メダロックライブレポート(その4)

 前回、思い込みによる「人違い」ならぬ「悪ガキ違い」というもの凄い記憶違いをやらかした私ですが、スクリューズについてあまりにアツく語ってしまったため、「1行書き換えるだけ」などというレベルの修正では済まない濃度の内容となりました。ですので、そのまま残しております。
 私の盛大な記憶違いとは関係なく、「悪ガキのテーマ」は間違いなく悪ガキしていました。少なくとも、初代悪ガキのドット絵を描きシナリオでも深く関わってきた私は、そう思います。
 何はともあれ、私はメダロックアレンジが、メダロックライブが素晴らしかったということを、お伝えしていきたいです。
 そしていつかスクリューズのテーマ「CUNNING BOY」のメダロックアレンジも、お願いしたいところであります。

 ちなみにスクリューズのリーダー、キクヒメの「~よぉ」「~しぃ」といった語尾は、「悪ガキ三人組」の女リーダー、イセキの口調と区別化を図るために私が作った設定でした。
 ヤンマ→イワノイ、クボタ→カガミヤマも、女リーダーの子分というポジションは同じですが、それぞれ全く同じキャラにはせず、違う個性を持たせるようにしました。
 メダロット1はシナリオが短く、また私はメダロット1のシナリオに関しましては監修と、バラバラなシナリオをくっつけて不足を補い矛盾を無くすといったお仕事がメインだったので、彼ら三人を存分に活躍させることは叶いませんでした。
 そんな私の「悪ガキ三人組」への想いは、スクリューズへと引き継がれております。

 来る2020年1月23日に配信予定の、メダロットSでの悪ガキ三人組の活躍に期待が高まります!
 スクリューズは悪ガキ三人組にチーム名が欲しいと考え、私が付けた名前です。
 初代組にもチーム名を付けるとしたら、やっぱり「お米」縛りだと私は思うのですが、いかがでしょうか?

14.HALF SORROW

 激しいロックが続いた後に、静かで美しいピアノの旋律が流れてきました。「HALF SORROW」です。
 そしてステージの大画面には、思い出深いメダロット4の「海辺のシーン」が映し出されました。
 海辺のシーンは、イッキとパートナーのメダロットが夜の海を並んで見つめながら、語り合うシーンです。
 激化するデスマーチの中、私が魂を込めて作ったイベントです。

 イッキはメダロットたちとの数々の冒険を通じて、メダロットとメダロッターの関係について深く考えるようになりました。
 メダロットにはリミッターと「メダロット三原則」というものがあり、イッキはそれがメダロットたちを縛りつけて不幸にしているのではないかと、思い悩むようになったのです。

「メダロット三原則」は、メダロット4では以下のように表記していました。

「だい1じょう」
わざと 人間を
きずつけては ならない
「だい2じょう」
人間に きけんが ふりかかるのを
見すごしては ならない
「だい3じょう」
だい1じょうと だい2じょうを
やぶらない はんいで
ほかのメダロットに ちめいしょうを
あたえないこと

出典:メダロット4

 そして私の「ダメロット製作記」では、第三条が「上記二項に反しない限りで自分の身を守る」と書いておりました。
 それが今はメダロット社様の方で「メダロット三ヶ条」という名称になり、第三条が「第一条と第二条を破らない範囲で己を守り、他のメダロットに致命傷を与えてはならない」といい感じに統合されている模様です。

 メダロット4では夜の海辺で、イッキはパートナーであるメダロット自身に己の抱く悩みと疑問を直接ぶつけました。
 そんなイッキの問いかけに対して、メダロットは自身の想いを言葉にして返すのでした。
 メダルで動くメダロットの頭脳は、メダルです。メダルにメダロットの魂が宿っているのです。
「メタビー」「ロクショウ」「せっかち」「がんこ」「ひねくれ」「周到」「ぼんやり」「おせっかい」「いいかげん」とメダルの性格は9種類あったので、私は海辺で語り合うシーンを9パターン作りました。
 それはプレイヤーであるメダロッターの方々が、自らパートナーとして選んだメダロットと語り合っていただきたいという想いからでした。
 さらにメダロットの顔グラフィックは、数多のパーツからメダロッターの方々がパートナーメダロットのパーツとして選ばれた頭パーツが、表示されるようにしていました。
 そしてもちろん会話の中で表示されるパートナーの名前も、メダロッターの方々が付けられた名前になるようにしたのです。

