえ、そんな、とんでもないです」
 糸賀様の握手が両手でしたので、私は糸賀様の手に左手をそっと、添えさせていただきました。
糸賀様は、
「娘も握手していただきたいと言っているのですが、よろしいですか?」
……というこちらの要望にも快く応じてくださり、娘とも握手してくださいました。
「俺の握手はそんなに価値ないよ?」
 糸賀様は娘と握手してくださった際、そんなことをおっしゃっていましたが、糸賀様との握手に価値がないはずがありません。糸賀様は、メダロックライブの立役者のお一人なのです。
 娘はその後うのへえ様とも握手していただき、とても喜んでいました。

 私は今年の4月にあったメダロット部@難波のイベントにも行かせていただいたのですが、その時も娘と二人で行きました。
 メダロット部@難波のイベントの存在を知り、「行きたい!」と言って私を連れ出してくれたのは、他でもない娘だったのです。
「お母さんの仕事が知りたい!」という娘のたっての希望でした。
 娘に連れて行ってもらった難波のイベントで私はうのへえ様と出会い、そのご縁でメダロックの作詞のお仕事をいただけたのです。
 そういった意味で、娘もメダロックに一役買ったと言えるのではないでしょうか。
 娘がいなければ、私は一人で難波のイベントに行くことはなかったと思います。結果、今回の素晴らしいイベントにご招待いただくこともなかったことでしょう。
 難波の時の「うのへえさんに握手してもらえばよかった!」という娘の想いは、今回のライブイベントで無事果たされました。

「平野さんは今日、上で見られるんですかね?」
「いえっ! 観客席で!」
 小さな握手会の後、糸賀様のご質問にうのへえ様は力強く即答されました。
「上」とは、最初に通された特別室のことでしょう。
 私はうのへえ様が即答してくださったことが、嬉しかったです。
 やはりガラス越しではなく、生で皆様と同じ空間でメダロックライブに参加させていただきたかったですから!
 その後、
「じゃ、関係者スペースですね?」
「女性専用スペースがいいんじゃないですかね?」
「おお! 女性専用スペース! いいですね!」
……というやり取りを、お二人でされていました。
 うのへえ様と糸賀様のお気遣いにも、心が温まりました。

 そして私と娘は、急ぎ控室を後にして下に降りました。
 メダロックライブ第一部の開始時間は、すぐそこまで迫っていました。
 私と娘は慌てて物販コーナーに並び、滑り込みで他のメダロックグッズと共にペンライトを二本購入しました。
 ペンライトはぜひともゲットしてライブで振りたかったので、間に合って良かったです。

メダロックグッズ
メダロックライブ(+グラフアートショップ)で購入したグッズです。

 そしていよいよ、ライブ会場入りです。ここでも関係者とお伝えしたら、入れていただけました。
 関係者シールを見える場所に貼っていましたし、堂々としていればいいと思うのですが、「関係者」とお伝えするのが毎度緊張して噛み噛みで、挙動も不審になっていました。私は全く「関係者」慣れしておりません。
 中に入ると、ファンシーエールカードと抽選券を娘の分と2枚ずついただきました。グッズ購入の分も合わせて、ファンシーエールカードは4枚となりました。
 何の段取りもお聞きしていなかった私は、何の抽選券だろう? と首を傾げながら受け取りました(この抽選権が後に私の運命を変えたのですが、この時の私にはまだそんな予感すらありませんでした)。
 うのへえ様は、あえて私に何もお伝えにならなかったのだと思います。
 極力観客目線でライブを楽しむ、というのが制作陣の中で私だけに許された特権でした。
 私自身、皆様と同じようにできるだけ純粋に楽しみたかったので、何も知らされていないことがありがたかったです。

