メダロックライブレポート(その2)

 改めまして、メダロットとは「メダルで動くロボット=メダロット」です。
 そして「メダロット+ロック=メダロック」です。
 メダロックは昔懐かしいゲームボーイのメダロット1~5の8ビットのゲーム音楽を、ロックにアレンジしたものです。
 それでは、メダロックのアーティストのご紹介です。

<MEDAROCKS>
ギター:長澤 トモヒロ(トモくん)様
ベース:岩切 信一郎(信ちゃん)様
キーボード・マニピュレーター:大場 映岳-hana-(hanaちゃん)様
ドラム:北村 望(のんたん)様
アレンジャー:鎌田 瑞輝様

<Singer>
織田 かおり(かおちゃん)様
千菅 春香(ちっすー)様
萌花(もえか)様

<Guest singer >
EXiNA様

……錚々たるメンバーです。
 メダロックライブには、歌い手の方が4名も!
 ゲストのEXINA様は、メダロットSのイメージソング「OVERTHiNKiNG BOY」を歌われました。

 歌い手の方々は皆様女性です。
 原曲を作られた方も女性ですし、メダロット5のシナリオを担当された方も女性です。
 そしてメダロット1~4のシナリオ他開発に携わり、今回作詞を担当させていただいた私もまた、同じくです。
 男性ファンの多いメダロットですが、メダロットもメダロックも、女性の成分は結構濃いと思うのです。

……ところで、私は音楽に関してはド素人もいいところです。
 音楽用語などの知識はほぼ全くありません。
 ですので、音楽的な表現や感想が非常に稚拙になってしまうと思います。
 また衝撃の連続で頭が真っ白になっていたので、記憶が曖昧なところが多々あります。
 しっかりと記憶と魂に刻み込むためにも、何十回でも何百回でも体験したいライブでしたが、現時点でメダロックライブに参加できたのは、この一度きりです。
 誠に申し訳ないのですが、「どの曲でどの映像が表示されたか」の間違い等々があるかもしれません。
 あまりの衝撃で、記憶が捏造されている可能性もございます。己の脳の記憶力と処理能力の限界が悲しいです。
 兎にも角にも、メダロットというゲームに当初から関わってきて、メダロットに我が子のような思い入れを持つ私自身の感想や想いが伝わればという一心で書いております。
 稚拙でも、間違いがあっても構わないと思ってくださるお方は、最後までお付き合いいただければ幸いです。

01.M・R・2

 うのへえ様と糸賀様が舞台に立たれ、軽妙な掛け合いトークで注意事項などを交えながら場を盛り上げられた後、ライブは「M・R・2」……メダロット2のオープニング曲から始まりました。
 ゲームボーイ時代の8ビットな音から始まって、やがてそれにエフェクトが掛かり音に深みが増していきました。
 この曲に限らず、メダロックの全曲通じて実に様々な音……時に不思議で時にクール、時に繊細で美しい音が入っていましたが、これがマニピュレーターと呼ばれる楽器が奏でる音の効果なのでしょうか。
 私には分かりません。分かりませんが、とにかく凄いです。カッコいいです! ステキです!

 さらにドドッドンというドラムの力強いリズム、ギター、ベース、キーボードの音色が合わさっていき、一気に大きな音の波が押し寄せてきました。
 私は、圧倒的な音の洪水に全身が呑み込まれました。
 音が振動としてダイレクトに伝わってくるのです。この感覚は久々でした。
 やはり生は全然違います! 全然ですよ、全然! 音が振動として感じられるので、全身が耳になったみたいでした。

 そしてステージの大画面には、懐かしのメダロット2のドット絵が次々と映し出されました。
 この時点でブワッと感情が溢れ出しそうになりましたが、ここで自我を失うわけにはいきません。
 私は平静を保ちました。それはそれはもう、必死に。