 美しいピアノの旋律で始まった「HALF SORROW」は静かな盛り上がりを見せていき、やがて泣きのギターの音色で最高潮を迎えます。
 思い出深い海辺のシーンが……ゲームボーイのドット絵がライブで、二十年の時を経てメダロックアレンジで蘇った楽曲の生演奏と共に、大画面で映し出されていたのです。言葉では言い尽くせないほどに、感無量でした。
 あまりに現実離れした光景に、これは本当に今目の前で起こっていることなのかと、私は信じがたい思いでただ大画面を見つめていました。まるで夢でも見ているかのようでした。

HALF SORROW」の生演奏と共に大画面に映し出されていたのは、9種類の性格のうち、アニメでもお馴染みだったメタビーのメダルとの海辺のシーンでした。

イッキ「メダロット転送!」
イッキ「・・・・・・」
メタビー「・・・・・・」
イッキ「・・・・・・」
メタビー「・・・・・・」
メタビー「転送したんだったら 何か言えよなー」
イッキ「・・・うん」
メタビー「だーかーらーっ 何か言えっての!!」
イッキ「うん・・・あのさ、メタビー
お前って しあわせ?」
メタビー「はぁ?」
イッキ「だからさ・・・お前らって
『メダロット3げんそく』に
しばられてる・・・だろ?
だから お前ら 人間をわざと
きずつけられないように なってるけど
それって しあわせなのかなって」
メタビー「イッキ」
「・・・」
メタビー「あのさ 何で『メダロット
3げんそく』が あると思う?
それは オレたちが
メダロットだからさ」
イッキ「だけど そういうのって・・・!」
メタビー「まあ 聞けって」
メタビー「メダロットの オレたちは 人間の
お前らとは 力も
のうりょくも ちがう
オレたちは メダルさえ ぶじなら
パーツや ティンペットが いくら
こわれたって ふっきできる
だけど 人間の体は そういう風に
できていない
もし『メダロット3げんそく』が
オレたちの 力に ブレーキを
かけてくれなければ
オレたちは きっと・・・たとえ
オレたちに そういうつもりが
なくっても・・・人間を きずつけて
しまうだろう
・・・これは オレの 考えだけどさ
『メダロット3げんそく』は
オレたちを 作ったやつの
『やさしさ』なんだと 思う
おかげで オレは お前と なかよく
やってけてるんだと 思うし」
イッキ驚「でもさ そういうのって 勝手だと
思うんだけど
メダロットの いけんも 聞かずにさ
勝手に「3げんそく」なんていう
ブレーキを あたえちゃうなんて」
メタビー「それは そうかもしれない
けどよ 考えてみろよ
もしもだぜ? お前が お前の
すきな人を だきしめただけで
その人が こわれちまったら
どう思うよ?」
イッキ「そんなこと・・・!」
メタビー「おなじ人間なら そんなことは
ないだろうけどよ
人間と メダロットの場合 そういう
ことだって おこりえるんだ
オレ そんなこと たえられねーよ
だからさ・・・だから おれは
オレじしんは『メダロット
3げんそく』が あって
よかったって 思うんだ」
イッキ「メタビー」
「・・・」
イッキ「・・・・・・・・」
メタビー「・・・・・・・・」
イッキ「かえろうか・・・」
メタビー「ああ かえろうぜ」

出典:メダロット4

 素晴らしいアレンジと演奏と共に蘇った「HALF SORROW」ですが、ゲーム開発時、こちらからは「悲しい曲」という名前で発注しておりました。
 原曲を作成された方が、「HALF SORROW」というタイトルを付けてくださったのです。

HALF SORROW」……半分の悲しみ。
 悲しみも、心許せるかけがえのない存在と分かち合えたら、半分になる……そんな意味を込めて付けてくださったのかもしれません。
HALF SORROW」は私の心の一曲であり、メダロックライブでそれは、忘れ得ぬ体験と共に魂に刻み込まれたのです。

15.Until The End(inspired by “DO・OR・DIE”)