 スタッフの方に会場に通されたのですが、「関係者」としかお伝えしていなかったので、女性スペースではなく関係者スペースに案内していただきました。
 私としましてはどちらでも問題なかったので、そのまま娘と関係者スペースに入りました。
 私たちは最後の方で会場入りしたので、関係者スペースの中でも一番後ろになりました。
 オールスタンディングなので、ステージは隠れて見えない部分もありましたが、私の右斜め前にはステージ画面を映すモニターが見えました。
 モニターのスペースには撮影の方と、うのへえ様、糸賀様が待機しておられました。
 そして私の左斜め前(娘の隣)には先生がいらっしゃったような気がするのですが、後ろ姿でマスクをされていたので確信はありません。
 関係者スペースも満員でしたが、皆様後ろ姿でお顔が見えず、またそもそもお会いしたことのない方がほとんどでしたので、どなたがどこにいらっしゃったのかは分かりませんでした。
(続く)

6+

追加料金のプレッシャーによる先読みマップレイアウト

 メダロット1~4までに出てくるマップ(全体マップも含む)レイアウトは全て私が作成していました。
 メダロット1の時は自分でレイアウトしたものを自分で描く、という手順でしたので、シナリオ→レイアウト→イベント配置→修正という手順が非常にスムーズで、修正はいくらでもやりたい放題でした。
 シナリオやイベントに合わせて、マップレイアウトやドット絵を私の一存で自在に変えられたのです。
 何より、修正を人に依頼する必要がないので気が楽でした。
 これはメダロット1が少人数の小規模プロジェクトだったからこそ、できたと言えます。

 メダロット2になると、プロジェクトの拡大と共に開発に関わるスタッフの人数が増えました。
 メダロット2以降、私はグラフィックではなくなりましたが、マップレイアウトは変わらずシナリオを担当する私が全て作成することとなりました。
 ですがメダロット1の頃とは違い、グラフィックは他のグラフィッカーさんにお願いしている状態です。ですので、マップレイアウトを提出後に修正がしたくなった場合、再提出してドット絵を描き直していただかねばならなくなったのです。
 さらにオフィス移転で階が分かれ、かつてはチームメンバーだったグラフィッカーさんたちが別会社の方になりました。
 グラフィックは基本的に、全て外注になったのです。

 会社が分かれる前と違って、 メールでのやり取りの他、 絵を依頼するのにお互い2Fと3Fを何度も往復する必要がありました。
 また、別料金発生ということでチームメンバーの人月計算とは別にメダロット数、マップ数、システム画面、マップ上を歩くコマキャラ数×パターン数等々、 依頼するグラフィックを全てリスト作成し、料金を計算するという仕事も発生しました。

 それまでグラフィッカーさんは私と同じ給料制だったのが、グラフィックは「一枚(個)いくら」になったのです。
 当然ながらグラフィッカーさんに非が無い、こちらの都合による修正に関しては、全て追加料金が発生します。
 これはグラフィッカーさんがチームメンバーだった時は、なかったことです。
 こうしてメダロット2以降、他のグラフィッカーさんに修正依頼がし辛い理由が「申し訳ない」というものから「追加料金発生」という理由に変わり、ますます気軽に修正依頼ができなくなったのです。

……余談ですが、メダロット1の後に開発された野球ゲームで、メダロット1のプログラマー、北玉さんが別会社のグラフィッカーさんたちではなく私にドット絵をお願いしてきたのは、 開発費削減のためと思われます。
 超小規模プロジェクトだったため、少しでも開発費を節約しなければいけなかったのでしょう。
 私が仕事を山ほど抱えていることは北玉さんもご存じでしたので、もの凄く申し訳なさそうにお願いされました。
 私としましては北玉さんにはメダロット1で大いにお世話になりましたし、北玉さんのお人柄もとても良かったので、快くお引き受けしたのでした。