02.Strike Enemy

Strike Enemy」 は、メダロット2ロボロボ幹部戦のBGMです。
 大画面には、歴代ラスボスのシルエットが、次々と映し出されていきました!
 不気味な効果音にテクノな音が混じり、一気に激しさが増しました。
 テクノな高音とベースの重低音の共演、そして激しさから一転、しばし不安を覚えるような静けさが訪れ、再び激しい音の洪水が押し寄せる――この緩急が、曲に緊迫感を作り出していました。
 最後の余韻も良かったです。

 原曲からすでにロボロボ幹部戦とは思えないカッコよさだったのですが、それがロックアレンジでさらに洗練されたカッコよさを纏っていました。
 原曲がゲーム内で実際に流れたのは、ロボロボの時給では贅沢ができないロボロボ女幹部スルメがメダロット社でウェイトレスのバイトをしていたという暴露話から始まるロボトルの時とか、カリンのメダルを奪って嫌がらせに炭酸の池に落とそうとしているロボロボ団ボスのサケカースとロボトルの時とかでした。
Strike Enemy」のカッコいいBGMとは裏腹に、ロボロボ団幹部たちはこれといって深い理由のない戦いを繰り広げておりました。

 メダロット1では世界征服を企むロボロボ団のボスがラスボスでしたが、2以降のロボロボ団はラスボスに利用される立場となってしまったため、より道化な姿が際立っておりました。
 ロボロボ団幹部戦は、カッコいいBGMとのギャップが凄いのです。
Strike Enemy」がライブで演奏されている間、歴代ボスの映像ではなくメダロット2のロボロボ幹部戦の前後のやり取り映像が流れていたら、そのギャップは凄まじいレベルにまで達していたかもしれません。
 MEDAROCKSの皆様は、メダロットをご存じないという事でしたので、カッコいいバトルをイメージして演奏されていたのではないかと思います。
 ですがかつて、かなりおマヌケなロボロボ幹部戦を演出していた私は、「Strike Enemy」がカッコよすぎて衝撃を受けたのでした。
 そんなロボロボ幹部たちですが、ロボロボの悪の美学に従って、シリーズを通して卑怯な手段で勝ちに行こうというスタイルは貫いていました。
 悪の道は厳しいのです。ロボロボ団は、時給も低いですしね。

03.Burning Force(inspired by “I”)

Burning Force」はメダロット2~4の主人公、イッキのテーマ曲です。
 ゲーム版のイッキは熱血タイプではなく、どちらかと言えば個性的な周囲のキャラクターたちに振り回され続ける大人しい性格でした。
 そんなイッキが、ここぞというシーンで敵に立ち向かおうとする時に流れるのが、この曲だったのです。
 とても仲間思いで心優しいイッキは、大事な仲間が傷つけられた時や、かけがえのない友でありパートナーであるメダロットたちを、身勝手な欲望の道具にしようとする者たちに対しては、アツくなりました。

 現役の女子高生、萌花様がご登場されました。とてもかわいらしいです。何と申しますか、とにかく実物はさらにかわいらしいのです。
 娘とほとんど歳が変わらないのもあって、応援したいと思う私の気持ちも高まります。
 萌花様は、緊張してる? という質問にも「あんまり緊張はしてません!」と、元気よく即答されていました。
  流石です。私ならステージに立った瞬間真っ白になり、生まれたての小鹿のごとく足は震え、その場にとどまることすら覚束なくなりそうです。
 16歳にして、すでに大物の貫禄です。
 若々しい声の伸び、フレッシュな歌声、聴き取りやすい素直な歌い方は、イッキのイメージにピッタリで、まるでイッキが歌っているかのようでした。

オロチ「ふん! いいだろう!
こうなってしまえば もう
わたしの メダルと お前の メダル
・・・より すぐれた ものが
勝ーつっ!
お前の ひんじゃくな
メダロッチの でんぱなどで
地上の パーティクルに めいれいが
とどくかな?」
イッキ「今の ぼくに メダロッチは
ひつようない
ぼくの 心と ぼくの パートナーの
心は 1つに つながっている」
オロチ「では お前の『しんらい 』とやらと
わたしの プライドを かけて
しょうぶだっ!!」
イッキ「おおっ!!」