HALF SORROW」の演奏に続いて、千菅様がご登場されました。
「いつか 語り合った海」……まさにそのシーンの後で、この歌が流れたのです。
 千菅様の透き通った声がライブ会場に響きます。感極まって体が震えました。
HALF SORROW」から「Until The End」への流れは本当に感動的で、素晴らしかったです。
 メダロックCDでも流れは同じなのですが、ライブでのその自然な流れは、実にお見事でした。

 原曲の「DO・OR・DIE」もまた、イッキ編最後のラスボス戦BGMだったこともあって、私にとってはとても思い入れが強い曲でした。
 ですので、メダロット4のラスボス戦BGMだった原曲の「DO・OR・DIE」がバラードになったと知ったときは、正直なところ戸惑いはありました。
 信念を賭けた激しいバトル曲から、泣かせるバラードへの大転身です。
 戸惑いと驚きはありましたが、私は渾身の想いを込めて歌詞を作りました。
 とはいえ完全にゲーム寄りの「愛しきロボロボ団」とは違い、「Until The End」はメダロットを離れても独立した一つの曲として成り立つような歌詞にしなければなりませんでした。
 メダロットを知らない方々にも、広く長く愛し続けていただくために、それは必要なことだったのです。
Until The End」は、ラスボス戦闘曲からバラードへの大転身ということも相まって、最も難航した曲だったかもしれません。
 変更を余儀なくされた歌詞もありますし、私が自ら変更した歌詞もありました。
 私自身が変更した歌詞に、「メダルが輝き」→「瞳が輝き」というものがありました。
 メダロットが起動し、冷たい金属の体に魂と意志の光が宿る姿を表現した箇所です。
 結果的に「メダル」より「瞳」の方が、よりふさわしい表現のように思えましたので、良かったと思っています。
 また一方で、「Until The End」からメダロットらしさを全て無くしてしまっては、本末転倒でした。
 そこで「フォース」というフレーズは残していただくことになりました。

 私一人の力ではなく、糸賀様やうのへえ様と多くのやり取りを重ね、歌詞の文字数調整や使用するフレーズなどを洗練していったことで、「Until The End」は完成しました。
Until The End」がメダロットファンの皆様にも、歌い手の千菅様やMEDAROCKSの皆様のファンの方々にも広く受け入れられ、 愛され続けることを心より願っております。

 そして私が「Until The End」にどうしても入れたかったフレーズは、「いつか 語り合った海」でした。
 あの海辺のシーンがあったからこそ、イッキの意志は、信念は、揺るぎないものになったのです。海辺のシーンを経たからこその、「最後の戦い」でした。
 このフレーズは、「Until The End」がバラードになったからこそ生きた歌詞だったかもしれません。
 それでもまだ私の中に僅かばかり残っていたかもしれなかった、「DO・OR・DIE」がバラードに大転身したことへの戸惑いも、千菅様の歌声によって払拭されました。
 原曲にあった緩急はバラードになっても残されていて、海のような穏やかさと激しさを持つイッキの人柄と、揺るぎない想いが伝わってくるようでした。

 まだ私が「DO・OR・DIE」がバラードになるとは知らなかったとき、間奏部分にメダロット4でイッキとメタビーが喋っていたセリフを入れるという案を出したことがありました。
 そして私は、候補となるイッキとメタビーのセリフと共に、海辺のシーンを「思い入れのあるシーン」としてお伝えしていたのです。

 間奏部分にセリフを入れ込むこと自体は、「Until The End」がバラードになったこともあって採用されませんでした。
 ですが私の想いは、今回のライブで、

HALF SORROW」の生演奏と共に大画面で海辺のシーンが映し出され、「Until The End」の「いつか 語り合った海」に繋がる

……という私の想像の遥か上を行く、最高の形となって実現したのです。

 あまりの光景に、音に、歌声に、ただただ目を見開き、私はその空間と時間を全身で体感していました。
 目の前でたった今起こっていることが、己の目で見て聴いて感じていることが夢のようで、果たしてこんなことが現実に起こり得るのかと、信じがたい思いでした。

 ライブ会場は皆様のペンライトで海を思わせる青に染まり、ステージの大画面には熱唱される千菅様のお姿が映し出され、私の魂を込めた歌詞が美しい歌声と演奏と共に流れる……。
 それはCDだけでは決して味わうことのできない、ライブのあの時間、あの空間だけの特別な出来事だったのです。
 一生の、忘れ得ない記憶となりました。
 あの素晴らしい体験が、私と同じ時間と空間を生きて共に過ごされた方々の記憶にも、深く長く残り続けることを願っています。
 さらに多くのファンの方々と、繰り返し素晴らしい体験を共有するためにも、メダロックライブがこの先幾度となく開催されることを願うばかりです。

16.Shout!