 更に別件で、白玉くんからゲーム企画書の挿絵を描いてほしいと頼まれたこともありました。
 それは別料金発生防止策だったのは明らかでした。その時白玉くんも北玉さん同様、非常に申し訳なさそうにお願いしてきましたが、私は結構ごねました。
 超小規模プロジェクトとはいえ、北玉さんのご依頼は一つのゲーム丸ごとのドット絵です。お引き受けしたとして、給料制の私には基本的に金銭的なメリットはありません。
 それに比べて、白玉くんが頼んできたのは一企画書の挿絵です。北玉さんの方が遥かに大変なお仕事です。
 それなのに北玉さんの時と白玉くんの時で私の態度がこれほどまでに違ったのは、ご両者の日頃の行いによるものです。
 白玉くんの日頃の行い……具体的には、敵メダロット構成悲喜交々に書いたようなことです。それに加えて、私に頼んだ理由があからさま過ぎたあたりです。
 ですが懸命に頼み込む白玉くんの姿に、最終的には引き受けることにしました。
……結局白玉くんの企画はボツになっていましたが、私の絵のせいではないと信じたいです。引き受けたからには、私も力を尽くしました。

 話を戻しますが、私が作成したマップレイアウトが無ければグラフィッカーさんたちが絵を描くことができないので、当然ながら提出をせかされます。
 ゲーム開発が中盤~後半になってくると、まだ構築しきれていないシナリオ部分のレイアウトも先に作成し、提出しなければならなくなりました。
 ですので私は、シナリオの大枠ができた段階で「きっとこんな展開になるだろうから、こんな形のこんなマップが必要になるだろう」と予想し、「アタリ判定」「イベント発生位置」「コマキャラの動き」まで想定してマップレイアウトを作成していきました。
 そして修正がいらないよう、予想で作成したマップレイアウトに合わせて、シナリオとイベントを作成・配置していったのです(バイトの方々にも、イベント配置をマップに合わせていただきました)。
……メダロット2以降、ゲーム開発の中盤~後半はシナリオ・イベント作成とマップレイアウト作成の順番が、逆転してしまうことになったのでした。
 これは、マップレイアウトもマップ絵も自分で描いていたメダロット1の時にはなかったことです。
 メダロット1の時は、私が自分で描いたマップレイアウトを何度自分で修正しても、心苦しくもなく料金も発生しなかったのです。
 これがかなり厳しかったです。

 この方式で私は、2~4までほぼほぼマップレイアウトの修正なしで終わらせました。
 私の脳裏には常に、「追加料金発生」という言葉が深く刻み込まれておりました。
 普段はぼーっとしていることの多い私ですが、 この時ばかりは脳をフル稼働させ 、未来のシナリオの予想を元にしたマップレイアウトの作成をやり遂げたのです。
 それほどまでに、追加料金が発生する修正依頼をすることは、私の中で強いプレッシャーとなっておりました。
 締め切りがオーバーし、開発費がうなぎ上りとなっていく中、「追加料金発生」は全力で避けたかったのです。

 とは言えそれでも、自分で絵を描かなくてよくなったことは、本当にありがたかったです。
 様々なスキルを持つ方々のお力があってこその、メダロットでしたから。

5+

ゲーム業界に至るまでとメダロットシナリオのベース

 私が昔から一番好きだったことはシナリオを書くことだったのですが、シナリオ系学校は見つかりませんでした。
 なので次に好きだった絵を描く道を選び、美大進学に必要なデッサンを学ぶことにしました。
 絵を描くことは好きだった私ですが、デッサンは苦痛で仕方がありませんでした。
 デッサンを学び始める前の私は「好きな絵を描いて美大合格♪」などと軽く考えていましたが、やはりデッサンは勉強でした……。
 デッサン教室では数時間かけて、ひたすら与えられたモチーフを描いて描いて描き続けるのです。
 楽しんで描く方もいらっしゃるでしょうけども、私にはデッサンはただひたすらに苦行でした。
 それでもやらないことには、目指す美大には入れません。
 私は腰を据えて、高校の間みっちりデッサンを学び美術系短大に入りました。

 ですが美大入学はゴールではありません。問題はその先でした。
 ビジュアルデザイン科だったので当時は広告系がメジャーな就職先だったのですが、美大で私は自分のデザインセンスの無さを痛感していました。
 二年なんて、あっという間です。私は焦りました。
 そんな時、美大の求人掲示板にゲーム会社を見つけたのです。
 昔からずっとゲームが大好きだった私は、即座に「これだ!」と思いました。
 ゲーム会社の募集要項にシナリオライターの正社員募集はなかったので、グラフィッカーで応募しました。
 入社試験は一般試験とデッサン、カラーイラストの提出、そして面接でした。
 元々ゲーム業界を目指していたわけではありませんが(思いつかなかったので)、高校時代にしっかりデッサンを学んでいたことが役立ちました。
 面接の際、「あのデッサンはどこで学びましたか?」と質問されたので、やはりデッサンが大きなポイントになったのだろうと思っています。