出典:メダロット4

 メダロット4ではラスボス、 オロチとイッキのこのやり取りの間、「Burning Force」の原曲、「I」が流れていました。
 この後オロチとイッキの、メダロットも一対一という文字通りの一騎打ちが始まります。
 そしてイッキの「信念」と、オロチの「プライド」を賭けたラストバトルで流れるのが、「DO・OR・DIE」……「Until The End」の元となった曲なのです。
 普段は大人しいイッキが、大切なものたちのために「強く熱く」「命燃やして」、時に迷いながらも「迷い捨てて」、「仲間 勇気 絆」というゆずれないもののために、敵に立ち向かうのです。

 イッキのアツい思いが、萌花様の歌声で鮮やかに蘇りました。
 激しいラストバトルの後、さわやかなエンディングを迎えます。
 雲が晴れて、青い空が広がっていく感じです。メダロット4の先生のパッケージのイメージですね。その光景もまた、萌花様がさわやかに歌い上げてくださいました。

04.M・R・3

M・R・3」は、メダロット3のオープニング曲です。
 様々なゲームの効果音もいい感じで入っていて、ロボトルの光景が目に浮かぶようでした。
 ソード・ハンマー・ライフル・ガトリング・レーザー・ビーム・ミサイル・ナパーム・ブレイク・プレス・デストロイ・サクリファイス・バグ・ウィルス・ウェーブ・ホールド・ファイヤー・メルト・サンダー・フリーズetc……当時のメダロットには、他にもまだまだ戦闘で使用されていた効果音がありました。
 私はどの音がどんな順番で入っているのかまで把握できてはいませんが、全てお分かりになられた方もいらっしゃるのではないでしょうか。
 8ビットの音と、それぞれの楽器の音の共演がカッコいいんです!
 ドラムが速いです。すごいスピードです。 その速さに、メダロット3で私が体験した最も過酷で凄まじいデスマーチの記憶も、まざまざと蘇ってまいりました。
 いい感じです。当時の苦しみまでも思い出すということはつまり、メダロックはしっかりとメダロットしていたということなのです。
M・R・3」では、メダロット3のデモ絵が映し出されていました。蘇った記憶と共に、元となったエクセルで描いた私の絵コンテを載せておきます。

メダロット3絵コンテうるち「全国の ロボトルファンのみなさん
おまたせ いたしました!
わたくし ロボトルきょうかい
こうにん レフェリー
ミスター・うるちです!
スカイTV ていきょう
メダロット えいせい
『テラカドくん』から
おおくり している
『週刊メダロット』の お時間です!
本日 ゲストを おむかえしています
ニモウサク ユウキさん どうぞ!」
メダロット3絵コンテユウキ「やあ よい子の メダロッターたち
元気かい?」

出典:メダロット3

……当時このレベルの絵コンテを元に、あの素晴らしいドット絵を描き上げられたグラフィッカーさんには脱帽です。
 プロの方のこういった絵コンテは、絵コンテとは思えないレベルのハイクオリティーなものが多いですが、私の絵コンテからは「分かればいい・伝わればいい」という私の大雑把な性格が伝わってきますね。

05.ロボトルファイト!

ロボトルファイト!」では懐かしいうるちさんのお声と共にロボトルの映像が映し出され、ロボトル中メダロットたちが一生懸命走る、懐かしい記憶も呼び起こされました。
 ロックにアレンジされて、ロボトルが激しさを増した感じです。ソロの部分もカッコいいです!
 途中で「はー」という声のようなエフェクトが入り、はっとする感じもいいです。

 原曲の軽快さを残しつつ重厚感が加わり、ロックとなって、ロボトルもテンションもさらに盛り上がること間違いなしです!
 いつの日か現実世界で、メダロックの生演奏と共に本物のメダロット同士でのロボトルファイトが実現したら……そんな夢が広がりました。


背景には母の絵(陶器)を置いてみました

06.Let’s dance!(inspired by “レッツ ロボトルダンス”)