Shout!」はメダロット3ラスボス、ブラックデビル戦での曲です。
 月面に現れた巨大なその姿は、まるで……。
「悪魔だ」
 月で出会ったマザーメダロット、巨大なブラックデビルの姿に、思わずイッキはそう呟いたのでした。
 曲の開始と共に、巨大なブラックデビルの絵がステージの大画面に映し出されました。


コウジ「目が ひらいた!」
アリカ「大きい・・・これも メダロット?」
イッキ「あくま・・・だ」

出典:メダロット3

……昔私がエクセルで描いた、ブラックデビルの「目が開いた!」的な絵コンテです。
 上記のセリフ、何と! アニメと同じ声優さんたちのボイス入りでした! これは当時のゲームボーイとしては結構画期的だったと思います。

 言うまでもありませんが、ライブの大画面に表示されていたのはこの絵コンテではなく、実際に使用された一枚絵のドット絵の方でした。
 この絵で伝わるのですから、グラフィッカーさんって凄いですよね!……一方の私は、一応グラフィッカーでもあったとは思えないレベルの絵コンテで、申し訳なかったです。
 とはいえこの絵コンテに関しましては、私も流石に「ブラックデビルに関してはデザイン画参照」という注意書きを書いてはおりました。

Shout!」はスローテンポかつ不気味で不穏な旋律で始まりました。
 巨大なマザーメダロットの姿が、古より人々に恐れられていた悪魔の姿を連想させ、恐怖を誘う……そんなただならぬ気配が漂っていました。
 それが一転。一瞬の静寂の後、一気にアップテンポとなります。ロボトルが激化した様子が伝わってくるようです。
 そして途中で入る美しいキーボードの旋律……かと思えばギターの激しい嘶き!
 ベースの低い唸り! クライマックスに従ってますます荒ぶるドラム!!
 勝負の行方はいかに……!

 イッキ編の中で最大のボリュームを誇るのはメダロット4ですが、最も過酷なデスマーチだったメダロット3は、地底都市、海底都市、天空都市、宇宙と舞台は広がり、スケールの大きさでは最大でした。
 宇宙人により月と地球に逆に配置されてしまったマザーメダロットのスバルとブラックデビル。そのために人類の科学文明の発展が偏った方向に向かおうとしていた……という壮大なスケールの間違いを、宇宙人は犯していたのでした。
 ですがそれすらも、うっかりミスとして「スミマセンネェ」の一言で済ましてしまう宇宙人に、メダロットらしさを感じていただけていればと思っています。

 巨大な悪魔の姿をし、人類に科学という英知を授け、レアメダルを作り地球のフォースを操る力を持ちながらも、ただ寂しくて、故郷に帰りたくて、それが叶わぬまま独りぼっちで月にいたマザーメダロット、ブラックデビル。
 本編のラストでイッキは、そんなブラックデビルと「Shout!」をBGMに二連戦を強いられるのでした。
 ロックなアレンジの「Shout!」で戦い抜いてみたいものです。

17.Beat The Diamonds

Beat The Diamonds」は、メダロット5のラスボス曲でした。
 ロックなスローテンポからの 、ちょっとミステリアスな雰囲気漂うメロディラインと、ラスボスらしく重低音の増した湧き上がる感じ、好きです。
 やはり8ビットでは出すことのできなかった低音が入ると、本当にカッコよくてシビレます!
「ビーーーン」と低く響く音とか、音の高低差とか、文字や文章でどのように表現したらいいのでしょうか!? どうしてもカッコいい! という言葉になってしまいます。

 私はメダロット5はプレイできていないので、ラスボス戦は体験していないにも関わらず、ラスボスとのアツいバトルの光景が思い浮かぶようでした。
 カッコいいメダロックアレンジをライブで聴いて、一度はゲームをプレイされた方も、またプレイしてみたくなったのではないでしょうか!

……今回はここまでとなります。
 深い思い入れのある分、今回もアツく語らせていただきました。
 次回もお付き合いいただければ、嬉しいです♪

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