 ところが入社後、私がメダロットのシナリオを担当したころに、先輩の事務のお姉様に「(入社試験に合格したのは)シナリオが書けるからだよ」と言われたのです。
 確かに私は履歴書に、「小説を雑誌に応募して二次選考までいった」ということを書いてはいました(お恥ずかしいのでソースはご容赦を。内容はともかく、ペンネームが完全に中二病でした)。
 ジャンルは人が乗り込むタイプの巨大ロボット物のSFでした。
 当時の私はサイバーパンク、ホラー、ファンタジー系が主食で、ロボットは畑違いだったはずなのですが、なぜかある時急にロボット物が書きたくなり、一気に書き上げて応募したのです。
 しかも応募したのは少女小説雑誌でした。それで二次選考までいったのは、なかなかのファンタジーだったかもしれません。
 少女小説雑誌だったことを考慮して、主人公は女の子にしていました。ロボットとかわいい女の子の組み合わせは昔から好きだったので、書いていて楽しかったです。

 そんな私は当時、ロボットアニメの中では「トップをねらえ!」が好きでした。 私は元々「トップをねらえ!」 の原点となったテニスアニメ「エースをねらえ!」が好きで、その影響もあって中学ではテニス部に所属していました。
 ですので、「エースをねらえ!」→「トップをねらえ!」→「ロボット物小説投稿」という流れは、自然な流れだったのかもしれません……?
 ちなみに 「エースをねらえ!」 の原作漫画は、入社後男性の先輩社員さんから愛蔵版をお借りして、読破しました。
 アニメはスポコン色が強かったですが、漫画は先輩が「人生のバイブル」とおっしゃっていただけのことはあって、涙なくしては読めないような深い人間ドラマが描かれておりました。不朽の名作だと思います。
 さらにそのロボット物の投稿小説は、当時読んだSF界の巨匠アーサー・C・クラーク著「銀河帝国の崩壊」という作品にも影響を受けていました。
 こちらはロボット物ではありませんでしたが、世界観に影響を受けております。「自分が知っていたのはごく狭い箱庭の世界で、外には驚くべき広い世界が広がっていた」といったストーリーです。
 他にも当時は、やはりSF界の巨匠アイザック・アシモフ著のロボット工学三原則を軸に描かれた「われはロボット」「ロボットの時代」。
 そして人間の刑事と相棒のロボットが活躍する「鋼鉄都市」シリーズ。
 さらに銀河帝国の興亡を描いた長編シリーズ「ファウンデーション」シリーズ等々を読んでおりました。
 今思えば私は入社前にして、すでにロボット物のメダロットのシナリオのベースはできていたのかもしれません。

 ロボット工学三原則を元にした、メダロット三原則は言わずもがなです。これはシンプルに、ロボット工学三原則の「ロボット」の部分を「メダロット」に変えたものです。
 そして私がアシモフ先生から影響を受けたのは、 ロボット工学三原則だけではありませんでした。
「鋼鉄都市」シリーズで、ロボットを嫌っていた人間の刑事と、まやかしの感情しかないはずのロボットの相棒との心の交流や信頼関係を結んでいく姿。
 それは私が描いたメダロットのシナリオの中で、メダロットとメダロッターの関係にも生かされました。
 ロボット物の投稿小説は短大時代に書いたのですが、当時はロボット物は私からすれば畑違いで、「どうして自分が急にロボット物の小説を書きたくなったのだろう?」と首を傾げていましたが、あながち畑違いではなかったように思えます。