Let’s dance!」は、原曲名「レッツ ロボトルダンス」で、2曲目の通常戦闘用BGMでした。
 原曲発注時にこちらが付けていた仮の名前はそのまま「戦闘2」で、「パラパラのような、楽しげなイメージ」でお願いしていました。
 実際、原曲はとても楽しい雰囲気の戦闘曲となりました。

 それがメダロックではクールでロックに蘇り、私も当初考えていた楽しげな歌詞ではなく、メダロットたちが激しい死闘を繰り広げる様を歌詞にしたのでした。
 そして「Let’s dance!」は織田 かおり様という歌い手を得ることで、さらにパワーアップしました。
 ライブでは、織田様の生の声量と歌唱力に圧倒されました。
 織田様の力強い歌声で、「傷つきながらも戦場を駆け抜け、全力で戦い続けるその姿はまるで激しく踊り続けているかのよう」……そんなメダロットたちの姿が目に浮かぶようでした。
Let’s dance!」では「悪に立ち向かう正義」を、ライブ後半で歌われた「DARK NIGHT」では「正義を捻り潰す悪」を……一人二役で善と悪という対極の立場を歌いこなす織田様の圧倒的な歌唱力は、見事なものでした。

 織田様の歌で激しさを増したロボトルは、途中で挿入された囁くような絞り出すような「たすけて」の一言で、さらに激戦っぷりが際立った感じです。
「たすけて」の一言は私ではなく糸賀様の案で入ったものですが、死闘を繰り広げるメダロットたちの心境を表しているようで、面白かったです。
 パーツを壊されて奪われて、それでもパートナーのメダロッターには「踊れ! 走れ! 戦え! まだまだぁ!」と言われるのですから、思わず「たすけて」の本音が漏れだすのは、当然と言えば当然でしょうか。

07.Evil spirit

Evil spirit」では、メダロット3でのスピリットたちとの熱きバトルが蘇りました。
 スピリットたちといえば、エレクトラ、ビリジアナ、セルリアーノ、トパージアの4人(体)です。当時、ゲームボーイがカラー専用になったので、スピリットたちは色をイメージしたキャラクターにしました。
 スピリットたちは、月のマザー、ブラックデビルによって生み出された地球のフォースの化身たちです。
 悠久の時を月で独りぼっちで過ごし、孤独に苛まれつづけていたブラックデビルは、配下のスピリットたちに人間を連れてくるよう命じます。
 ですが、スピリットたちは身勝手な人間たちを敵視していました。そしてイッキたちの前に敵として立ちはだかったのです。

 軽快なリズムで始まった「Evil spirit」に、重低音が響きます。それが緊迫感を醸し出し、スピリット戦との激しい攻防を思い起こさせました。
 会場にメダロッターの皆様の「ヴォイ! ヴォイ!」の大合唱が響きました。
 せっかくですので、ここでも私の絵コンテを載せておきます。

イッキ
「何だっ!?」
エレクトラ
「データはいただいた
ザンネンだったな ニンゲンども!」

イッキ
「なっ・・・だれだ!?」

エレクトラ
「わが名は エレクトラ!
お前たち ニンゲン テキ!」

イッキ
「何だって!?」
イッキ
「・・・あ! まてっ!」

出典:メダロット3

……ライブで大画面に映し出されていた、懐かしのドット絵映像の記憶が、私の絵で上書きされてしまったら申し訳ありません。ですがこれが元の絵です。
 真ん中の人型のようなものがスピリットの一人、エレクトラです。エクセルでのお絵描きには、中毒性がありました。

 私は関係者スペースだったのもあって声を出す勇気がありませんでしたが、一生懸命ペンライトを振っていました。
 関係者スペースの方々は静かだった気がします。観察者としての使命を帯びておられたのかもしれません。
 私は関係者や観客の枠も飛び越えて、当事者といった感覚でした。
 ライブ中私は様々な記憶や感情が一度に湧き上がり、魂を鷲掴みにされ、揺さぶり続けられていました。

……私の思い出深いエクセル絵もお見せできましたし、今回はこの辺りで。
 もうヤメテ! と言われそうですが、私の絵はまだ残っていますよ!
 次回も懲りずに見ていただければ、幸いです!
(続く)

8+