 とはいえ入社試験に当たって提出した履歴書には、 投稿小説二次選考通過のことを自己申告で一文で書いていただけでした。どんな雑誌にどんな小説という詳細は、書いておりませんでした。
 ですので仮にそれが多少加点されていたとしても、入社試験合格の決め手にまではなっていなかったのではないかと思います。今となっては確かめる術もありませんが。

 そして一般試験には国英数があったのですが、数学に父親と三人の息子の年齢を計算で出す問題がありました。
 数字に弱すぎる私が特異な計算式で導き出した答えは、息子が父親の歳を越えてしまうというものだったので、少なくとも数学で入社できたのではないことだけは確かです。

……こうして私は、二十歳からゲーム業界に飛び込んだのです。

5+

とあるゲーム会社の女性社員事情

 ゲーム会社の入社試験の面接に臨んだ時、私はハッとしました。
(ひょっとして、女性社員がいないんじゃ……?)
 実際には入社当時、私以外の二名の先輩女性社員がいらっしゃったので、ホッとしたことを覚えています。
 それでも当初は、女性社員率が圧倒的に少ない男性の職場でどうなることかと思いました。
 ですが実際のところ、人間関係はとても楽でした。
 周囲が男性だと、人間関係のアレコレに気を煩わされることがほとんどなかったのです!
 お陰様で、仕事に集中することができました。

 思えば学生時代の私は、女子グループの独特な空気に馴染めず、孤立気味でした。
 高一にもなってグループ全員でトイレに行くとか、一人の秘密をグループ全員で共有しなければならないといったことが、私はどうにも受け入れ難かったのです。
 また私は高校時代美術部と漫研に掛け持ちで入っていたのですが、高二になって所属していない女子グループから、漫研というだけで「オタクきもい」など後ろ指をさされて嫌な思いをしたものです。
 ちなみに彼女たちは、私がどのような漫画が好きで、どのような漫画を描いていたのかなどは一切知りません。
 どうせ後ろ指をさすなら、せめてそういったことを知った上でさしていただきたいものです。

 ですがゲーム会社でアニメ・漫画・ゲームが好きだったからといって、後ろ指をさされるというのはまず考えられません。
 そして先輩の女性社員のお二人は優しくていい方たちで、とても良くしていただきました。
 学生時代と違い人間関係では悩まずに済み、チームメンバーに恵まれたことが、私が数々のデスマーチを乗り切れた一つの大きな理由であったことは間違いありません。
 いくつか会社を渡り歩いてきていた方によりますと、女性だけのチームは人間関係がドロドロだったそうです。

 もちろん一概に全てそうだとは言い切れないでしょうけれども、私の経験から鑑みても、女性のみで構成されたグループというのは、得てしてそういったトラブルが多く見受けられるように思えます。
 いわゆる「女性らしさ」は良い方向に向けば気配りや気遣いという形で現れ、悪い方向に向けばグループ意識が強くなりすぎたり陰湿さが表面化するのかもしれません。
 良くも悪くも私は、男性ばかりの職場に飛び込む辺りからしても、女性らしさの要素がだいぶ薄めなのではないかと思います。
 私の友人は女性ばかりなのですが、昔からの友人には「あんたは気が利かない」などと、よく言われていました。

 そういうわけで幸いにして女性社員にも恵まれた職場環境でしたが、しばらくすると女性社員がお二人とも退社してしまい、それから数年間、女性社員は私一人となりました。
 それでも変わらず人間関係に煩わされることなく、男性社員以上にハードに働く日々を送っておりましたが、やはり女性一人というのは流石に寂しいものがありました。

 そんなある日、会社の飲み会の時に他社の華やかでお洒落な女性の方たちが数名、参加されたときがありました。
 その方たちは、私たちのようなゲーム会社ではなく広報系の方たちだったと思います。ほとんど見た目に構うことすらなかった私などとは毛色が違うのは、一目瞭然でした。
 見目麗しい女性の方たちの登場で、多くの男性社員が色めき立ったのを覚えています。
 その頃すっかり男性社員に同化していた私は、やっぱり女性がいると空気が違うなぁ……と、思ったものです。
 そしてその飲み会の後、大阪支社トップだったお方に「やっぱり女性社員がいた方がいいか?」と問われた私は、「それはいた方がいいですよ~。華やぎますしねぇ」と返しました。
 すると飲み会の日から程なくして、再び女性社員が二名増えました。ありがたかったです。
 女性のみの閉じられた空間はしんどいですが、女性が一切いない環境も寂しいのです。バランスの問題です。
 女性にはもっと増えてほしかったのですが、やはり基本的にゲーム業界は男性の世界なのでしょうね。私が在籍中に、それ以上女性社員が増えることはありませんでした(ほんの一時期、派遣社員の女性はお一人いらっしゃいましたが)。

 今は乙女系ゲームが隆盛なので、ゲーム業界も女性が増えたのかもしれませんね。
 私が業界にいたころは乙女系はまだ出始めで、「アンジェリーク」と「遥かなる~」くらいしか記憶にありません。
 ゲーム業界の男女比率が相変わらずのままで、男性のみのチームが乙女系を量産しているのだとしたら……大変そうだなぁと思います。

……私が乙女系ゲームシナリオにチャレンジして玉砕したお話しは、またいずれさせていただきます。

3+

グラフィックツール仕様書

 ゲームを作るためには、まずツールから作らねばなりませんでした。
 私の入社当時はX68000というPCを使っていて、メダロット1までは別支社のプログラマーさんがX68000で作成された超優秀なグラフィックツールでドット絵を作成することができたのです。
 それはアニメ機能までついていたという優れモノで、メダロット1のドット絵から戦闘アニメまですべてこのツール一つで作成できました。

 X68000と言えば、記憶媒体がフロッピーディスクだった時代の中でも、5.25インチという大きなサイズ感が素敵なフロッピーディスクを使用するPCでした。
 その存在すら、ご存じない方のほうが多いのではないでしょうか。3.5インチフロッピーも見かけなくなりましたしね。

 ところがX68000がオフィスから消えて、専用のグラフィックツールがなくなってしまったのです。
 私はメダロット2でグラフィックから退いたのですが、後任のグラフィッカーさん用に、私がドット絵専用グラフィックツール仕様書を作るよう指示されました。
 やることを他に山ほど抱えていた私は正直、「エッ? 私が!?」と思いました。
 私自身はもうグラフィッカーの仕事をすることは基本的にありませんし、今後グラフィックツールを多用するグラフィッカーさんご自身が、仕様書を書かれた方がいいと思ったのです。
 それでも私だったのは、私がそれまでグラフィッカーとしてやってきており、かつ超優れものだったグラフィックツールの使用経験があったからだったのかもしれません。
 さらにグラフィッカーさんたちが別会社となったため、 (別料金が発生しない )社内の人間でかつグラフィッカーで、さらに最も絵を多く発注するであろうメダロットチームのメンバーで……と条件を絞っていくと、グラフィックツール仕様書作成者が私になったのも合点がいくような……。

 グラフィックツール仕様書作成も、困難を極めました。
 テトリスプラスGBの時もでしたが、仕様書を作っては担当のプログラマーさんに持っていく度、「ここが足りない!」「ここはどうなってるの!?」と仕様書を突き返される日々。
「書かなくても分かるだろう」は通じません。
「こんなことまで書かなければならないのか!」というレベルで、微に入り細に入り、あらゆる仕様を書き記さねば、 プログラマーさんに仕様書を受け取ってもらえませんでした。
 この辺りは、プログラマーさんにもよるでしょうけれども。
 ちなみにその時担当のプログラマーさんは、社内随一クラスの方でした。少しの仕様の抜けも許されなかったのは、有能な方だったからこそ、なのかもしれませんね。

 こうして何とか私は仕様書を書き上げ、超有能プログラマーさんの手によって無事にグラフィックツールが完成したのでした。
 そのグラフィックツールを私自身が使った記憶が無いので、使用感は不明だったりしますが、不満は特に耳に入ってこなかったので恐らく実用レベルではあったのでしょう。
……私が実情を知らなかっただけ、という可能性もありますが。

3+